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異世界でなった魔法使いが想像と違う!  作者: 桜華
第二章:異世界でなった魔法使いの旅路
36/57

そして戦いの火蓋はきっておとされる

現在更新が二日に一回になってます。ご了承ください。


・・・ナ・・ウナ


なんだろう?声が聞こえてくる・・・

あれ?前にもこんなことあったような・・・


「ユウナ。ユウナ。起きてください。ユウナ」

「あれ?ティア?」

「やっと起きましたか。そろそろ夕ご飯の時間ですよ」


ってことはあれは夢?そうだよね。僕がもてもてというかあんなおかしな状況になるわけないよね。


「今度は何をしたんですか?」

「え?何って?」

「明日、あなたを口説く権利を得る決闘があるって町中が騒ぎになってますよ?」


・・・夢じゃなかったのか。

そういえば僕はギルドから宿に戻ってベッドにダイブしたんだっけ。


「その顔であまりいいことじゃないことがあったのは理解しましたが、状況を知りたいので説明はお願いしますね」

「・・・はい」



僕は夕ご飯を食べながらことのあらましを説明した。

・・・状況を考えると憂鬱でご飯の味がわからなかったよ。

ティアの話は食後に部屋ですることになった。


「しかしおおごとになりましたね。というかユウナはモテますね。かわいいですから納得はしますけど」

「あれはモテてたというより欲望の対象・・・いや、思い出したくないからいいや。そっちはどうだったの?」

「私の必需品は買い揃えられましたよ。さすが交通の要所だけあって品揃えはよかったですね。情報のほうですが、ここよりやや北よりに西に進んだ山のふもとの森にわりと強めのモンスターが生息してるみたいです。カードを増やすのも経験を積むのもよさそうですね。それと南西にはもともと村があったようです。宮廷魔道士が調査にきてしばらくしてから、村からまったく人がこなくなって冒険者に調査に言ってもらったらしいんです。調査の結果、そこは焼け野原と化してたそうです。」

「・・・改めて聞いてもマインのやり方には気分が悪くなる」

「前向きに考えましょう。ユウナはこれ以上被害がでないようにマインの暴走を止めたんですよ」

「でも」

「一人で抱え込んじゃだめですよ。ユウナの悪い癖です。なまじできることが多いからそう思っちゃうかもしれませんが、ユウナにだってできないことはあるんです。そういう時は人をたよればいいんですよ」

「・・・うん。ごめん」

「いえ。それに今回は、まだできることがないか、そしてこれからできることを増やす力を得るためにここにきたんじゃないですか」

「そうか。そうだった。いろいろあったから変な方向に考えが行ってたかも。ありがとう」


どれもこれも今日のギルドの騒ぎのせいだ。


「しかしこの町は勧誘やナンパがすごいですね。断るのに苦労しました」

「え?ティアも?」

「ええ。その辺りも情報仕入れてきました。この町は強さこそステータスっていう風潮がありますね。交通の要所、周りは強めのモンスターが多いので護るための強さが求められてきたようです。最近はそれが強くなって「文句があるなら強さで示せ」という言葉が考え方の主流みたいです。そのせいか女性はあまりこの町に寄りつかないみたいなんですよ。結果、出会いの少ない男性たちが数少ない女性たちに群がることになるのがこの状況ですね」

「なんてはた迷惑な。でも郷に入っては郷に従えとはいうしな」

「なんですか?それ?」

「土地や国によってルールや常識は違うから、自分たちがそこに入るときはそのルールや常識にしたがうべきって言う意味かな」

「なるほど。それにしてもユウナは時々難しい言葉を使いますね」

「そうかな?」


それにしたって口説く権利を争うとかすごい所だって思う。


「それで、ユウナはどうするんですか?」

「どうって・・・どうしたらいい?」

「それは私としては断って欲しいですよ。私はユウナが好きなんですから」

「でもあの雰囲気で断ることはできなかったし・・・」

「あくまで口説く権利ですから、断り続けることもできますが・・・いっそユウナも参加して権利を自分のものにしては?そうすれば口説く権利は誰にもいきませんし」

「あ、そっか。自分で参加して口説く権利をとりあげちゃえばいいんだ!」


なんでそんなことに気づかなかったんだろう。もやもやが晴れたよ。


「よっぽど混乱してたんでしょうね。でも土地柄強い人たちも多いはずですから油断は禁物ですよ」

「・・・そっか。ケンさんみたいな人いるかもしれないし。というかあのギルとか言う人が油断できないな」


ティアに言われるまで油断の塊だった。気を引き締めていかないと。


「エントリー方法はどうなってますか?事前申し込みだと早めにしておかないと」

「それは大丈夫。明日の午前に受付、午後から決闘らしいから。それにに当事者だからコロシアムの場所もちゃんと聞いてきてる」

「なら大丈夫ですね。後は今日は早めに寝て、体調を整えておきましょう」

「ん」


この日僕らは早めに就寝した。






「・・・僕この町から逃げてもいいかな?」

「この雰囲気だと地の果てまで追いかけてきそうですけど・・・」


まじ勘弁してください!

翌日、受付にきた僕たちは目の前の長蛇の列に僕は早くも心が折れそうだった。

ちなみに騒ぎにならないように二人ともマントにフードをかぶっている。


「どれくらいの参加者がいるんでしょうね?時間的に考えても百人はいそうな感じですけど・・・」

「なんで?どうしてこうなった?」


後ろにもどんどん並んでくる。


「あら、屋台や飲み物の販売までやってますね。これもう完全にお祭りですよ。ラフィンドのお祭りを思い出しますねぇ」

「ティア、もう他人事みたいになってない?」

「そんなことありませんよ。昨日も言いましたけど、私としては口説く権利を使っても断ってくれたりユウナが勝ってくれた方が嬉しいのですから」


そんな話をしつつしばらくして、ようやく受付まできた。


「お待たせしました。ギルドカードの提示をお願いします」


え?


ティアもカードを提示した。


「ティアも参加するの?」

「ええ。これでさっきの言葉の証明にもなりますよね?」


ティアは軽くウインクをした。こういうのは美男美女がやると様になるね。


「あれ?ユウナさんって今回の口説かれる権利の本人ですよね?」


受付の人が不思議そうな声をかけてきた。


「そうですよ。僕が勝ったら口説く権利は没収させてもらいます」

「でしたら最初から断ればよかったのでは?」

「この雰囲気で断れると?」


受付の落ち着いたお姉さんは苦笑いになる。


「断りにくい、ですよね。でもただ一人を口説く権利でこんなに規模が大きくなったのは初めてですし、女性としては魅力の証明ですから少し羨ましく思いますよ」


なるほど。そういう考え方もあるのか。


「女性が受付ってナンパされたりしないんですか?」


ティアはこの状況で女性がナンパされないのか気になったようだ。


「私は既婚者ですし、これからユウナさんをを口説く権利を争おうとしてるのに私をナンパしようなんて男はそういませんよ」

「なるほど」

「そういうティアさんは女性なのになぜ今回参加を?」

「私はユウナのパーティーメンバーなんですよ。彼女がこの町で過ごしやすくなるように協力しようとおもいまして」

「そうでしたか。ユウナさんが望まれないのなら私は二人を応援してますよ。やはり女は好きな男と結ばれるべきですしね」

「ありがとうございます」

「すいません、長話してしまいましたね。受付完了です。そちらの入り口からどうぞ。要所要所に案内人がいますので指示に従ってすすんでください」


こうして受付も済ませ、案内されたのはコロシアムの中央だった。みんなそれぞれ軽くウォーミングアップや精神を集中させたりしていたりしてる。そしてこんな時間なのに観客席は結構埋まっていた。

このままだとこの町のほとんどの人がここに集まらないか?

僕は少し緊張しつつもティアと話しながら開始を待った。

参加者はどんどん増え、客席も埋まるどころか立ち見の人もどんどんくる。いやおうなしに雰囲気や歓声は高まっていく。


そして・・・


コロシアムの扉が一箇所を除いて一斉に閉まる。その一箇所からは屈強そうな三十過ぎに見えるおっさんと、筋肉の塊のハゲでヒゲのおじさん、快活そうな見た目の騎士の美少女、あと昨日ギルドで見かけたギルさんとか呼ばれた人が出てきた。

それを見た観客席が静まる。

そして屈強そうなおっさんは魔道具らしきものを口にあて、高らかに声を上げる。




「テメェらよく来たな!今回はたった一人の女、しかもそれを口説くためだけの決闘だというのにこんな騒ぎになりやがった!なぜか!それはその女にそれだけ価値があるからだ!戦え!その権利を手に入れるために!戦え!その手に栄光をつかむために!戦え!その強さを証明するために!さぁ、決闘の始まりだぁぁぁぁ!!!」



わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!





こうして僕、ササキ・ユウナを口説く権利を賭けた決闘の火蓋は、きっておとされた。







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