新しいカードとローストワイパン
更新遅くなりました。
今回ちょっとだけシモネタがあります。
「見てくださいユウナ、同じモンスターでも手に入るカードが違うんです」
マジックアローで岩のダンゴムシたちを倒したティアが三枚のカードを持って駆け寄ってきた。
カードを見せてもらうと「防御力10%アップ」「石つぶて」「自爆」と、確かに違う効果だった。
・・・いや、自爆って。
「・・・ティア?この自爆のカードは捨てない?」
「え?捨てちゃうんですか?もったいないですよ」
「ティアに自爆なんてして欲しくないんだけど・・・」
「私だってよほどのことがないとしませんよ」
「・・・よほどのことがあっても自爆はだめ!」
そういって自爆のカードを取り上げた。
「これは僕が預かります!」
「むぅ。じゃあ変わりに別のカードをください」
「じゃあこの「全魔法適正Lv10」と交換で」
「それならいいです。トレード成立ですね」
僕は魔法を見て解析できるからたぶん使わないでしょ。なによりティアの自爆なんて絶対にさせない。
「で、たぶんなんですが、私のモンスターのカード化のカードって、モンスターが複数持ってる特長や特技のどれか一つがカード化するんじゃないかと思うんです」
「あー。そういえば神様と会話したとき、マインが使った封印魔法は複数能力を持ってるモンスターならどれがカード化するかランダムだっていってた気がする。あれ?神様その説明しなかったの?」
「あ?え?・・・えーと。たぶん、してたんじゃ、ないかなぁ?」
「・・・ティア?」
「・・・白状します。ユウナと同じ能力をもらえるって知って嬉しかったから話半分で聞いてたんです」
冷静なティアにしては珍しい。よっぽど嬉しかったんだろう。
「まぁだれにでもそんなことあるよ。今日はあと二回カード化できるんでしょ?何かいいカードが手に入るといいね」
「そうですね。ユウナの役にたてるようなカードだと嬉しいです」
夕方、僕たちは水辺で食事の準備を始めた。
僕は燃えそうなものを拾い集めてティアに渡す。
ティアは魔法道具を使って火をおこしてくれた。
「驚きました。弱いモンスターでも複数能力を所持してることが多いですね」
「・・・」
「ユウナ?どうしました?」
「・・・いえ、なんでも」
あれからティアはジャイアントラットっていう大きなねずみとバルードっていう風船のようなモンスターから二枚ずつカードを手に入れていた。
ジャイアントラットからは「緊急加速Lv1」と「素早さ5%アップ」、バルードからは「魔力10%アップ」と「浮遊」だった。
浮遊は名前の通り空中に浮いた。ただ、本当にちょっとだけ。
ティアは僕が空を飛んだようになることを想像してたようで、顔にはださないけどだいぶがっかりしてたっぽい。
そして・・・僕もゴブリンを倒すときに「魔法創造」でカード化したんだ。
手に入ったカード。「絶倫」
確かにゴブリンは繁殖力が高い。いや、でもこれが理由?っていうかこれ能力なの!?納得できるわけないじゃん!
・・・今頃神様笑ってるんだろうなぁ。
もちろん速攻捨てた。ティアは「もったいない」っていってたけど何のカードか見せてないしね。
「もしかしてさっき捨てたカードに関係してたりします?」
・・・相変わらず鋭い。
でもこれ以上詮索されてさっきのカードを言及されたくない。
「いや、もういいんだ。それより夕飯にしよう」
「そうですね」
気分を変えるためにおいしもの食べよう!うん。
ティアは背中にしょっていたバックをおろすとごそごそしはじめた。
「よいしょ」
そういって中から出てきたのは丸ごとなべだった。
「ちょっとまってティア。・・・なべ?」
「はい」
「丸ごと?」
「はい」
「いれてきたの?」
「はい。変ですか?」
「えーっと何から言うべきか・・・」
まずそのサイズのなべをどうやって入れていたのか。つぎになべなんて入れておいて中身がこぼれたりしないのか。最後にこれがこの世界の常識なんだろうか?
「私、旅をしたことがないので非常識なことをしてしまったのでしょうか?」
「・・・いや~、僕もわかんない。僕だって旅なれてるわけじゃないし・・・」
「とりあえず、ご飯を食べながら考えましょう。おなかすきました」
「・・・そうだね」
今度は僕が空間創造で作った空間からパンとローストワイバーンを取り出す。
実はローストワイバーンはローストビーフの要領でお城の厨房を借りて作っておいたんだ。
説明書から食べられる部位を聞いて首の付け根あたりをちょこっと使った。
味見したけどすごくおいしくて「僕天才じゃない!?」って自画自賛したっけ。
ちなみにパンはそのときについでに日本から召喚しておいたコッペパンだ。これにローストワイバーンをはさんで食べるつもりだったので、こっちで食べる硬いパンだと食べにくいと思ったんだ。
「・・・ユウナ、それは何ですか?」
「ん?これ?ローストワイバーンだよ」
「どこから出したんですか?」
「どこって・・・僕が空間創造で作った空間から」
「作ったんですか?」
「どっちを?っていっても空間も料理も作っちゃったんだけど。変?」
「・・・ユウナは私のことをあれこ言えないと思いますよ?」
・・・まぁ便利なものはせっかくだし使わないと。
「ユウナ、お互い自分のご飯の用意しかしてませんが、よかったら分け合いません?」
ティアがなべのふたを開ける。すごくいい匂いが広がる。野菜のスープだ。
「いいね。すごくおいしそう」
「王都で評判のお店でお願いして作ってもらったんですよ」
そういいながらなべを火の上に設置する。
僕もパンにお肉をつめる。
スープも温まってティアが椀によそってくれた。
「ではいただきましょう」
「いただきます」
まずはスープを一口。うん、おいしい。こっちの世界にきてから今のところまずいものにはほとんど当たってないことに感謝。自分でいうのもなんだけど料理にはちょっとうるさい。というか基本おいしいものを食べたいっていう衝動が強くて、自分でもよく作ってた。
「んんんっ!?」
「どうしたのティア?」
ティアが変な声を上げるからついそっちをみた。
ちょうどローストワイバーンのパン・・・名づけてローストワイパンを一口食べたティアが一生懸命もぐもぐしている。そのしぐさがちょっとかわいい。
ごくん。
「なんですかこのパンの柔らかさ!それにこのお肉!これあの時のワイバーンですね!?」
「そうだよ。おいしい?」
「・・・たぶん今までの人生の中で1、2を争うおいしさです」
「ははは。喜んでもらえて嬉しいよ。そうだ。これをつけて食べると味が変わるよ」
そういって僕はオニオンソースを小皿に出した。これも召喚したものだ。
ティアは早速実行する。
かぷ。もぐもぐもぐ・・・
「・・・どう?」
「私、今日まで生きてこれてよかった・・・」
「それほど!?」
僕も思わずがぶり。
「うん。おいしい」
相変わらずおいしい。お城で味見をしたときも、もっと食べたい衝動を我慢するのが大変だった。
次にオニオンソースをつけて食べてみる。
「・・・なにこれ!?こんなに味が変わるの!?」
あうとかあわないとか絶妙とかいうレベルじゃない。まったく別のものくらいの違いがある。
オニオンソースをつけたのは味見してなかったけどこれほどとは・・・
僕たちはこの後時々スープで喉を潤しながら、黙々と食べ続けた。
割と大きいコッペパンだったのにティアは二つ、僕も三つぺろっと食べた。
そしてティアにお茶を入れてもらって一息。
「至福のひと時でした」
「おいしかった。ワイバーンのお肉半端ない」
しばらく余韻に浸った後、僕が先に休むことになって、毛布を取り出すとそれに包まって横になった。
そういえば本格的な野宿ってこれが始めてじゃないかな?ティア大丈夫かな?大丈夫か。いざとなったら魔法少女の力もあるし。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか僕の意識はまどろみの中に消えていった。




