救出隊結成・・・あれ?
一日更新遅れました。ごめんなさい。
・・・やっぱり。
「相手は大物だ。今ならなかったことにもできるぞ?」
男の台詞に僕とティアは顔を見合わせた。
「えーと・・・まだ情報ってそんなに流れてないのかな?」
「昨日の今日ですからねぇ。とりあえずマインがすでにつかまってるって話はしないと話が先に進みませんね」
「マインがつかまった!?」
ぉぉぅ。なんて地獄耳。あのトーンで普通聞こえる?
襲撃者たちもみんな驚いてる。まぁ腐っても宮廷魔道士筆頭だしね。
僕が殴り込みをした結果だって知ったらどんな反応するんだろう?
「ヤツの悪行が明るみにでればそれも納得だが・・・解せねぇ。そんなに簡単にヘマはしねぇだろうし、もしぼろが出ても黙らせるだけの力や権力を持ってやがる。いったい何があった?」
「えーと・・・」
「簡単にまとめると私たちがお城に突撃して倒しました」
ティア!?間違ってないけど、間違いじゃないんだけど!
「はぁ?そりゃ何の冗談だ?」
ですよねー。でも本当なんだよ。
「私でよかったら説明しますよ。これからの行動に情報は必要でしょうし。
こうしてティアさんは僕との出会いからお城までの成り行きを話してくれた。
「あのアナザードラゴンを倒したのかよ・・・」
「城に殴り込むとか正気じゃねぇよ」
「しかもそこでマインを一方的に倒すとか信じられねぇ」
「・・・お前むちゃくちゃだな」
返す言葉がございません。僕自身、聞いててどこの超人?って思うし。
男が何か考えてたようだけど、口を開く。
「ヤツにとってお譲ちゃんは相性が悪すぎる。逆にお譲ちゃんは俺に対して悪いんだがな。だが助かった。もし俺がマインと対決してたらどれくらい被害が出てたか想像もつかねぇ。それに全能力を封印されて城からだされたらやつの苦労ははかりしれねぇ。これなら殺す必要もねぇな」
「人に頼らないと生きていけませんからね。それをいままで能力に頼ってたうえにプライドの高いマインが人に頼ったり頭を下げるっていうのは厳しいでしょうからね」
「あぁ。俺たちの気分も晴れた。」
そっか。気が晴れたならよかった。
「親分、そのレイナムが用意してた替え玉、気になりやせんか?」
「あぁ。可能性は高けぇな。お嬢さん、その替え玉の子って会うことはできるかい?」
あ、そうか。マインのつながりなら彼女がさらわれた子の可能性が高いんだ。
「・・・あなたたちはグランヴェリアに入ることができるんですか?門でとめられますよ?」
「大丈夫だ。方法は教えられねぇがな」
「じゃあ王都で会えるようにお父様と相談してみます。その後もう一度話しましょう。ここから引き返せれば夕方にはつきます。夜、梟亭の始まる時間でどうですか?」
「それでいい。じゃあ夜に梟亭で」
「あとはこの商人の扱いどうする?」
もはや忘れられた商人を僕が聞く。いや、このまま放置しておくのもなぁと思って。
「俺たちとしては身代わりだった子がハズレだっていう可能性もあるから確保はしておきたい」
「いろいろ聞いてしまうとこの人を擁護しようっていう気にはなれなくなりましたねぇ」
「僕もそれには同意。ただ叩けば埃は出そうだから王都に連れ帰って色々聞いたり調べたりはしたほうがいいと思う。他の悪事の阻止や助けられるものも多いと思う」
「そうですね。私もユウナに賛成です」
ティアは男と襲撃者にむきなおる。
「この商人、預からせてください。もし身代わりだった子がハズレだった場合はこの商人が持ってる情報をお渡ししますし、協力します」
「あぁ。そういうことなら問題ねぇ。まず身代わりの子を確認するのが先決だしな」
「じゃあこれでここで話せることは以上ですね」
「あぁ。じゃあ時間に会おう」
「はい。もし時間に現れなければ私たちで独自に行動しますからね」
「・・・わかった」
そして男が消えたと思ったら、襲撃者たちもかなりのスピードでここから離れていった。
もしかして襲撃者たちもかなりの手練れなのかもしれない。
「さて、私たちも行動を開始しましょう」
「そうだね」
僕たちは協力して今度は商人と護衛を縛っていく。そして馬車に入れて王都へ引き返した。
護衛はグルの可能性もあったので念のために。
ちなみに馬車には七人の奴隷が乗っていた。これはシルヴェルト侯になんとかしてもらおうってなった。
ただ一人、きらきらする目でこっちを見てる子がいるのが気になった。
商人連中は引き返す途中で目を覚まし、散々わめき散らしていたけど、ティアさんが何か耳打ちをすると静かになった。
・・・ティアさん一体何を言ったんだろう・・・
そう進んでいないことと馬車を使ったこともあって、みんなが昼休憩から動き出す頃には町に戻ってこれた。
門の兵士に事情を話し、執務中のブリットさんに会いに城まで移動した。
ティアは僕は変装ということでごまかして、襲われてた商人の救出、とらえた襲撃者の事情、戻ってきた理由を話した。
「というわけでお父様、この者たちの背後や過去の経歴を調べた後に、しかるべき対処をおねがいします」
「うむ。現在マインの事後処理をしてるところだ。情報を持つ人物を得られるのはありがたい」
「そのかわりじゃあありませんが、この奴隷たちをうちでなんとかしたいのです」
「それも大丈夫だ。ここもそうだが、ラフィンドでも人手はまだまだ足りていない。この子達の要望を聞いてどちらかで働けるように手配しよう」
「ありがとうございます」
「しかしユウナ殿。その変装はすごいですな。よく見れば似てると思いますがぜんぜん気づけませんでした」
「あ、あはは」
笑ってごまかしておいてた。
しかしこれであの商人たちの処遇と奴隷たちの保護は大丈夫だろう。よかったね。
笑顔になりながら奴隷たちに顔を向けた。シルヴェルトの奴隷解放運動を知ってるんだろう、奴隷たちはどこか安堵した表情を見せていた。
・・・若干一人きらきらした目で見てる子が健在だったけど。
「あとは私の偽者の子を確認させたいのですが、相手は犯罪者の集団、しかも手練れです。私個人としてはあのリーダーの男は信用できそうだと思ったのですがいかがでしょう?」
「うーむ。話を聞いてるとそいつらは「ヤマダグミ」の連中だろう。噂どおりの連中なら信頼できそうなのだが」
「知ってるのですか?」
「有名なんですか?」
ブリットさんの言葉に僕とティアが反応する。
「基本殺しはしない。襲撃も程よく稼いでる商人からしかしない。生活を破綻させるほどとり過ぎない。そして生活に苦しむものたちに施しをすることがある。ただし、非道なもの、がめつく稼ぐもの、高圧的な者たちには容赦はしない。義理と人情を第一とするという噂だ。噂の域を出ないのは、本人たちを確認した例が少ないことと、施しを受けたという者が確認できないからだ。こちらの情報としては、実在の確認が取れていることと、ここ最近、五、六年くらいから噂が出てること、割と大きな組織になりつつあること、被害の内容が噂の範疇にあることの確認がとれている。」
悪い人ではないと思ってたけど、好感が持てる。悪いことはしてるんだろうけど。
「雰囲気から感じてましたが悪い人たちではないようですね。ただすべてが終わったら投降して罪を償ってもらおうかと思ってたんですが・・・」
「悪いことをしているのは確かだ。彼女が探していた人物だったら交渉して投降させるのがいいかもな。もちろん減軽の嘆願等はする」
「・・・そうですね」
ティアはちょっと俯いた。僕にも気持ちがわかる気がする。
「まぁまずは探してる人物なのか確認する場を作ることだな。城に呼ぶことはできるか?あの子、今の状態では町を歩くこともできないだろう」
「そうですね。一度話をしてみます。嫌がるかもしれませんので、その場合は向こうにも代案をだしてもらいます」
「うむ。頼んだ」
この後、もう少し情報が欲しかった僕たちはお城と兵舎、町で聞き込みをして約束の時間に備えた。
見た目おっかないのに、聞こえてくる噂はよいものが多かった。




