魔法少女vs任侠
私は呆然と成り行きをみていた。
・・・私助かったの?
今目の前でユウナ?と男の人が対峙している。
男はものすごい殺気とプレッシャーを放ってるけど、ユウナ?にはそれがない。しかも隙だらけだ。
「殺気やプレッシャーはすごいんだけど、それを隠せないようじゃまだまだね」
なにかすごいこといってる。
「どうしたの?かかってこないの?私隙だらけだよ?」
「・・・不気味なんだよあんた。そのいかにも狙ってくださいといわんばかりの場所全部に隙があるって普通ありえねぇ。それにな。俺の長年の勘が迂闊に飛び込むなっていうのさ」
「へぇ。ただ無意味に殺気やプレッシャーをばら撒くバカとは違うみたいね」
あの隙は罠だったの?ぜんぜんわからなかった。
「じゃああなたがそうやって隙をうかがってるうちに私はこの子の力を確認させてもらうわね。
うぁ。MPすっからかんじゃない。私を召喚するのに全部のMP使ったわね?まいったなぁ」
男は警戒をしたまま、相手の様子をじっと見ている。
ユウナ?は一人でなんか一喜一憂してる。雰囲気では驚いてることが多い気がする。
「ブレス(火)って何よブレス(火)」って!」
・・・ブレス?
「・・・ふぅ。大体把握した。」
そういうとリュックをごそごそとし始めた。中から出てきたのは・・・癒し草にヨモギに・・・なんだろ?白い粉が出てきた。
そして何か空中に作り出すと、そこに手を入れて一枚のカードを取り出した。あれって封印されたカード?
それからステッキの先の装飾部分を触ると、ぱかっと開いてカードが入れられるくらいのスペースがあいた。
え?あのユウナ?なんでステッキの秘密知ってるの!?
そこにカードを入れたユウナ?が声を発する。
「錬金」
そういうとステッキの装飾部分が光る。それをさっきバックからだした色々に軽く触れるとそれらが光だし、白い錠剤になった。
何が起こったの?さっきのキーワードから察して何か作ったの?
ユウナ?はそれを躊躇いもなく飲み込んだ。するとすごい魔力の圧力が上がってくる。
・・・まさかあの一瞬で何かの薬を作ったの?まさか!?薬を作るためには相応の魔力と腕と作成手順、時間と必要になるはず!それを一瞬で!?ありえない・・・
男は淡々とそれを見ていた。途中で攻撃しなかったのは、さっき行った勘からか他に何か理由があるのか。
「なぜ攻撃しなかったの?いくら勘で危険ってわかってても、相手が回復するのを見逃すほうが危険でしょ?」
「美学に反する」
「いい男ね」
「不器用なだけさ」
「なんであなたほどの男がかよわい女の子二人を襲おうとするの?」
「なりゆきだ」
「・・・本当に不器用ね。一つお願いがあるんだけど、いい?」
「なんだ?」
「もし私が勝ったら、どうしてこうなったかちゃんと事情を説明しなさい。もし負けてもこの二人の安全を保障して」
「ずいぶんとそっちにいい条件だな。俺が勝ったらどうする?」
「そうね・・・この子を好きにするといいわ」
「そりゃおめぇさんの体じゃねぇんだろ?しかも安全を保障しろっていうのと逆の話だぞ?」
「あなたらならいいかなって思ったの」
「・・・俺が勝ったら、お嬢さんの後ろにいる外道を貰い受ける。いいな?」
「あら?そっちの趣味があるの?」
「話は終わりだ。いくぞ。刹那」
キィィィィィン!
会話が終わったとたんに男の姿が消えたかと思うと、ユウナ?と武器がぶつかり合ってた。
早い!見えなかった!しかもあんなに高速で動いたのに回りにまったく影響を与えていない!
打ち合っているけど圧倒的ユウナ?が押されている。
ユウナが「身体強化」を使った。するとあれだけ圧倒的だった打ち合いが互角になった。
身体強化って補正がどれだけすごいんだろう?
ユウナ?が距離をとろうと後ろにジャンプした!
「逃がさねぇ。刹那」
そのジャンプに男は空中で追いつく!でもユウナ?はそれが狙いだったみたい。
「フライ!」
急停止したユウナ?はサマーソルトでそれを迎撃、相手を吹き飛ばした。
ガスゥッ!
男はかなり蹴り飛ばされたけど、しっかり体勢を取り直す。
ユウナ?はそのうちに錬金術のカードを抜いて、別の新しいカードを差し込んだ!
「刹那」
そしてステッキを体勢を取り戻して地面に足をついた男が再び迫る!
「風の結界!」
男は風の結界にぶつかり負けた。再び落下する男にユウナ?は追い討ちをかける!
「ウィンドカッター!」
目に見えない複数の風の刃が男に襲い掛かる!
男は納刀された剣を構える。
「風切り」
襲い掛かったすべての刃を叩き切った。
あれを全部切れるの!?ぜんぜん見えないし数も多かったのに!
男が地面に着地する。ユウナ?はそのタイミングで再び仕掛ける!
「アースピック!」
地面が無数の針の形に変わる!
ぴた。
男は片足のつま先で立った。
ユウナ?の攻撃は続く。
「ファイアバード!」
炎の魔法だ!それもランダム飛行で追尾型の高等魔法!それを難なく数十体作り出した!
さっきのウィンドカッターみたいにはいかない!いくつかあたる!
「旋風」
そういうと男はくるくる回りながらほぼ全方位に斬撃を繰り出す!
ランダム飛行の追尾型でもだめなの!?それに魔法すら切り裂くってあの剣は何!?
「風切り刃」
ファイアバードをほぼ打ち落とした男が今度はお返しとばかりに特大の風の刃を作り出す!
「風の結界!」
刃は結界に軽々とはじかれる。けどこれは囮だった。刃と一緒に男が突っ込んでる!魔法は間に合わない!
フゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウ!!
するとユウナは息を吸い込み、口から炎のブレスを吐いた!
「ぐっ!」
男はブレスをまともにくらう。
ってさっきのブレスってこれのこと!?ユウナは一体何者なの!?
そして男に隙ができる。
ユウナ?はステッキをたたきつけた!地面に叩きつけられた男は見えないけど、砂煙と簡単なクレーターができる。
「大地の縛り!」
「ぬぅうう!」
砂煙が晴れると、男は植物に四肢を縛られていたい。
ユウナはいったいいくつの魔法を覚えているの!?
空中で男を見下ろしながらユウナ?はカードを入れ替えながら男に声をかける。
「私が流星の魔法少女って呼ばれる理由をこれから見せてあげる。この世界にはない魔法だけど、作っちゃった☆」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
何かが響いてる。地震じゃない。空気が震えてる。何なの一体!?
ふと空を見上げると、空から大きな石がすごい勢いでこちらにむかってきてる。
・・・まさかこれが?ユウナ?の魔法少女が「流星の魔法少女」と呼ばれる意味!
「メテオストライク!」
その石は見事に男に命中した。
「・・・うん。動かないね。」
つんつんしてる姿をみるとユウナなんだけどな。
「あなたはだれですか?」
戦闘も終わったので問いかけてみた。
「私?私はこの子の母親よ。流星の魔法少女キナ。あなた大丈夫だった?」
母親!?ど、どうしよう、なんて挨拶しよう!
「はい、おかげで命拾いしました。・・・お、お母様ですか!?ちょっとまってくださいね!」
私の心臓は一気にレッドゾーンだ。落ち着け私、落ち着け。
「始めまして。お見苦しいところをみせてすみません。私はティア・シルヴェルトといいます。お母様」
「あら?さっきからお母様って呼んでもらえるということは?」
チラッとユウナを見る。計画通り。
「いえ、まだそういう関係にはなっていません。ですが先日想いを伝えさせていただきました」
「あらあらあら」
こうやって外堀をうめていくんだ。
お母様はすごく嬉しそうに私を見た。
「不出来な息子だけどよろしくお願いしますね」
「はい。今度お会いできるときは心からお母様と呼べるようにがんばります」
するとお母様は少し困ったような、寂しいような、複雑な表情を浮かべた。
「お気持ちは嬉しいけど、今回みたいな偶然はそうそうないでしょうね。」
「と、言われますと?」
「今回私が召喚できたのは偶然だと思うの。」
そうなの?せっかくユウナのお母さんに会えたのに。
「それでもあなたみたいな子が近くにいてくれて安心したわ。久々にひと暴れしたし」
そう言って笑ってくれた。
「私はそろそろ時間が切れます。聞いてたと思うけど、あの男が目を覚ましたらちゃんと話をききなさい。自分の思い込みだけで行動してると、いつか痛い目を見るわよ。気をつけてね。」
そう言うとユウナはすぅっと座り込んで動かなくなった。たぶんお母様は帰られたんだろう。
それにしても、ユウナの戦いもすごいと思ったけど、今回の戦いは本当にすごかった。色々聞きたいところも多いけど、まずはユウナを起こそう。
とりあえずの危機は去ったかな?




