戦いは混迷を極める。いろんな意味で。
今回ちょっと長いです。というか今までで一番の長さかな・・・
僕はステッキを刀を納刀したようなポーズをとる。で、抜き放つ。例えるならいあい抜きかな。
「「「うわぁぁぁぁぁあ」」」
すると前方の兵たちが面白いように吹き飛ぶ。実際のいあい抜きじゃあないけど今の僕がやると風圧で見事にみんな吹き飛んでいくからちょっと楽しい。
城に突入した僕達は僕がどこの無双ゲーム?っていうような状態で兵士を倒しながら進んだんだけど、とにかく数が多い。複数の敵を倒す手を考えていろいろと試した結果、さっきのなんちゃっていあい抜きができた。
「ええいたかが五人相手に何をやっている!」
「たかが」じゃないんだよね。僕が「身体強化」をかけた四人は異常に強くなっていた。むしろ過剰なくらい。
「とうっ!」
「ぎゃうっ!」
ばしこーん。
「とーうっ」
「いでぇっ!」
ぴゅーん。
バスターがパンチやキックを繰り出すたびにこちらも面白いように敵が吹き飛ぶ。
それが楽しいのか、せっかく剣を持っていても敵の攻撃を防ぐだけでまったく攻撃に使っていない。
「これ楽しいっすね!」
やっぱり楽しんでた。
「大技いくっすよ!」
彼が天井近くまでジャンプ。そのままキックの体勢で落ちてくる。
「バスターキック!」
「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」」」
謎の爆発。吹き飛ぶ兵士。ていうかなんでそのキック知ってるの!?偶然?偶然だよね!?
安心したような、ある意味で不安なバスターから目を離すと今度は右のセバスさんが目に入る。
こっちもこっちですごいことになってた。
「はっはっはっ。」
笑いながら敵を高速戦闘で敵を無力化していくセバスさん。もはや分身っていっても過言じゃないくらい残像が見える。しかも兵がいっぱい転がってるけどみんな死んでないっぽい。すごい力量。
あ、遠くで詠唱している魔法使いの集団がある。あれはまずいかも。
「ぐっ!」「あぅっ」「きゃっ!」「いたっ!」
セバスさんがそれを許すわけなかった。近くに転がっていた兵士をつかむと全力で投げつけた。それも片手で。
「私がそんなことを許すとお思いですか?」
優雅に微笑む。めっちゃイケメンだ。ブーストのおかげだろうけど。
よし。セバスさんのほうも大丈夫。こっちもある意味で不安だらけだけど。
あとはクロのほうなんだけど・・・ってこの調子なら心配することもないかな。
「おらおらおらぁ!」
おぉ、クロは正統派で敵と戦っている。敵が吹き飛ぶことも、分身することもない。ただ一撃。無駄の動きのないような戦い方。でも、だからこそなのかな?倒れてる兵士が他よりも多い。それも倍くらい。
見た目じゃある意味ここがいちばんまともなんだけど一番怖い。
「お前ら訓練がたりないんだよ!そこのお前!踏み込みが甘い!そこのお前は型からやり直せ!そこのお前は・・・」
熱血か!思わずつっこんじゃった。いや、敵にアドバイスとか戦闘中にどうなの?しかも倒したあとだから聞こえてないっぽいし。
そして唯一出番がないのは馬に乗ってるティアさん。クロを見てたら目が合った。
「私が攻撃されないのがいいのはわかっているんですが・・・せっかくパワーアップしてもなにもできないというのはそれはそれでさみしいですね・・・」
ほほを膨らましてふてくされてた。気持ちはわからなくないんだけどね。
それにしてもカオスな状態だなぁ。
「ええい、どけい!私がやる!」
あ。さっき叫んでた責任者っぽい人が僕に向かってくる。
「えい。」
なんちゃっていあい抜き。あっさり吹き飛んで壁に衝突。倒れこんで起きなくなった。
弱っ!
こんなんが隊長格やってて大丈夫なの!?
まぁ大丈夫じゃないからいまの状況なのかな?
そんな感じで前進してると、これまでとはちょっと違う装備の、いわゆる騎士といって差し支えのないのが数人出てきた。あれ?一人どっかで見たような・・・
「賊共!由緒あるグランヴェリア城に乗り込んでただですむと思うな!我らが出てきた以上、貴様らもここまでだ!その罪を後悔しながら冥府へと行くがいい!!」
あぁ。クラールさんだ。僕の案内やってくれた。・・・この人、威圧的ですごく怖かったんだよね。
でもあの場にいたんだからやっぱりある程度名の知れた人だったんだなぁ。
「おい、グランガードの方々だぞ!」
「あいつらおわったな!」
「グランガードの方々が戦いやすいように場所を空けろ!」
なんだか強そうな名前の騎士団だな。
なんて思ってると兵たちは円で囲うように広がった。
「ふん。貴様らのような薄汚い犯罪者など私一人で十分だ!行くぞ!」
「えい。」
突進してきたクラールさんになんちゃっていあい抜き。あっさり飛ばされた。ひゅーん。べちゃ。
弱っ!!
「・・・くっ!下郎にしてはやるではないか!」
おぉ、立った。というか僕軽くステッキ振っただけなんだけど・・・
「私を本気にさせたな!私に奥義を使わせることを誇りに思い、同時に後悔するがいい!行くぞ!幻影龍滅衝!」
再び突っ込んでくる。さっきよりちょっと速いかな。
「えい。」
なんちゃっていあい抜き。またあっさり飛んだ。ひゅーん。べちゃ。今度は動かなくなった。
弱っ!!!
「お、おい、グランガードの方がやられたぞ!」
「だ、大丈夫なのか?」
「落ち着け!まだあと二人来てくださって・・・あ、あれ?」
「グランガードの方はどこへいった!?」
あれ?本当だ。残りの数人がいつの間にかいなくなってる。
「あの方々なら襲い掛かってきた方が二回目の宙を舞っているときにその左右の通路から出て行かれましたよ。」
セバスさんが教えてくれた。
「ま、まさか逃げた?」
「そ、そんなわけあるか!あのグランガードだぞ!?」
「き、きっと装備を整えにいったんだ!」
兵士たちが動揺してる。無理ないよなぁ。同じ立場なら僕でも心が折れる。
「ええい。そろいもそろって情けない声を出すな。」
「だ、団長!?」
「団長が来て下さったぞ!」
「団長、やつらを止めてください!」
また強そうなナイスミドルがでてきた。これって少年漫画の王道、強いやつを倒したらより強いやつが出てくるパターン?
「ふん。ヤツは四天王の中でも際弱」みたいな。
僕達は身構える。
「そう身構えるな。俺は近衛騎士団団長のスプライト。お前らに一つ提案がある。」
「提案?」
「そうだ。お前らの代表と俺で一対一で勝負だ。もし俺が勝ったらおとなしく全員捕まってもらう。もしお前らが勝ったら俺の権限の許す限り、お前たちの願いを聞こう。」
「「「なっ!!!」」」
兵士の声が揃った。君たちこういうときは揃うね。
「なりません!そのようなこと許されるはずが」「じゃあ聞くが、グランガードすら余裕で倒す連中相手に他にどんな手がある?」
「しかし、あなたはシルヴェルトの派閥の」「あぁん?なんでここで派閥の話がでてくるんだ?」
あの兵士何か知ってるな。
「なんならお前がやってもいいんだぜ?もしくは他にいいアイディアがあるんだったら言ってみろ。」
「ぐっ!・・・」
しつこい兵士ももう言い返す言葉がないんだな。
話をもどそう。この案に僕達がのるかだけど。
「僕達としては信頼もできませんしこのまま力押しで突き進んでもいいんですけどね。」
「まぁそうだよな。だがもしこの提案を呑んでお前らが勝ったら、何をしたいかは知らないがお前らの願いに早道なんじゃないか?信頼については信じてもらうしかないが。」
確かに。
「いいでしょう。その提案を受け入れます。」
「ティア様?」
「スプライト様なら信頼できます。それに確かにこのまま進むよりスプライト様の案を呑んだほうが私たちにとってもいいでしょう。それともユウナ様でもスプライト様には勝てませんか?」
「勝ちますよ。絶対。」
なんとなく油断できない雰囲気もある。それでも負ける気はしない。負けたくない。絶対負けない。
他のみんなも反対はないみたい。
「譲ちゃんひさしぶりだな。」
「そうですね。こんな形で再会するのは心苦しいのですが。」
ティアさん知り合いなんだ。
「で、だれがやるんだ?」
「僕です。」
僕が一歩前に出る。
「女だからって手加減はできんぞ?まぁ必要ないだろうが。」
「そうですね。女だと思って手加減しようとしたらそこで勝負は決まっちゃいますよ。まぁ僕としてはそのほうがありがたいんですけどね。」
「それじゃあ・・・始めようか!」
獰猛な笑みを浮かべて突っ込んでくる!速い!
ぱきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!
僕のステッキと交差した瞬間、澄んだ音と共にスプライトさんの剣が折れた。
「・・・おいおいまじかよ?これ名工がミスリルで作ったこの国でもかなりの剣だぞ?」
僕も驚いた。まじか。ミスリルへし折るとかこのステッキ何気に超硬い!材料は何!?
(神鉄です。このステッキと打ち合うには最低でもオリハルコンクラスが必要です。)
説明書が教えてくれる。なんて恐ろしい武器・・・
「やった本人が驚いてどうする?まさか想定外だったか?格好といい、よくわからん連中だな。」
否定できないところがね・・・
「まぁいい。約束だしな。おまら、これ以上の手出しはこの俺が許さん!武器を収めろ!」
兵士たちはしぶしぶといった感じだが武器を収めた。
「お前たちの願いはなんだ?」
これに対してティアさんが答える。
「父、シルヴェルト・ブリットの無実の証明。」
「何?やっぱりブリットは嵌められてたのか。しかしすまない。ヤツは今査問会にかけられてる。しかも国や王に敵対する大逆罪だ。今頃謁見の間で王じきじきに裁きをしているだろう。俺の力ではどうにもならない。」
「だからこれからそこに乗り込んで無実を証明するんです!」
「わかった。じゃあ謁見の間まで先導しよう。」
「あと二つお願いが。そこのあなた、一緒に来てください。」
そういってさっきスプライトさんに噛み付いていた兵士を指名した。
「それと兜で顔を隠してるあなたと変わった槍を持ってるあなた。あなたたちも同行してください。」
なんで?不思議に思っている間にもティアさんの言葉は続く。
「最後のお願いですが、信頼できるものにレイナム様のお部屋を調べてもらえませんか?」
「「「なっ!なんだと!!!」」」
複数の兵士が声を上げた。確かに驚く発言だけど、明らかに驚きすぎてる人たちがいる。指名された連中は特にひどい。
「それは俺の力じゃなんともできないな。」
「じゃあこうしましょう。クロ。あそこに入ったことは?」
「ある。隠し部屋で話をしたからな。」
「じゃあクロにお願いします。色々証拠となるものを持ってきてください。ここにいる人たちは何も見てないし何も聞かなかった。それでいいですね?」
「なにをバカな!スプライト様、このような戯言に付き合うことはございません!賊との約束など守る必要もない!このまま数で押し切れば必ずとらえられます!攻撃命令を!」
「・・・お前は俺に恥をかかせるのか?」
底冷えする、低い声。そしてすごいプレッシャー。あーあ、怯えちゃってるよあの人。
なんて気楽に言ってるけど僕も結構怖い。これ自分に向けられたらたぶん漏ら(げふんげふん
ふぅ。今日はいい天気だな。空はみえないけど。
「・・・しかたねぇな。何かあったら俺に全部責任をおしつけてもらっていい。場所はわかるんだったな?」
「あぁ。」
「ファン、ジョージ。」
「「ハッ!」」
「一緒についていってやれ。もし攻撃されかけたら俺の命令だと伝えろ。それでも攻撃してくるやつらは命令違反として反撃していい。」
「「ハッ!」」
こうして兵士たちの中から二人出てきて、クロさんと一緒に横の通路へ進んでいった。
「さて、後はいいか?」
「はい。謁見の間までよろしくお願いします。」
この後僕達はスプライトさんの先導で謁見の間まで荒立ったことなく進むことができた。
さぁ、最終局面だ!!




