ばれました!
「ユウナ様、男の方だったんですね」
「!!!」
今僕達は城に向かってそれなりの速度で飛んでいた。バスター、クロ、セバスさんも馬を使って城へ向かっているはずだ。そんなタイミングでの爆弾発言。
僕は一瞬緊張した。あの時は咄嗟だったし、しゃがんでたし、光ってたし。何よりここまで必死でそのことについて考える暇がなかった。
それでもたぶん一瞬か、無意識か。ばれてる可能性は考えたんだと思う。
だからかなりショックをうけつつも、今の言葉を受け入れられた。じゃなきゃ今頃墜落してる自信がある。
そしてばれた相手が悪かった。この人相手にはごまかせない。
「・・・はい。僕の本当の名前は佐々木 悠喜。今まで黙っててごめんなさい。」
きっと謝っても許してもらえないだろう。
きっと嫌われるだろう。
短い間だけど、ずっと彼女を騙してたのだから。
僕はそれを受け入れるしかない。
この世界で初めてできた大事な知り合い。もう友達っていってもいい。
そんな彼女に嫌われるのはとても辛い。たぶん今まで生きてきた中で上位に入る辛さだ。
この辛さは罪の証だ。大事な人に本当のことを伝えられなかった僕の罪。
だから僕はこの罪を償うために必ずティアさんのお父さんを助け出す!必ずティアさんを救う!
たとえ彼女から嫌われたままでも。
僕は彼女の言葉を待った。
そして彼女は・・・僕に抱きついた。
「嬉しいです。ごまかさなかったたことが。」
え?でも僕はあなたをだましていたんですよ?
そういいたいけど言葉が出ない。
「嬉しいです。真実をはなしてくれたことが。」
本当は言いたかった。でもはずかしかった。この姿をみて笑われたくなかった。バカにされたくなかった。親しくなるに連れて嫌われたくないって気持ちが大きくなった。
「嬉しいです。いつも私を助けてくれる方が男性だったことが。」
この姿を笑わないの?僕を嫌いにならないの?
「ユウナ様、ううん、ユウキ様がどんな姿だって私を助けてくれた事実に嘘はありませんから。」
「でも僕はっ!」
「ユウキ様。ユウキ様はなぜいつも私を助けてくれるんですか?私を助けてもユウキ様に得はありませんよ?」
「そんなの!親しい人が襲われてたら助けたいって思うのは当然じゃないですか!」
「では初めて会ったときは?」
「困った人を助けたいと思っただけです。」
「だからこそです。その気持ちが私には嬉しいんです。私を騙していたことなんてその気持ちの前じゃ些細なことです。だからユウキ様が謝る必要なんてどこにもないんです。」
あぁ・・・なんて心が広い人なんだろう。だからきっと僕はこの人の笑顔に惹かれたんだ。だから僕はこの人が好きなんだ。
この好きは恋愛感情かどうかはわからない。でもこの人を好きだって気持ちは自覚できた。
だからよかった。笑われなくてよかった。バカにされなくてよかった。許してもらえてよかった。
嫌われなくて本当によかった。心のそこからそう思った。
そう思ったら心が軽くなった。なんだか力がわいてきた。今ならなんでもできそうな気がする。国だって滅ぼしちゃうよ。いや、シルヴェルト侯爵を助けるだけなんだけどさ。
「ユウキ様。大好きです。異性として」
・・・時が止まった。気がした。
「へ?え?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!?」
再びの爆弾発言。しかも僕に抱きついたまま。
「てぃ、ティアさん!?」
「ユウキ様は私のことが嫌いですか?」
そう言ってティアさんは僕から離れないまま、下から見上げるようにうるうるして僕を見てきた。
ぐっ!かわいい!普段しっかりした女性がみせるかわいさにどきどきする。というか爆弾発言とあわせて今の僕の心臓はかなりやばい。
「嫌いなわけないじゃないですか!」
「じゃあ私のことが好きですか?」
僕はティアさんが好きなのはさっき自覚した。けどこの好きは恋愛の好きなのか、友達の好きなのかわからない。だって前の人生含めて女性とこんなに親密になるなんてことなかったんだもん!
中途半端な答えはだせない。それはティアさんを傷つけるから。
僕が答えをだせないまま悩んでいると、目的地のお城はすぐそこだった。
「あら、時間切れですね。ユウキ様、私嫌われてないって知ることができてよかったです。」
そう言って素敵半分、知的半分な顔で微笑んだ。
僕の中で一つ大きな悩みが解決したけど、新たな大きな悩みを作って抱えながら、入り口の大きな門の前に降り立った。
まだみんなはきていない。まぁ当然か。空からだから最短距離で、しかもかなりの速度でここまでこれたし。なんてのんびり構えているけど、僕たちは今囲まれている。もっともみんな空から降りてきた僕たちに驚きと恐怖を感じてるみたいだけど。
「何者だ貴様!ここを王城としっての狼藉か!」
兵士の中でも偉そうな人に怒鳴られた。狼藉も何も僕はまだ何もしていない。これからするけど。
「ここ、通してもらいますよ。」
空からいってもよかったけど、みんなを置いていくことになるからやめた。
「われわれがそのようなことを許すわけなかろう!ひっ捕らえよ!」
一斉に兵士が動き出す。同時に兵士の後ろが騒がしくなってくる。来たね。
ガチムチの馬が二匹、兵を蹴散らしながら僕たちの前に止まった。
そして男が三人素早く降りた。
「すまん、待ったか?」
「つかユウナ様、早すぎっすよ!」
「お嬢様、遅れて申し訳ありません。」
「大丈夫。僕達も今ついたばかりだから。」
さて、無事合流もできた。僕はティアさんを馬に乗せながら、みんなに声をかける。
「僕が城門を開きます。みんなはティアさんを守りつつ、僕が門をあけるまで時間を稼いでください。!」
「お任せください。お嬢様は命に代えてもお守りいたします。」
「全部倒しちゃってもいいんっすよね?」
「おい、ちゃんと話を聞いてたのか?俺たちの任務はこの門とティア様に敵を近づけないことだぞ?」
頼もしい。僕は背中をまかせながら、門に手をかけた。
ぎ・・・ぎぎぎぎ・・・・・
うん。やっぱり今の僕なら門をあけられる。でもじょじょに扉が重くなる。なぜ?あいた隙間から中の様子を見てみる。城や周りからどんどん兵が集まって扉に張り付いている様子が見えた。そりゃ重くもなるな。
「ユウナ、まだか!?」
クロの声が聞こえた。
「もうちょっと。」
僕も答える。じゃあちょっと本気であけましょうか!
「身体強化!」
ずどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
馬鹿でかい音や悲鳴と共に門はあっさり開いた。
前も後ろも倒れた兵士たちで溢れていた。まさしく死屍累々。たぶん死んでないけど。
そんな光景に残った兵士たちは固まっている。
クロやバスター、セバスさんたちは多少慣れたのか驚きつつもこちらに近づいてきた。
「この非常識の塊のような存在め。」
「すごいっす!感動したっす!」
「さて、突入するにしても少々的の数がおおすぎますな。どうしたものでしょう・・・」
クロの台詞にちょっと傷つきつつ、セバスさんの言葉をとらえる。確かにこの数はちょっと多すぎる。
「私を中心に前方をユウナ様、左をバスター、右をセバス、後ろはクロに任せます。何かあっても私が必ず私が回復させます!」
ティアさんが決意の表情で訴えた。
「はい!」「了解っす!」「畏まりました。」「まかせろ」
四人それぞれが返事をする。
そして僕はみんなに身体強化をかける。少しでも生存率が上がればと思ったから。
そして・・・
「まぁ。かわいい」
「なんすか?これ!?」
「不思議と力がみなぎりますな。」
「これは・・・姿はともかく、支援としては最高だな。」
ティアさんは僕と似たような姿で。バスターは某仮面のバイク乗りみたいな姿で。セバスさんは若返り、某悪魔の執事の姿で。クロは全身タイツの某五人の正義の味方の黒色の姿で。
光が収まったみんなはコスプレ姿になっていた。なにこれ!?こんなふうになるなんて聞いてない!
ていうかみんなまんざらでもなさそう!
「ユウナ様、ありがとうございます。さぁ行きましょう!」
ティアさんの声で現実に戻った僕は、目の前の敵の数の多さに改めて戦慄を覚える。
そうだ、そんなこと気にしてる場合じゃない!
僕は自分が狙われやすくなるように名乗りを上げる。
「流星の魔法少女!マジカルユウナ!推して参ります!!星屑になりたい人からかかってきなさい!」
僕の前に立ちふさがる障害は、まとめて吹き飛ばす!!




