ティアさん、事件です。
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翌朝、僕はティアさんの用意してもらった馬車に乗っていた。前回同様、リュックを抱えるスタイルで。約束どおり王都へ送ってもらえるからだ。朝が早いのは、朝が早いと夕方には王都に到着できるので。ちなみに服は魔法少女のピンクのふりふりに戻っていた。服の変身は時間制限があるのを改めて知った。
男のときに冒険者ギルドで受けた依頼の期日にまだ余裕はあるけど、何があるかわからないので余裕を持っての行動は助かる。
「それでは、色々ありがとうございました。」
「こちらこそ。このご恩は一生忘れません。」
そして馬車は走り・・・ださなかった。誰か走ってくる。
「早朝もうしわけありません!早急に報告をしたいことがあります!」
事件の匂いがした。いや、決してどこかの真実はいつも一つの小学生名探偵やじっちゃんの名にかける学生のごとくではなくて。一瞬頭をよぎったけれども!
「ブリット様が行方不明になっております!同時に反逆罪・・・それも大逆罪として指名手配されました!」
「!!!」
「お父様が!?予想より行動が早い!しかもこんな大罪・・・これは予想以上にバックが大きい。」
ティアさんが悲しそうな顔をする。しかしすぐに何かを決意した顔にかわった。
「みなさん、すみませんが色々予定を変更します。ユウナ様、私もグランヴェリアまで同行させていただきます。エルハルト、留守をたのみます。それと腕の立つ護衛を一人準備してください。セバス、あなたもきてください。支度が終わり次第、クロを連れてきてください。私も支度します。ユウナ様、少々時間をいただきます。」
ティアさんすごいな。普通父親が行方不明で指名手配なんて知ったら気が動転してまともに思考なんて働かないと思う。もし僕だったらあんな判断はできないな。
そうして、あくまで体感だけど、十分もしないうちに準備が整った。
御者には執事のセバスさん、馬車にはまだ見たことのない護衛の人が一人、それと昨日のエロシン。
・・・え?
「じゃあ出発しましょう。細かいことは移動中に説明します。」
すっごい気になる!エロシンに何があった!?
っと急いでそうだな。僕も一つ提案をする。
「急いでるんですよね?ちょっと馬に無理をさせちゃうかもしれませんが、馬に強化魔法をかけることができますよ?」
「本当ですか!?ぜひお願いします。!頼ってばかりで申し訳ありませんが・・・」
「いいえ。今は少しでも時間が惜しいでしょうしね。ただ制御は難しくなりますよ?」
「おまかせください。こんなときお役に立てなかったら何のための執事でしょう。」
おぉ。頼もしいな。
「じゃあいきますよ。「身体強化」」
すると馬がめきめきとおおきくなっていく。その姿はどこかの世紀末の覇王が乗ってそうな馬や、昔の歌舞伎者の武将が乗っていたような馬をリアルで見たらこんなんだろうなっていう感じのガチムチになった。
しかもやたら闘気あふれるたたずまいだ。馬たちもやる気なんだろう。
「飛ばしますよ!多少のゆれはご了承ください!」
そうして僕たちを乗せた馬車は爆走していった。
「さて。じゃあ詳しく事情を聞いてもいいですか?」
「そうですね。まず何から話しましょう?」
「隣のエロシンからですね。」
「まずは俺の自己紹介じゃないっすか!?」
僕とティアさんの会話にエルハルトさんがつけたであろう護衛の人が声を上げた。
「あぁそっちも気になってました。」
「ユウナ様結構ドライですね!?・・・まぁいいや。俺の名はバスター。バスター・カルッツだ。こう見えても剣の腕前なら隊長に引けをとらないっすよ?」
「お調子者ですけどね。」
「お嬢様厳しい!」
「討伐で調子に乗りすぎて深追いして迷子になったのはだれだったかしら?」
「もう昔の話じゃないっすか!」
「エルハルトの話だと最近町の警備中に万引き犯をみつけて」「すいませんでしたぁぁぁぁ!」
・・・漫才みたい。楽しいけど会話が進まない。
「じゃ、じゃあ自己紹介はもういいですよね?エロシンについて聞いていいですか?」
「クロだ。」
「え?」
「俺のコードネームだ。というかエロシンとは何のことだ?」
かっこいいコードネームをお持ちで。自分の記憶に聞いてみて。思い出したらまた消すけど。
「で、そのクロさんはなぜここに?」
「クロには罪を見逃す代わりに、協力とシルヴェルト家の配下になる交換条件を出しました。」
「そういうことだ。あいつらのやり方はあまり好きではなかったし、ティア様にはかなりいい条件を出してもらえたからな。」
「話がうますぎますね。裏切る可能性もあるでしょう?」
「そのときはきっちりおしおきですね。」
にっこり微笑む。めっちゃいい笑顔だ。黒いけど。
エロシン・・・じゃなかった。クロもその台詞と笑顔を見てからちょっと様子がおかしい。「マッチョは嫌だ、マッチョは嫌だ」と小声でつぶやいている。目の焦点もずれてるし。
「まぁ他にもいちよう保険はかけてますが、彼を信じるというのが一番ですかね。彼の性格は裏より表のほうが似合うでしょうし。」
「昨日色々と話をしてくれてな。俺もまっとうに生きられるかもっていう希望をくれたティア様には感謝してる。信用はこれから勝ち取っていくさ。」
あ、クロ立ち直った。立ち直り早い。
「わかった。じゃあ僕も信用しよう。でも裏切ったらもちろんおしおきだからね?」
にっこり微笑む。我ながらめっちゃいい笑顔だ。黒いけど。
「むぅ、なぜだ。おしおきは怖いはずなのに違うどきどきがする・・・なぜだ。なぜ幸せだった気がするのだ!?俺にそっちの趣味はないはずなんだが・・・」
そう言って僕の足を見る。こいつ体で覚えてるのか!?僕は驚愕する。さすがエロシンの名をほしいままにした男。今度こそちゃんと消すか・・・
「いちようこれからのお話をしますね。王都についたらユウナ様を冒険者ギルドまで送らせていただきます。これ以上巻き込むことはできませんので、あとは私たちで何とかします。」
「ここまできたら」「ストップ。これ以上ユウナ様に甘えるわけにもいきません。自分たちで何とかします。もしどうしても太刀打ちできなかったら・・・そのときは改めてお手伝いをよろしくお願いします。」
ティアさんらしい。
「わかりました。僕はしばらく王都にいると思いますので、何かあったら声をかけてください。」
そんな話をしている間にも馬車はどんどん進んでく。
一時間後。・・・酔った。
前回は平気だったのに。今回の爆走による揺れが原因かな?
「気持ち悪い・・・」
「ユウナ様にも弱点はあるんですねぇ。大丈夫ですか?」
今速度は落としたくないだろうからがまんしかない。最悪空間創造で吐しゃ物の避難場所作るしかないかな。あんまり、いや、かなり気が進まないけど。
「リフレッシュ」
「・・・あれ?気分がよくなってきた。」
「それはよかったです。」
「ティアさん?今のは魔法ですか?」
「はい。私修道院で過ごしていた時期がありまして。その時にいくつか回復魔法を教わりました。素質があったことを神に感謝です。」
「ありがとうございます。おかげですっかり元気です。」
やさしいティアさんにはぴったりだ。しかも僕も使えるようになった。これでもう酔いが怖くないと思うとかなり嬉しい。
時間帯としてはたぶん午後13時ごろかな?身体強化した馬たちの脅威のスピードのおかげで僕たちは王都グランヴェリアに到着した。
入り口の身分証明を済ませるとすぐに冒険者ギルドへ移動してくれた。馬の身体強化は解除もできるけど、制限時間もそろそろだったのでそのままでいいということだ。
「送ってもらってありがとうございました。でも本当に協力しなくていいんですか?」
「はい。ただでさえユウナ様に頼りすぎてご迷惑をかけているのです。それに私たちも少しでも自分たちで問題をクリアしないとすぐ人に頼る癖ができてしまうでしょうから。」
「わかりました。これ以上の問答は逆に不親切ですね。本当に困ったときはいつでも頼ってください。力になります。」
「はい。そんなことがないようにがんばります。それでは。」
馬車はゆっくり走りだす。僕は人ごみで見えなくなるまで馬車を見送っていた。
ティアさんの無事を祈りながら・・・
さて、ティアさんのことは心配だけど久々に男に戻れる!嬉しいなぁ。




