お買いもの。
4/26、読みやすいように行間をあける訂正をしました。
冒険者ギルドを後にした僕は今、路地裏の荷物の影にひっそりとしていた。
さっきちょっと表を歩いたらとにかく大騒ぎになった。正直落ち着かない。とりあえず追いかけてくることまではしないので、ここまで逃げてきた。
さて。これからどうしよう。せっかくだから買い物がしたい。でもこのままじゃ買い物ができない。元に戻ることも考えたんだけど、ティアさんの屋敷に行くときに困る。新しい服でも買えればいいんだけど、買ったところを見られたら意味がない。この状態じゃあ見られないなんて絶対無理だし。
魔法で何とかならないかなぁ・・・。魔法で・・・
何とかなりそう!
ワイバーンを倒したときに使える魔法が増えたみたい。「変身」の機能に服とかだけを変身できる能力が追加されてる。ただ、魔法少女になったとき限定なのと、変身した姿によって能力が反映されるってこと。たとえば剣士の格好をしたら剣士の能力になるとか。だから今みたいな力や防御はなくなっちゃうから注意が必要かな。って言っても今が過剰すぎるからちょうどいいのかもしれない。
ついでなので今回の戦いの勝利でなにが増えたのか確認してみる。
さすがに強敵だったせいか、他にも色々増えてた。まず「身体強化」を、威力がかなり弱体化してるけど他の人にかけられるようになったし、アンチマジックっていう自分以外の詠唱中の魔法や魔法効果のあるものを無効化する魔法に、あとブレス(火)を憶えてた。
・・・そう。ブレス。あれは固有の能力かと思ったんだけど、僕なら魔法で再現できるらしい。反則だと思うけど、もうね。魔法使いのすることじゃないと思う。どうしてこうなった!
あとややこしいのが一つ。召喚。これ、いろんな制約がある。
まず一つ。対価が必要。そして正規で契約したものじゃないと返還できない。
二つ目。正規で契約したものじゃないと、たいしたものは召喚できない。
三つ目。契約したものじゃないと、対価が莫大になる。
その代わり、対価さえ払えれば、こちらにとって異世界、つまり、日本の物も召喚できる!
もちろんお金も対価にできる。食べ物も召喚ができる。日本食が食べれる。
・・・ワイバーン倒して本当によかった。
たぶん今まで憶えた魔法の中で一番嬉しい。え?食材を召喚する魔法使いなんて魔法使いっぽくない?肉弾戦に空を飛んでブレスを吐く魔法使いがどこにいる?もう今さらだし。
散々歓喜した後、今はお買い物を楽しもうと気を取り直して服を変身した。
ステッキはブレスレットにして、服は町の人たちのを参考に目立たない格好にした。もちろんズボン。スカートは恥ずかしいからね。ミニスカで散々飛び回ってたけど。あと念のために髪型も変えた。ロングのストレートだったのを、適当な紐を使ってポニーテールにした。
裏通りからそっと出てきて町を歩く。うん。気づかれない。よかった。まずは何を買おうかなっと。
町の中心へ歩いていくとどんどん騒がしくなっていく。さっき以上に活気というか、本当にお祭り騒ぎだ。
ティアさん本気でお祭りにしちゃったよ・・・
そんなこと考えながら歩いていると、そこらじゅうからいい匂いがする。いろんなごたごたがあったからちょっとおなかすいたなぁ。と思いふらふらと屋台のほうへ。
肉の串焼きはちょっと硬かったけどおいしかった。牛肉に似た味だった。
果物はすごくすっぱかった。りんごの酸味がレモン並みって感じ。でもその屋台の周りで数人おいしそうにかじってたんだよね。味覚の違いかな?
あんまり食べ過ぎると夜食べられなくなるので、次は服飾関係を見て歩いた。次の変身の参考にさせてもらおう。
続いてアクセサリーの並んでたお店を冷やかして歩いた。金や銀のものも少しあったけど、木や鉄のもの、あとはきれいな石が使われたものがが多かったかな。たぶんメッキとかの技術はないんだろうな。変わりに何か力を感じるものがあったから、魔法道具的なものもあったんだと思う。さすがファンタジーの世界。
とりあえずリボンをいくつかとカチューシャ、髪留めようのバレッタなんかを購入。これで次に変装するときはレパートリーが増える。これは空間創造でアクセサリのカテゴリを作って入れた。
次は本がおいてあるお店を発見。とりあえず魔道書らしきものを数冊と、生活の知恵みたいな本を購入。今度は本棚の空間を作ってそこにしまった。今度暇なときに読んでみよう。
本をしまってしばらく歩くと日用品を扱うお店があった。これは必要なものだと思いさっそく覗いてみる。これからしばらく使うものだと思うと真剣に選んだ。
木でできたカップにお皿、簡単な机と椅子を四脚、それと鉄製のナイフとフォークを購入。そこそこお値段もしたけど、簡単ながらシンプルで落ち着くデザインだったのが気に入ったのでいい買い物だったと思う。これは日用品の空間を作って入れた。多少大きくても問題ないからこの能力って便利だなぁと実感。
途中武器や防具のお店もあったけど今回はパス。武器はともかく防具はいらないだろうし。
気がつくと日が傾き始めていた。そろそろお屋敷に行こう。そう思って振り向こうとして、ふと町のほうに目がとまった。みんな楽しそうだ。酒場や食べ物屋のほうからも笑い声が聞こえる。僕は胸が温かくなりながら、そこから歩き出した。
「どちらさまでしょうか?」
入り口にはベルちゃんがいた。でも僕って気づかないみたい。そういえば服や髪型を変えてるんだった。
「僕だよ。ユウナだよ。」
「ゆうなさまだったんですか。ふんいきがちがうからわかりませんでした。おかえりなさいませー。ただいましゅくしょうかいのじゅんびしてますので、ゆうなさまもこれからあんないするおへやでくつろいでください。あ、きがえとかされます?」
「あ、そっか。このままじゃさすがにまずいか。でも大丈夫だよ。なんとかなるから。」
「わかりましたー。じゃああんないしますねー。」
で、案内してもらった。覚悟はしてたけどやっぱりやるんだ祝勝会。
まずは服を服をなんとかしよう。ブレスレットにしてたステッキを戻してテレビドラマの祝勝会とかのシーンで使ってたような服を想像する。
「変身」
変身して姿を確認する。ステッキは今回、ネックレス状にしてみた。胸元にダイヤモンドが輝く。服は薄いピンク色の派手すぎないドレス姿にしてみた。腰のリボンがかわいい。あとは髪をどうしよう。せっかくだからさっき買ったバレッタで髪をまとめてみた。鏡がないから確認できないのが少し怖いけど、呼びにきてくれた人に確認してもらおう。
服装はこれでいいとして、あとは何かないかな。そういえばこれ僕の祝勝会なんだよね。僕にも何かできないかな。といってもたいしたことはできないだろうけど・・・
そうだ。あのワイバーン食べられないかな?教えて説明書。
(ワイバーンの肉は高級食材です。ご質問のあった亜種はさらに美味です。肝は薬にもなります。)
おぉ。おいしいんだ。まるまる一匹あるしどこか提供しよう。尻尾とか。調理方法とかどうだろう?
(この世界の調理法は煮る、焼くくらいしかありません。皮をはがして、外側の硬い部分は切り取ってください。内側の肉が食べられます。尻尾の先端の部分は違った食感が楽しめる高級部位です。)
なるほど。っていうか高級部位とかあるんだ。食べ方はどうしよう?焼肉風で大丈夫かな。そうなると味付けはどうしようか。せっかく召喚が使えるようになったから、実験もかねて焼肉のたれを召喚してみよう。
銀貨を5、6枚地面に置く。左手で銀貨を指し、右手は空に掲げる。
「召喚」
すると銀貨を置いた辺りがが輝く。まぶしい。光が収まったころには銀貨が消え、焼肉のたれと書かれたビンが数本置かれていた。どうやら成功したみたい。
「しつれいします。しゅくしょうかいのじゅんびがととのいましたー。うわぁ。ゆうなさますっごくきれいですー。ってこれなんですか?」
ベルちゃんが呼びにきた。姿はこれでだいじょうぶそう。でも彼女の興味は僕の足元のものにあるみたい。
「これはね、調味料だよ。僕も祝勝会に食べ物を出そうかと思って。」
「へぇー。かわったもようですねー。なにをだされるんですか?」
「ワイバーンの肉だよ。」
「え?あれたべられるんですか?」
「みたいだね。ワイバーンのお肉はおいしいらしいよ?」
「わぁ。じゃあたのしみですね。さぁかいじょうへいきましょー。」
さて、どんな祝勝会になることやら・・・




