ドラゴン退治です。え?ワイバーンはドラゴンじゃない?
思った以上に用事が早く片付いたので一つ更新します。
今回、ティアの視点も入ります。
どうしても入れたかったんです(;^^)
4/28、ベルの台詞を全部ひらがなにする変更をしました。
東の上空には巨大なモンスターが見え始めていた。あれってもしかして、もしかしなくてもドラゴン!?
「おい!あれってアナザードラゴンとか黒い暴風とか言われるヤツじゃねぇか!?」
「くそっ!こんな王都に近いところまで堂々とくるようになったのかよ!」
「大丈夫です!今自警団とシルヴェルト様の精鋭の兵が迎撃にむかっております!」
物騒な言葉が耳に入ってくる。周囲は混乱しつつも自警団とシルヴェルト家の私兵の人たちが的確に安全な方へと誘導を行っていた。迎撃チームもむかっている。きっと大丈夫だ。
でも僕は不安を消せなかった。
「ユウナさま、やしきにむかいましょー!ティアさまがしんぱいです!」
「う、うん・・・」
半分上の空で返事をしながらお屋敷の方へゆっくりと走り出す。
「俺、聞いたんだけど四日前にバーツの町がやられて大惨事だったんだってよ」
「マジか!あそこはゴールドクラスの冒険者を結構抱えてたはずだろ!?」
「空中からの攻撃になす術がなかったらしい。唯一攻撃できる魔法使いとバリスタをやられた後は一方的だったとか。」
「ふ、不安にさせるなよ・・・」
そんな声が聞こえたとき、僕は足を止めた。
「ュ、ユウナ様さま・・・?」
怖い。すごく怖い。あんなの無理だよ。早く逃げなきゃ。
じゃあなんで足を止めたんだ?
ここは活気があった。沢山の人の交流があった。でも冷たい言い方だけどそんなの僕には関係ない。自分の命の方が大事だ。それでも。僕は足を止めた。
きっと壊したくないんだ。そんな活気も。人も。そしてこの町を好きだといった人の素敵な笑顔を。言葉を。
出会ってまだ一日しかたってない。でもきっと僕にとってそれだけの価値が僕の中にあったんだ。
僕には空を飛べる道具がある。魔法もある。僕ならきっとあいつと戦える。だったら!
しゃきっとしろ!佐々木悠喜!男だろ!!
ぱぁん!!
僕は両手でおもいっきり頬をひっぱたいた。
叩いた所がじんじんする。でも、覚悟はできた。
「ごめんねベルちゃん。僕、あれを止めにいく!」
そう言うと僕はブレスレットの状態にしてたステッキを戻してそれにまたがる。
僕の空を飛べる道具は二つ。この羽のついたステッキと、背中の羽がついているリュック。
両方の力を使えば力の上乗せで、高加速してあの敵に近づくができる。
「みなさん下がって!ブースト!」
その言葉とともに僕の周りには風が生まれる。その風からふた周りくらい円の外にみんな離れてくれた。
風はどんどん強くなる。
思いっきり飛び出すために力をためる。
「さぁ、いくよ!フライ!!」
そういうとステッキを右手で軽くたたく。その瞬間、僕は爆発するような音と共に異様な速度で空へ舞い上がっていった。
思った以上にスピードが出てる。ちょっとだけ心配してた風やGも強化をしたせいかぜんぜん平気だ。これならぎりぎりドラゴンを町の上空まで入れなくてすむ。このまま体当たりをして外に弾き飛ばす!言うなら僕は弾丸だ!いっけぇっぇぇぇぇ!!
ずどぉぉぉぉぉぉぉぉん!!
すっごい音がした。
ドラゴンには何が起こったかわからないだろう。僕がとんでもないスピードで突っ込んだから。
ドラゴンの体は、くの字に曲がったあと、ゆっくりと落下し始めた。
落下先は見た感じでたぶん町の入り口よりちょっと離れた畑付近!よし!下には誰もいない!
そのまま落下していったドラゴンは地面に激突する直前に羽ばたく。ホバリングしながらゆっくりと地面に降り立った。
そしてこっちをひと睨み。まぢで怖い。
門の城壁の上から巨大な矢が数本飛んでいく!しかしあっさり弾かれた。ウソでしょ?でもそりゃそうか。僕の高速タックル受ですら貫通しなかったんだし。うぇ。ちょっと想像した。貫通しなくてよかった。
ドラゴンの視線が城壁のバリスタを撃った人たちに移る。まずい!注意をこっちに引き付けなきゃ!
「おい!そこのへっぽこドラゴン!ドラゴンの癖に弱いものいじめしかできないのか!貴様がでかいのはその図体だけか!」
苦し紛れに悪口を言ってみる。一瞬こっちをチラッとみたドラゴンはぷいっと視線を戻し、城壁へと近づいていく。もしかして人の言葉が理解できる?
「このヘタレ!!」
あ。こっち見た。うっわ、めっちゃ怒ってるっぽい!
怖い!けどこれでいい!けど怖い!
ドラゴンがすごい勢いでこっちに向かってきた。僕は飛行をリュックに任せてステッキを構える。
・・・やっぱり怖いから無理!
僕はあわててドラゴンの突進の射線から逃げる。
ヴォンッ!
そのとたんに聞いたことないような音と共に何かが一瞬で通過していった。
怖い怖い怖い!
ドラゴンが方向転換をしながら再びこっちに突っ込んでくる!僕はそれをよける!
2,3回そんなやり取りにイラついたのか、突進をやめたドラゴンが今度は大きく息を吸い込み、おなかが膨らむ!ブレスまでお約束かっ!
僕は心で突っ込みを入れつつ、距離を保ちながら向こうの水平の高さにあわせる。そして再び杖に跨りブレスに備えた。
ドラゴンの口から炎が吹き荒れる!けど僕は高速で円のように飛び回り回避する!
突然ドラゴンがブレスを止め、僕に後ろを見せるように円の逆に回転する。
そして尻尾が僕に迫る!
しまった!
がん!!という音と共に鉄か鉛でも叩きつけられたような感触を味わうと視界がブラックアウトする。
気がつくと地面に叩きつけられていた。うわ。クレーターができてる。でも落ちた場所が町の外、しかも道でよかった。畑だったら作物を吹っ飛ばしてたもんね。
我ながらあんな攻撃を受けてなぜこんなに余裕があるのか?
・・・実はあんまり痛くなかった。そのギャップに耐えられなくて軽く現実逃避をしてたことは否定しない。
いけない!戦闘中だった!軽く混乱してたっぽい!
我に返った僕はドラゴンを探す。いた!ゆっくりと町に近づいていく!けっこう飛ばされたからもう猶予はない!僕は杖に跨り全力で再び空中へ舞い上がっていった。
~ティア視点~
最悪の天災。アナザードラゴン。黒い暴風といわれる巨大な黒いワイバーンが城壁にいる私たちに近づいてくる。
町の治安に協力している兵から報告を受けた私は今、城壁にあるバリスタにいた。兵たちには止められたが、私の好きな町が破壊されるのを黙ってられず強引にここまできた。
私がここについたときには、ユウナ様がヤツと空中で対等に戦っていた。ユウナ様がヤツと対等に戦える事や、空を飛んでいるというありえない自体も頭に入ってこず、ただユウナ様が勝ってくれることだけを祈った。
ユウナ様が尻尾で弾き飛ばされた。ユウナ様が負けた。私は愕然とした。だが納得もした。もはやほぼドラゴンと同等と言われるヤツに善戦しただけでも不思議なくらいなのだから。それでも。
悔しい。憎い。あのワイバーンが。だが私は泣かない。最後までヤツを睨みつける。
ワイバーンは邪悪に顔を笑顔に歪めながらゆっくりと口を開く。
「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
空から声が聞こえてきた。あぁ。初めて会ったときもそう言って私を助けてくれた人の声だ。
喜びが溢れてくる。助かるんだ。私の好きなこの町が。
そう確信した瞬間、空から希望が降ってきた。
ちなみにこの時点で悠喜はあれがワイバーンで真性のドラゴンじゃないことを知りません。




