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二兎を追う者はなんちゃら

作者: 桜音

バレンタインチョコを見て頭に浮かんだ言葉を羅列しました。

終わり方もやもや系につきご注意下さい。

今年は例年より暖かい日が続き、真冬を感じないまま正月が明けた。

正月が明けると、バレンタイン商戦が始まる。

コンビニでもデパートでも、様々なところでチョコレートのフェアが催され、どこからとなく甘い香りがするような気もする。

でもバレンタインデーはまだ先だ。


そう、つい先日思っていたのに、気づけばもう2月になっていた。

今年もあっと言う間に過ぎそうだ。

まだまだ1年が始まったばかりだというのに、もうそんな予感がした。

さて、今年のバレンタインはどうしよかな。



うん、これでよし。

土曜日、今日はデート。

サービス業のせいなのだろうか、年上にもかかわらず、首から下は学生の様な雰囲気の彼の横はこれくらいのコーデがいい。

でも、唇に真っ赤なルージュをのせるのは忘れない。

部屋に置いてある全身鏡で最終チェックをして、鏡にむかってニッコリ微笑んでから家を出た。


「お待たせ。」

我ながら10分の遅刻に悪びれることもない爽やかな登場である。

些細なことで怒りはしないが、些細な変化に気付かない彼。

髪型を変えても、メイクを変えても気づきもしない。

いつものことだ。

でもお互い様か。


薄暗い室内が時折明るくなってはまた戻る。

色味も抑えられおり、ぱっと目を引く華やかさはないが、よく見ると服とか家具とか何気ない小物がいい。音楽も好きだ。

内容はよくわからない。

派手な演出があるわけでもない。

でもなぜか惹かれる。

それが私にとってのフランス映画だ。

私が選ぶ映画は、はっきりいってマイナーなのが多い。

彼は本当はこういうのは好きではないかもしれない。


「いい映画だったね。」

「そうだね。」


映画を観て、ウィンドショッピングをして、ご飯を食べてから、私たちは高層ビルの夜景スポットに向かった。


窓際に置いてある、いわゆるカップルシートの1つに腰掛ける。

私たちは恋人ではないー彼にとって私は彼女かもしれないが、私にとっては彼は彼氏ではないーのだが。

しばらく他愛のないおしゃべりをして、はたと気が付いたようにバックからチョコレートを取り出す。

某有名チョコレート専門店のトリュフ6個入り、お値段2484円。

「そうだ。はい、これ。」

「おお!ありがとう。」

「開けていい?」

「うん。」

「パッケージからして絶対美味しいよね。」

「何それ。」

「おー!トリュフですか。…うまー!」

「良かった。私も食べる。」

「え!食べるの⁉︎」

「え、ダメなの?」

「や、だめとかじゃないんだけど。くれたんじゃないの?」

「私のチョコだよ。半分あげただけ。」

「あ、そうなん。じゃ、どれ食べる?」

「じゃあ、これ!」


「んー、美味しかった。…ね!」

「美味しかった!ありがとうね。」

「…あの、さ。チョコのお礼じゃないけど、これ、受け取ってほしい。」

「え、何これ。指輪…?」

「僕と結婚して下さい!」

「え、」

「返事は今日じゃなくていいから。」



日曜日、今日もデート。

今日のコーデは、服はシンプルに、小物をブランドものにすることで洗練された雰囲気を心がけた。

昨日のことを頭から追い出してから家を出る。


待ち合わせ場所に着くとCMでよく見る車種の車が止まっている。

「こんばんは。」

「久しぶり。取り敢えず乗って。」

彼と会うのは約1ヶ月ぶり。

3ヶ月前に知り合って、今日で会うのは3回目。

私が今、1番気になっている男性だ。

車に乗り込むとまずはチョコレートを渡す。

これまた某有名チョコレート専門店のクッキー5枚入り、お値段571円。

「ありがとう。」

友達以上恋人未満の関係。

あくまでもさりげなく、だ。


「ご飯、何食べたい?」

「うーん。前回イタリアンだったから、洋食か中華ですかね。」

「了解。じゃあ美味しい中華の店知ってるから、そこでいい?」

「はい。」


何を食べたいか、正直なんでもいい。

でも決してそんな回答をしてはいけない。

あまり絞りすぎてもあれだから、ジャンルで2つくらい選択肢を出すのがいいんじゃないか、と私は思っている。


彼とのデートは毎回この時間から。

彼が住宅機器メーカーの営業で、私が仕事のない土日も、彼はイベントなどがあって休みではないから仕方ないかもしれないが、下心を感じずにはいられない。


しばらく車を走らせたところに、中華料理屋はあった。

中に入ってみると、カジュアルさはないが、堅苦しくなく、落ち着いた雰囲気のお店だ。

席は半個室になっていて、まったりと話すことができる。


メニューから好きなものを何点かチョイスする。

酢豚とエビチリは外せない。


様子を見ながらタイミングよく運ばれてくる料理。

「美味しい!」

「良かった。」


彼とは仕事の関係で知り合ったのだが、特に接点があるわけではないので、共通の話題がない。

必然的に話の内容は近況報告や仕事の話になってしまい、色っぽさはまるでない。

彼が時々、冗談のように誘うその言葉だけが、私たちの会話に色を添えていた。


「てか、チョコありがとうね。俺、本当に嬉しかった。」

「大げさですよ。ホントにささやかですけど。でも、喜んでいただけたなら私も嬉しいです。」


少しの間。

彼が水を飲むのを、何気なく目で追ってしまう。

顔を上げた彼と、ばちりと目が合う。

「おれ…、俺は本気だから。こんなこと言うと、気が早いって思われるかもしれないけど、俺と結婚を前提に付き合ってほしい。」


ごほっ


彼につられて飲んでいた水を危うく吹き出しそうになる。



こういうのってなんていうのかな。

『二兎を追う者は一兎をも得ず』ならぬ

二兎を追う者は二兎に追われる。

いや、意味わかんないか。

ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 二股はいかんよ。悲しいよ。 ←経験者は語りき
2016/01/28 17:09 退会済み
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