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東方影響録  作者: ナツゴレソ
番外編集
5/202

番外その三 幻想郷のインフルエンサー 底

 こちらは三部構成の番外編の最終話になります。


 今回の内容は北斗の交友関係についての雑談が主です。


 少しでも北斗の日常が伺い知れたらなと思い投稿しました。


 またこちらも八章まで読んでいないとネタバレの可能性がありますのでご注意ください。

「大したことはしてないよ……えっと、どこから話そうか?」


 俺の普段の生活を書いても面白いとは思わないけれど……隠しているわけじゃないし、無下に断る理由もない。

 とりあえず聞かれたことは答えるつもりだ。


「それじゃあまずは……紅魔館の住人について聞きたいです。特にあの吸血鬼姉妹とどう接してるかを詳しく」


 阿求さんが真剣な表情で尋ねてくる。何だか気合が入っているが……こっちが緊張するな。

 さて紅魔館か。確かに人里からも近いし、何より吸血鬼を初めとした力を持つ妖怪……と人間も多い。気になるのも無理はないだろう。が……


「レミリアさんとはお茶しながら話したりボードゲームしたり……偶に無茶ぶりされて困ったりするくらいです。フランちゃんとも一緒に遊んだり、料理教えたりしてるだけですし……」


 素直に言ったつもりなのだが、阿求さんは一瞬呆けたような顔をしてから、信じてないようで訝しげな視線を向けてくる。

 その様子を見た魔理沙も呆れの含んだ口調で言葉を零した。


「あー、北斗はあの姉妹のお気に入りだからなぁ……てか、紅魔館のメンツに限らずに色んなのに気に入られてるからその質問はナンセンスだぜ」

「なるほど……北斗さんはすけこましなんですね、気をつけないと……」

「ちょ、その言い方は語弊がある! 確かに色んな人仲良くしてもらってるけど、それは友人としてだから!」


 慌てて取り繕うが、何故か女子二人は俺を見てヒソヒソ話をしている。

 まあ、自分だって幻想郷に来てから交友関係は上手くいき過ぎだと思ってる。いつかその反動が来るのかもしれないが……


「まあ、それは置いておくとして……あの館には吸血鬼姉妹以外もいますが、彼女らとも交流をしてるんでしょうか?」

「ええ、まあ。美鈴さんからは武術の手解きを受けていますし、咲夜さんの仕事を手伝ったりもしますよ。パチュリーさんからはよく本を借りてますね」

「……本当に全員と仲がいいんですね」


 阿求さんがついに達観したような声音で呟いた。何だか申し訳ないな……

 まあ、これも紅魔館直通の転移魔法陣があるせいではあるのだが。ついつい暇潰しに行ってしまうのだ。

 特に魔法陣の位置関係上よくパチュリーさんや小悪魔さんと会う。読書は幻想郷の中でも数少ない娯楽なので、色々本を選んでくれるパチュリーさんには感謝してるよ。


「まったくパチュリーのやつ、北斗には普通に貸し出しするのにどうして私にはあんな頑なに抵抗するんだよー!」


 魔理沙が頬杖を突きながら、ふくれっ面で文句を言う。

 それは死ぬまで借りるなんて言ってるからなんだが……

 そうだ。今思い出したけどパチュリーさんに今度本を取り返しに行くのを手伝ってほしいって言われてたな。新スペカの公開はそう遠くなさそうだ。




「仲がいいといえば……早苗と一緒にいるところをたまに見かけると、もっぱらの噂ですよ」


 噂って……幻想郷も外と変わらず下世話な話が廃れることはないのだろうか?

 しかし、早苗は神様で信仰を集める仕事があるわけだし、嫌なイメージが広がるのはよくないな。ここは早苗の為にもちゃんと言い訳しないと。


「早苗とは外の世界での知り合いなんですよ」

「そういえば早苗がそんなこと言ってたな……どういう関係なんだ?」


 魔理沙が何故かニヤけ顔で聞いてくる。どうも含みがあるな……阿求さんも興味深々といった様子だ。


「えっと……学校っていう勉強する場所で、先輩と後輩の関係だよ」

「早苗が北斗を呼ぶとき『センパイ』っていうのはそういうことか! で、向こうでは付き合ってたのか!?」

「けれど、早苗は幻想入りしてしまい離れ離れ……」

「だがしかし迷い込んだ幻想郷で二人は出会い……」

「「二人の愛は燃え上がる!」」


 ……突然乙女二人のテンションが急上昇して二人でじゃれ合ってる。いや、確かにあの再開は奇跡であるが……そう茶化されても面白くない。

 俺は咳払いを一つして、声を張り上げる。


「とにかく、俺と早苗は先輩後輩! それだけ! はいこの話終わり!」

「ま、そういうことにしといてやるぜ」

「そうですね、脱線してしまいましたから別の質問をしましょうか」


 ムカつく言い方だが……とりあえず話題は変えることは出来たようだ。

 ようやく気を静めた阿求さんが仕切り直す。


「これも人里の噂なんですが、ここ最近竹林の方へ行くのをよく見かけるらしいんですが……何をしてるんですか?」

「あぁ、それは永遠亭に行って色々お手伝いをしてるんです」

「……以前話された蓬莱人の話の類ですか?」

「そんなとこです」


 そういえば、阿求さんにはこの話をしたっけか。

 自分が直接起こした異変の話はともかく、不老不死の話をするのはギリギリまで悩んだ。それでも俺の能力が遠因で起こった騒動ではあるし、隠したくなかったから話したが……今思えば当時者の妹紅さん達への配慮が足りなかったな。

 妹紅さんと慧音さんの二人にそのことについて謝りに行かないと。


「そのことなら誰にも喋ってはいませんよ。私も里を混乱に陥れたくはありませんから」


 と、気にしてるのが顔に出てしまったようで、阿求さんが静かに呟いた。

 阿求さんは転生体とはいえ、この歳で実に思慮深い。当主を務めるものとしての責任がそうさせているのだろうか?




「もう少し質問いいですか?ここ最近地底の方にもよく出向かれるらしいですけど……大丈夫ですか?」


 阿求さんが不安げな声音で尋ねる。

 気持ちはわかる。一般人からしたら地底は超危険地域だ。そんなところに行っているとなると不安にもなるのかもしれないが……


「大丈夫ですよ。用もなく旧都をうろつかない限り厄介事はありませんから」

「いや、あそこ自体厄介事の巣窟だと思うぜ。ふぁ~……」


 魔理沙が欠伸をしながら言う。飽きてきてるな。

 だが、本当にそこまで危ない場所だと思えないのは俺が変なのだろうか?

 旧都も表通りを歩くぐらいなら、何も言われないし、弾幕ごっこ以外で襲われたこともない。もしかしたらさとりさんか勇儀さん辺りが釘を刺してくれているのかもしれないが……それを加味しても、そこまで怖い場所だとは思えないんだが。

 と、内心で不思議に思っていると阿求さんが机から乗り出すようになりながら質問を重ねてくる。


「そもそも何をしてるんですか? また遊びに?」

「それもありますけど……まあ、色々と」


 色々、というか主にこいしがフラフラ神社まで来ては送って行ってと頼んでくるせいなんだけどね。

 そもそも妖怪だし、能力で誰にも見つかりはしないのにな。わざわざ送る俺も甘いんだろうけどさ。

 そして送り届けた所をさとりさん達にもてなされたり、勇儀さんに酒をつき合わされたり、パルスィさんやヤマメさんに弾幕勝負を挑まれ帰りが遅くなるのが、地底でのテンプレと化してきていた。

 特にパルスィさんには目を付けられているようで、よく絡まれる。こいしといるのを見られた時は必ず妬ましい妬ましい言いながら追いかけてくるのは、勘弁していただきたい。


「ま、異変に繋がるようなことはしてないんで安心してください」

「そこは気にしてなかったんですけど……まあ、いいです。貴方のふてぶてしさと見境なさを再認できましたから」

「何だろう……また語弊のある言い方だ」







「さて、中々面白い話が聞けました。資料にするには余分過ぎるくらいです。本日はありがとうございました」

「いえいえ、俺の方も結構楽しかったですから」


 結局最後の方はほぼ世間話になっていたけどね……まあ、楽しかったからいいけどさ。


「それじゃあそろそろお暇させてもらいます。またいつでも呼んでください」

「ええ、また異変を起こしたら、お呼びするかもしれますね」

「う……出来るだけ呼ばれないように努力します」


 最後に中々キツイ毒を吐かれてしまった。




 その後俺と魔理沙は二、三言挨拶をして稗田家の屋敷を後にした。上空で魔理沙と別れ、神社への帰り道をのんびりと飛ぶ。

 空を飛ぶ感触にもすっかり慣れて、今や楽しむ余裕すら出てきた。


「それにしても、幻想郷縁起かぁ……」」


 まさか自分が幻想郷の書物に乗ることになるとは思っても見なかった。

 何だか考え深いな……いい内容で乗せられるかどうかは置いといて、自分がこの幻想郷の一員となった証のように思えて、少しうれしかった。


「印刷第一号を見せてくれるって言っていたし、楽しみだな」


 俺は浮かれた気持ちで家路を飛ばした。






 それから数週間ほどして、買い出しに行っていた霊夢の手を通じて印刷第一号が手元に渡った。


「はいこれ、アンタに渡せって」

「あぁ、これか!意外と薄いな……」


 俺は包装用の風呂敷を開き、真新しい紙に擦られた本を手に取る。手触りがいい、いい紙を使ってるなぁ……


「これが幻想郷縁起……って、えっ?」

「何変な顔してるのよ北斗?」


 俺は題名を見て思考が停止してしまう。その様子を訝しんだ霊夢が俺の持つ本を覗き込む。


「何々……『幻想郷影響録』?なにこれ?」


 霊夢が首を傾げる。いや、こっちが聞きたいんですけど……

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