番外その三 幻想郷のインフルエンサー 中
こちらは番外編の続きになっております。
今回は北斗のスペルカードについてのまとめ回になっております。
いずれも作者オリジナルスペカですから、そういうのは苦手、求めていないという方は読むことを推奨いたしません。
ご注意くださいませ。
「グリモ……なんだって?」
北斗が変な顔して聞き返してくる。阿求も知らないようで首を傾げていた。何だ知らないのかよモグリだなぁ……まあ、他人には見せたことないから当然だけどな。
「何というか……あれだ、私の研究資料みたいなもんだ。他の奴のスペカを纏めてるんだぜ」
「研究資料って……それじゃあ、俺のスペカも書きたいと?」
「そんなとこだ。北斗のスペカは面白いからなー、阿求も能力や実力をもっと知りたいだろ?参考になると思うぜ」
私がそう持ちかけると阿求はしばらく悩んだ後、渋々頷いた。よし、何とか二人を丸めこんだぜ……!チョロいな。
「よっしゃ、それじゃあ解説は私でやるから北斗と阿求で一言コメントをくれ。後阿求、席代わってくれ。それと紙と筆借りるぜ」
「あ、ちょっとその紙は書きかけだから別の紙に……!」
私は阿求と席を替わると、思いつくがままに紙にメモをしていくことにした。
No.01 乱符「ローレンツ・バタフライ」
北斗がよく使ってる代表的なスペカだ。距離が離れるほど弾幕が厚くなるが、近付きすぎたら避けにくい。小さな蝶の羽ばたきが遠くの国で嵐を巻き起こす、っていうのを表現した弾幕らしい。
これからの弾幕ごっこを始める人は是非お手本にするといい、というほど普通の弾幕。研究対象としては魅力がないな。
北斗「一枚目から結構毒を吐かれてるんだが……最後まで俺の精神は持つんだろうか?」
阿求「蝶を模した弾幕……北斗さんには似合わないですね。蛾にでもしたらどうですか?」
No.02 裏技「天崩昇連脚」
霊夢のスペカ『神技「天覇風神脚」』をアレンジした技。後ろ宙返りからの蹴り上げを三連発で当て、最後に踵落としを決める。
北斗曰く「何度も失敗するから無理やり形にした劣化版」らしいが、普通の人間はあの蹴り上げを三連発も当てられないし、そこから踵落としなんて出来るわけがない。
元々武術をやってたとはいえ、あんな動きが出来る北斗はただものじゃないな。
阿求「虚弱体質の私には人外の動きしか見えないですね」
北斗「練習したら案外いいとこまでいけますよ。飛べること前提ですけど」
No.03 神符「トリニティフェイス」
これはスペルカードと呼べるのか? 影響の力で北斗の奉げる信仰の力を高め、守矢の神の加護を得るスペルらしいが……使うと本人達が現れ、北斗の代わりに弾幕を放ってくる。
ただ忙しかったり、気が乗らなかったりすると召喚に応じなかったりもするらしい。ま、早苗が北斗の呼びかけに答えないなんてことは痴話喧嘩でもしてないとなさそうだが。
阿求「神様を呼び出すだなんて……北斗さんは巫女の素質がありますね」
北斗「せめて神主と言って下さい。けど、このスペカ……パシリに使ってるようで使いづらいのは何とかならないかな……」
No.04 波及「スロー・ザ・ストーン」
これもローレンツ・バタフライと同じく典型的なスペカだ。花火の様に広がる散弾を投げつける弾幕で、その広がり方は水面に広がる波紋を模している。まさに名の通り一石を投じるスペルだ。
構成としては面白いし、模倣もし易い。今度パクるか。
北斗「どうどうと盗作宣言されたんだが……」
阿求「盗人猛々しいとはこの事ですね」
No.05 反火「金鑽バックファイア」
このスペカは流石に真似できないな。火喰い鳥の妖怪、波山火依とその魂の入れ物の封魂刀がないと成り立たないからだ。
火依の能力を封魂刀に影響させることで刀身に炎を吸収させ、それを威力を倍増して放つ。名前も火依の持つスペカの名前をそのまま使っているらしい。
北斗の能力、そして火依の魂と封魂刀のどれか一つでも欠ければ使えないが、それにしては使える機会が少なそうなスペカだ。
北斗「剣に炎を溜めておけるってのは意外に役に立つぞ。いつでも焚き木が出来る」
阿求「火依さんについてもいずれ詳しく聞かないといけませんね……妖怪兼幽霊なんて珍しいもの」
No.06 鬼化「スカーレット・ブラッド」
まさに『影響を与える程度の能力』の真価だな。レミリアとフランの影響を受け、一時的に吸血鬼としての身体能力を得る強力なスペカだ。
ただ弊害として吸血鬼の弱点である日光や流水にも弱くなってるところを見ると、一時的に本当に吸血鬼の身体になっているようだ。
レーヴァテインやグングニルを振り回し高速で飛び回る姿はあの姉妹を髣髴させるうっとおしさだ。
北斗「ちなみにレミリアさんが言うには、二人の血を得てる訳じゃなくて、新たな血統の吸血鬼になっているらしい」
阿求「一時的だとしても、人が妖怪化するなんて……戻れなくなったらどうするんでしょう?」
No.07 剣偽「紫桜閃々」
妖夢の『剣伎「桜花閃々」』とほとんど同じスペカ。高速の縮地で駆け抜け敵を一閃する。
話によると妖夢と北斗は剣の師弟関係らしく、これは修行の中で会得した技らしい。妖夢師匠からはまだまだ未熟だと言われていたので、頑張れよ北斗。
北斗「ちなみに名前は幻想郷で初めて見た桜の色から取ってる。早く偽の剣技から本物の剣技だと自称できるほどの腕前になりたいものだ」
阿求「霊夢だけじゃなく妖夢さんとまで修行を……意外と強さへのこだわりがあるんでしょうか?」
No.08 現想「夢葬回帰」
おそらく現状の北斗のスペカの中でもっとも強力なのがこれだろう。自身の周囲に幻想の力、つまり非常識を否定する結界を七つ浮かび上がらせ、敵にぶつける。
この非常識を否定する結界というのが厄介で、この結界の中では魔法もろくに使えなくなる。それどころか妖怪などは存在の維持すら危ぶまれる凶悪なスペルカードだ。
霊夢の夢想封印と似ているが、あれほどの追尾性も手加減もない。一番注意しないといけないスペルだろう。
北斗「けど、紫さんからはあんま使うなって言われてるんだけどね。まさに切り札だよ」
阿求「夢を葬り、回り帰らせる……幻想郷のあり方と矛盾しているスペカに思えてならないですね」
一通りメモ書きを書いた所で私は一息吐く。基本的に暇を使って好き勝手に書いてた物だからこうやって本人にインタビューしながら書くことに慣れてない。ぶっちゃけ疲れた。だが、内容としては物足りないな……
「さて、結構纏めたがまだまだ数が少ないな……まだ他のスペカもあるんだろ?見せてくれよ」
「次戦うことになったら嫌でも見せてあげるよ」
「へえ……何なら今すぐでもいいぜ……!」
まさか北斗から勝負を仕掛けてくるとな! 私がやる気満々で今すぐ表に出ようとするが、それを阿求が咳払いで止める。
「んん、勝負ならまた別の機会にしてもらえませんか?私はまだまだ北斗さんに聞きたいことがあるんです」
「ということだ。新スペカの披露はお預けだな」
ちぇ、珍しく北斗が乗る気だっていうのに……ま、いつでも出来るし、いいんだけどな。私は畳に倒れ込みながら、阿求に尋ねる。
「けど他に何を聞くんだ?北斗に関して他に聞くとしたら……」
頭を捻るが……強いてあげるなら北斗の周りの女性事情しか出てこない。最近強力なライバルが増え始めてますます面白くなってきてるからなぁ……同時に収拾もつかなくなってきてるが。
そんな下衆な勘繰りをしていると、阿求がお茶で喉を潤してから口を開く。
「北斗さんは様々な勢力と精通してますよね。紅魔館や守矢、命蓮寺……色んなところで見たという話を聞きますよ」
「確かに私ほどじゃないが、結構忙しそうにしてるよな……何やってるんだ?」
そういえば前々から気になってたんだよなぁ……霊夢は付いて行ったりはほとんどしないらしいから、まったくわからないんだ。
私と阿求の二人に尋ねられ、逃げ場を失った北斗は足を崩しながら頭を掻いた。
「えっと、大したことはしてないよ……多分。それじゃあ、どこから話そうか?」




