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東方影響録  作者: ナツゴレソ
番外編集
10/202

特別短編 幻想郷の聖夜

 こちらは時空系列も何も無視した短編でございます。


 クリスマスとかいう雰囲気に当てられて書きました。そこそこ後悔してますが反省はしてません。


 気持ちラブコメを意識して書いたのでそれらが苦手な方はご注意ください。

「北斗、サンタしようぜ! お前トナカイな!」

「何を言ってるか分からないが、とりあえず座ろうか」


 俺は唐突に障子を開け放ち現れた魔理沙に向かって冷静な言葉を飛ばす。あと日本語がおかしいぞ。サンタするってなんだ。初めて聞いたぞ。

 せっかく人が炬燵で暖を取ってるというのに、今に冷え切った外気が入ってくる……まあ、換気だと思うことにするか。

 ハイテンションな魔理沙も寒さには勝てないのか、すぐさま障子を閉めると、帽子を脱いでいそいそと炬燵に潜り込んだ。その拍子に蹴ってしまったのか、亀状態で寝ていた霊夢がモゾモゾと布団から這い出てくる。


「……何よ五月蠅いわねぇ。今日は何の用よ?」

「霊夢、トナカイしようぜ! お前サンタな!」

「何言ってるかわからないけど、とりあえずみかんでも食ってなさい」


 不機嫌そうな顔をして座った霊夢は、おざなりにそう言うと炬燵机に置かれたみかんを魔理沙に転がした。






 みかんを数個食べて落ち着いた魔理沙は冷静に話を始める。


「いや、これは香霖から聞いたんだがな。外の世界にはクリスマス、って行事があるらしい。その日限定で現れるサンタっていう紅白衣装のオッサンは不法侵入しといて何も取らないどころか、プレゼントを置いていくらしいんだ。何のためにやってるんだろうな?」

「さあ? そうやってばら撒いて信仰を集めてるんじゃない?」


 霊夢は煎餅を齧りながら適当に返す。それにしても適当なことを言っているのにも関わらず妙に納得してしまった。

 なるほど、サンタクロースは基本的には幻想の存在だが……外の世界ではまだまだ子供達からの信仰は途絶えてない。子供達にプレゼントがまったく行き届かない殺伐な時代になるまで、幻想郷にサンタが来るまでまだまだ時間が掛かりそうだ。俺がひとり言い得て妙だと感心していると、魔理沙が眉間にしわを寄せながら腕を組んだ。


「……どうも情報が足りないな。なあ北斗、外来人なら色々知ってるだろ? 教えてくれよ」

「まあ、外の世界ではみんな知ってる行事だからね。特に日本は」


 そもそも祭好きな幻想郷でクリスマスが普及してないことに、俺は驚いていた。幻想入りした外来人が普及させていそうなんだが。特に早苗とかこういう行事が好きそうだし。


「クリスマスは元々西洋の宗教のお祭りだから、霊夢の言ってることはあながち間違ってないね。けれど、日本では宗教行事じゃなくて、ただ美味しいものを食べて騒ぐだけのお祭りに化してる節はある。もしくは恋人と過ごす日っていう認識の人も多いかも」


 外の世界ではまったく縁遠いかった話だけど。クリスマスの印象的な思い出と言ったら、祖父が熊を仕留めて熊鍋とケーキを食べたぐらいだ。絶対食い合わせ悪いよな……

 俺が一通り説明を終えると、台所から急須を持った火依が現れる。


「……クリスマス? ケーキが食べられる日の話?」


 火依は身も蓋もないことを言いながら炬燵に座る。幽霊だから気温をあんまり感じないらしいのだが、俺と霊夢が入ってると仲間外れは嫌という理由で炬燵に入る。意外と寂しがり屋なのかも。色々と言われた魔理沙はさらに顔をしかめて唸る。


「宗教行事なのにプレゼント貰い旨いもの食ってイチャコラする……なんだかわからない行事だな。結局何をすればいいんだ?」

「……まあ、パーティーでもすればいいじゃないかな」


 適当に思いついたことを口任せに超えると、魔理沙はしばらく間を開けてから立ち上がった。


「ま、細かいことは抜きにして騒げばいいか! ちょっと紅魔館の奴らそそのかしてくるぜ!」


 そう言い放つが早いか、魔理沙は帽子を被り直すと大急ぎで出て行ってしまった。その様子を見た霊夢が、俺の方を向いてにやけ顏で台所を指差す。


「北斗、今のうちに準備をしておいたら? ああなった魔理沙は誰も彼も巻き込んで一大事にするわよ」

「ケーキ! 北斗、ケーキ作って!」


 霊夢の言葉に火依も便乗する。もうクリスマスパーティをすることは確定のようだ。しかし、火依……そんなにケーキが好きなのか。流石にホールケーキなんて作ったことないんだが……


「わかったわかった。とりあえず手羽はあったかなぁ……」


 俺は名残惜しくも炬燵から出て台所へに立つ。するとまるでタイミングを計ったのように、桐箱を抱えた藍さんが裏勝手口から現れる。


「邪魔するぞ……あぁ北斗殿、ちょうどよかった。さっそく頼まれた食材を持ってきたぞ」

「えっ、頼んだって……そもそも今日は紫さんと会ってもないんだけど……」

「紫様はここでパーティをすると……あぁ、また紫様のお戯れか。まったく、あの方は……」


 藍さんがやれやれと頭を抱える。妙に慣れているし、よっぽど迷惑掛けられているんだろうなぁ……

 まあ、課程はどうあれ買い出しに行く手間は省けた。さてクリスマスにパーティーなんてやったことないけど……せっかくだから腕を振るってみますか。






「センパイ! 今夜出掛けませんか……? もちろん二人っきりで!」


 裏勝手口から入ってきた早苗は戸を開くやいなや、満面の笑顔で言い放つ。突然現れた早苗をその場にいた俺……と藍さんと咲夜さんとフランちゃんと橙ちゃんが見遣る。その光景に早苗は逆に身じろぎしていた。


「……え、何でこんな人が多いんですか?」

「あ、サナエ! 今からクリスマスパーティーっていうのをするらしいの! サナエもやろうよ!」


 エプロン姿のフランちゃんがパタパタと歩いていき、早苗に抱き着く。しかし、早苗はそれに反応せずにふらふらと壁に寄り掛かり茫然と呟いた。


「来るのが……遅すぎた……!」




 よく分からないが気を取り直した早苗も加わって、三人でクリスマス料理の作成を始める。ちなみにフランちゃんと橙ちゃんは紅魔館の方へ移動し、咲夜さんに教えてもらいながらケーキを作るとのこと。ここにはオーブンないし手狭だから致し方ないな。

 天ぷら鍋を熱しながらサイドメニューを考えていると、割烹着姿の早苗が菜箸を動かしながら聞いてくる。


「センパイ、から揚げってあとどれくらい漬けますか?」

「あー、もういいかも。油を用意してるから、汁気を取って片栗粉をまぶしておいて。全体にまんべんなくね」

「任せてください!」


 歯切れのいい返事に俺は頷きを返した。

 早苗は毎日家事をしているのもあって、手際がいい。唐突に開催が決まっただけに下準備が間に合ってなかったので、人手が増えて大助かりだ。先程どうも何か用があったらしいんだが……一体なんだったんだろうか?まあ、何も言わないあたり大した用ではないだろう。

 しばらく調理に没頭していると、居間の方がザワザワと騒がしくなってきた。窓の外を見ると暗くなり始めている。後は盛り付けだけだし、なんとか間に合いそうだ。

 俺は手を洗いながら、調理器具を拭いてくれている藍さんに話しかける。


「さて、後は足りなくなったら合間に作る形でいいですかね」

「あぁ、そうだな……それにしても橙は大丈夫だろうか?包丁で指を切ったりしてないだろうか?」

「……ここは大丈夫ですから、様子を見に行っては?」


 よっぽど橙ちゃんが心配なのか、藍さんはソワソワして落ち着きがない。たまらず俺がそう進めると、藍さんは一言礼を返して一目散に納屋に向かっていてしまった。他人に厳しそうな見た目なのに結構過保護だなぁ、藍さん。

 二人きりになったところで、早苗が三角巾を外して髪を払う。


「結構疲れちゃいましたね、センパイ。外の空気にでもあたりに行きましょうよ」

「そうだな……流石に動きすぎて熱いし」


 俺は早苗に誘われるがまま勝手口に出る。すると空から白い粒が降ってきていて、地面を僅かに湿らせていた。


「センパイ! 見てください雪、雪ですよ! ホワイトクリスマスです!」


 子供のように喜びながら早苗は雪の中をクルクルと踊る様に回る。ホワイトクリスマスは積もらないと駄目らしいんだが……そんな野暮なことを楽しそうな早苗に向かって言うことはできなかった。しばらくその様子を微笑ましく眺めていると、早苗は少し顔を赤くしながら戻ってくる。


「ちょっとはしゃぎ過ぎました」

「別にクリスマスくらいはしゃいだっていいじゃないか」

「そう、ですかね?」


 早苗はそう呟きながら、おもむろに俺の目の前に立つ。どこか緊張した面持ちだ。そして目を瞑ってコツンと頭を胸板に預けてくる。


「ならクリスマスですし、これくらいいいですよね……?」

「早苗……」


 いつになく甘えられて、俺は思わずドギマギしてしまう。早苗が俺の肩に手を乗せてくる。そして……


「ダメーッ!!」

「ぐはぁ!?」


 突然側面からのタックルを喰らって、ひんやりとした地面にこすり付けられる。何事かと起き上がると、こいしが俺の胴にしがみついていた。それを見た早苗がワナワナと肩を震わせながら叫ぶ。


「な……ちょっとこいしさん! もう少しだったのに邪魔しないでください! てか離れてください!」

「いーだ! 北斗は私とお姉ちゃんのモノだもん! ねー?」

「ちょっとこいし! 私はあくまで霊夢と同じくペットとして興味があるだけで……」


 少し離れた所に立っていたさとりさんが、顔を逸らしながらぼそぼそと呟いている。そして、その後ろにはお燐をはじめとした地底組が揃っていた。


「ひゅー、お兄さんは隅におけないねぇ」

「ゆで卵! ゆで卵ある?」

「人前でイチャイチャと妬ましいわ……ぱるぱる」


 魔理沙のやつ地底まで呼んで行ったのか……これ、知り合い全員来てもおかしくなさそうだ。とりあえず、早苗とこいしの口論の板挟みに耐えながら、俺は苦笑いを浮かべるしか出来なかった。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。


 さて、今回は短編と銘打ったのですが……




 もう一話続きます。短編とは一体……


 クリスマスが終わるまでに上げられるように努力しますので、もう少しお待ちください。

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