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妖刀

「先日起きた事件の犯人はお前か?」


 沖田の問いの後、少しの間が流れ、笑みを浮べた。


「それに答える義理は無いが、名前を明かせない代わりに答えるとしようか。確かに俺だ。が、逆に問おう。だとするならば、俺を斬るか? 何故なにゆえに? 『理想無き剣』のお前がなぜ再び刀をとった? まあ、どのような返答をしたところで斬り捨てるがな」


「そうか。なら返答する必要はないな!」


 すると沖田は猪のように上段の構えで突っ込んできた。久しぶりに手に持った刀に高揚感がコントロール出来なかった。あとで思い返すと「無策だった」と沖田自身、我ながら思うことであろう。


 しかし、男はまるで見切ったかのように直前でかわし抜刀、向けられた刃を沖田は刀の軌道を逸らすように刀の刃を合わせ弾いたが、その際僅かに刃が顔をかすめ、沖田の頬から血が滴った。


(速い......。これほどまでに速い相手は今までに合いまみえたことは無いはずだ......)


 斉藤が言ったように沖田の速さが尋常ではないということを考慮したとしても、その男の速度は尋常ではないものであった。


「刀で防いだということは、妖刀か? お前はあまり使っていた記憶は無いが、妖刀を用いた戦術の心得はあるみたいだな。とりあえずその妖刀が一体なんのかを明らかにしないとなあ?」


 そういい、今度は男のほうが突っ込んできた。そして沖田は剣を構えたまま、大きく息を吸い、目を閉じた。手前まで来たところで男が斬りかかるが、刀を弾き、腹部への一撃が決まったかと思われたが、感触が軽かった。直前のところで避けられてしまったようである。


(まだ、それほど遠くまでは見えないか......)


 沖田が永倉から渡された妖刀の名は『清野きよの千里せんり』。名の通り、使用者に千里眼を与えるものだが、使用するたびに精神・体力が削られていくため、まだ使い慣れていない沖田はそう遠い未来・場所を見ることが出来ないのである。


「さすがに今のは驚いたな。致命傷ではないにしろ、今の永倉や沖田の刀に当たらない自信はあったが...。もしや永倉の『清野・千里』か?」


 沖田は僅かについた血を払い、息を整え、中段の構えをとる。


「貴様に答える義理は無い。だが、俺の名、永倉の名、そして永倉が所有していたこの刀の名を何故知っている?貴様、まさか日本国の出身か?」


「さっきも言ったろう?情報は明かせない、知りたいなら力尽くでもやれと。だが、面白くなってきた。この高揚は久しぶりだ。さあ、剣戟を続けようぜ?」


 男がそういうと、二人とも構えを上段に移した。そして、沖田が一歩踏み出そうとした瞬間、おおよそ四時の方向から飛来したものが右の腕を切りつけた。構わず踏み込みを入れた途端、足元のぐらつきを覚えた。力が入らない。意識が朦朧としていく中、刀を杖代わりにし腕の傷口を押さえた。


「くっ、刃に毒でも塗られていたか......? だがこれしきー」


「ちっ! おっさん余計なことしあがって......。だが、沖田にこれ以上暴れまわれると困るからな。惜しいが、トドメをさそう......」


 男が意識を失った沖田に対し、トドメの刃を降ろした。が、それは沖田の身体へ届く前に『清野・千里』ではない別の刀が男の刀の軌道を逸らした。


「ごきげんよう。月が綺麗だと思って散歩していたら、物騒な現場に出くわしちゃってね? さすがにこちらとて、みすみす交渉材料を失うわけにはいかないんだ。ここは一つ、僕の顔に免じて引いてくれないかな?」


 突如として現れた刀の主は義経であった。顔こそ笑みを浮べているものの、彼の存在感は威圧そのものだった。


 男は舌打ちしつつも、相手が悪いと悟ったのか、速やかに撤退していった。


「さて、本題はこれからだ。恐らくは最近報告にあったチャクラム状の魔剣だろうが、果たしてどこまでうまく行くものか......」


 そういうと義経の手にある刀の剣先は沖田に向けられた。

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