異国の地
暗雲はすぐそこに
「ここが倫敦か......。ありがとうな、色々お前の話は面白かった。また呑む機会があるば、また話してくれ」
沖田は下船し、荷物の受け取りをしている途中、龍馬が別れの言葉を言いに寄ってきた。しかし、昨日呑んだ酒がまだ抜けていないのか、少し顔が赤い。
「ああ、今度があればな。俺はこのあと他の場所へ行かないといけないからな」
そして沖田の胸に酒瓶をあててきた。その酒瓶に入っている色がチラッと見えた。朱色である。
「ん? ああ、これは『わいん』という酒らしい。これが結構うまいんだ。これは俺からの餞別だ。気に入ったのなら、ここではまあわりと手に入りやすいだろうから、買うといいさ。さて、そろそろ船が出る。また会おうぜ。もちろん、敵同士ではないことを祈る」
「ああ、またお前とはまた剣や銃弾を交えないことを祈る」
「さてと......、伯爵はどこだ」
てっきり伯爵が出迎えに来るものだとばかり思っていたが、それらしき人物はいない。さらに沖田は袴を着ているためか、物珍しいものを見ようと群衆が集まってきた。
(さすがに人が多く集まりすぎて探せない...。どうにかしてここから逃げないと)
「君が沖田総司くんだね?」
突如、異国の言葉が飛び交う街に日本語で自分の名を呼ばれた沖田は刀に手をかけた。
「おっと、待ってくれ。こちらに交戦の意思はない。僕は源義経、君の出迎え役だ。宿を案内するよう頼まれている。慣れない地で心細いだろうが、同じ日本人としてよろしく頼むよ」
沖田はその言葉にどう返したらよいか分からず、そのまま義経についていった。