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さらなる被害

「つ、疲れた......」


「疲れたのはこっちだ......。全く休憩も入れずに......」


 二人とも呼吸がだいぶ乱れた状態で帰還してきた。テーブルの上に水の入ったコップとタオル、置手紙が置いてあった。


「なになに? なるほど。では私は自室に戻る」


 メモを机に戻し、長い白髪をなびかせるように後ろを向いて自室に戻った。沖田もメモをのぞいて見ると



『ちょっと買い物に行ってきます。夕方までには帰りますので』



 とあった。恐らくまだ午後二時頃だろうが、彼は夕方まで寝ようかと思ったそのとき、新聞の文字が目に飛び込んできた。



『女性の水死体発見 連日の変死体と関連か?』



 沖田は新聞を手に取り、自室に戻ってベットに横になった。そして記事を読んでみるとテムズ川を航行していた船に衝突し、何かの漂流物かと思って引き上げたところ、死体を発見したという。


(あの辻斬りの仕業か?)


 以前刀を交えた男のことを思い出した。沖田の、妖刀の、そしてかつての持ち主である永倉の名を知っていた。刀を持っていた、日本語を話していたことを考えると、ほぼ日本人であるだろう。もし次対峙したときに勝てる確証などない。あの素早さは今の沖田にはどうすることも出来ない。そう思うと左手にした鞘に力が入った。


(近藤さん......、土方さん......、俺はどうすればいいのか?)



一方、自室に戻ったリズは本を片手にベットで読み進めていた。ただ、窓の外から視線と静かな殺気のようなものを感じていた。が、それを気にせず読み進めていた。


(そろそろ犯人が出てくるころか...)


 そう思った途端、視線の先から一発の銃弾が撃ち込まれた。窓に触れたそのとき、ガラスは割れずにすり抜けていった。リズは体をわずかに逸らし、その銃弾をかわした。


「いきなり物騒でしょ、銃弾撃つって」


 リズは振り向き窓の奥のほうを睨み付けた。すると窓の上から青年と思わしき人物が顔を出した。


「ありゃ? ばれてました?」


 そう言うなり、窓を開け、リズの部屋に入ってきた。


「前に頼まれたやつが出来たからそれを届けに来たついでに、新しい術式組み込んだ銃弾の試し撃ちをね」


「あんたねぇ......、人に銃弾、しかもこっちはなんの術式がかかっているか分からないのにそれを撃ち込む、それも試し撃ち?これで何度厳重注意を受けているのよ?」


「えっ?言うほど厳重注意受けてないぞ?あ、それと頼まれていた例のやつ」


「全く、自分の後継者が銃、それも無礼極まりない使い方しているって知ったら、先代は悲しむんじゃないか?ん?」


 リズは青年から渡された札状の紙を受け取るなり、疑問を呈した顔になった。


「"あの名前"は別にそんなもの、ましてや伝説の通りの意味じゃないよ。『錬金術師』の流派みたいなもんだよ。それを襲名してるだけだよ」


「はいはい、それはそれは。で? これはどういうつもり?頼んだのは10枚のはずだけど?」


 リズは受け取った札状のものをを扇状に広げた。その枚数は明らかに10枚を超えていた。


「オーダー以上、調子に乗って作った挙句、それを押し付けて売るつもり?生憎、私には10枚分の料金しか用意してないから、それくらいしか払えないけど?」


 青年はリズと向かい合うように壁にもたれかかり、問いへの返答を返した。


「目が怖いからやめて! まず話聞いて! 今、このロンドンで『組織』の諜報員を殺害している日本人については知っている?」


「話だけはな?それがどうかしたの?」


「そいつが持っている妖刀に興味があるんだ。だからね、その妖刀を奪取して欲しい。で、その余剰分はその前報酬」


 リズは思わず鼻で笑ってしまった。彼女がこの依頼を受ける道理は無い。それを前報酬として説明の前に渡すなど、ふざけているのか疑いたくなるくらいだ。だが、彼女の口元にはそれとは違うものもあった。


「あんたの交渉は笑いが出るほど下手だが、ちょうどいい。ストレスは溜まりまくっているからな。鬱憤晴らしの相手になってもらおうか?一応生死は問わないんだろう?」


「『可能な限り生け捕り』って上からは命令は来てるけど、義経さんの話だと、かなり厳しいところがあるかも知れないから、まあそこは『加減の出きる相手じゃなかった』って言い訳すればなんとかなるだろうし、僕個人としては本当に騙まし討ちで妖刀だけとってきても構わないし。生け捕りなら『組織』からの報奨もでるってだけの話しだし。あと協力者がいることも確認されているから気をつけて」


「なら今夜にでも探してみる。生け捕りする気はもとよりないけどね」


 ベット横においていた彼女の愛剣を強く握り、殺意をあらわにした。


「ところで、あの銃弾はガラスをすり抜けたのに、なぜこの剣にあたった? しかも音も出さずに。音ならあらかじめ銃弾に消音の術式をかけているのだろうが、あれはたしかほかの術式との併用は不可ではないのか?」


「あ、そこんとこは内緒ね」


 そういい、その青年は窓から出て行き、姿を消した。

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