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第三十九話:一人の我侭

 お昼休みを告げるチャイムと同時に、校庭の隅っこには七人の男女が集まっていた。学園の生徒達は意外と大人数で行動しており、芝生辺りで昼食を食べていたりする。

 交換生制度も終わりが近いためか、女子のグループの中には男子生徒が混ざっていたりする。中睦まじい二人組もいたりして、中には男一人、女二人で取り合いも行われていた。

 まぁ、中には男同士のほうがやっぱり気が合うよねとまとまっている男子も存在しており、一部の女子がその光景をじっくり観察してきゃーきゃー言っていたりもする。

 そんな感じの大体和気藹々とした雰囲気が漂っていた。

 冬治も、女子六名と一緒に行動している。ただ、他の学園生と違うのは横に一列になっていることだろう。並んでいる人たちの表情は揃ってうんざりしている。

 六名を並ばせ、唯一うんざりしていない羽津鳴子は後ろ手に全員の顔を見た。

「番号っ」

「いち」

「にい」

「さん」

「よん」

「ごう」

「ろく」

 七人いることを確認し、鳴子は中央に立つ。生徒会長でよく皆の前に立っていたからか、その姿は堂々としている。鳴子の頭の中は元の世界に戻ることしか考えておらず、その他はこの状況で隆康という奴が襲ってきたら対応できるかどうかだったりする。足並みがそろっているのかいないのか、微妙なところであった。

「皆さん、午前中の授業はどうでしたか」

 つまらないと言おうとした美穂を冬治が手で制した。

「異世界での、いい思い出になりましたぁ。ね、皆」

 どこで受けようが、授業は授業である。繰り返される四月一日から脱却して数日経つものの、今度は世界が崩壊する瀬戸際だ。悠長に授業なんて受けている場合じゃないよ、会長っと大抵が思っている。

 他人の機微を察するであろう鳴子も本日ばかりはテンションが高い。冬治の日本人が良くする迎合的な意見に満足していた。

「それは、よかったです。そして、実にいい決戦日和ですね。今日は冬治さん主導の下、隆康さんとの決戦です」

 決戦なんてしたこと無いよと先生が呟き、ほとんどが同意した。耳に入っているのかいないのか、鳴子は構わず先を続ける。

「もしかしたら、怪我をするかもしれません。でも、多少の痛みは我慢してくださいっ。これも、元の世界に戻るためなんです」

 あんたのカードは司祭だろ。どう考えても前に出ないタイプじゃないかと美穂が言おうとしていたりする。これもまた、冬治に制された。ただでさえ怪しい足並みなのに、これ以上乱したら何らかの支障が出るだろう。

「はしゃいじゃって。昨日、何かいいことでもあったのかね。ねぇ、冬治君」

 早苗が冬治のほうを見る。冬治は言っている意味が分かりませんよと首をすくめて見せた。

「晒し者はあまり好きじゃないんだけど」

 木葉の言葉が今の状況を端的に説明していたりする。

「では、救世主の夢川冬治君、皆に作戦を告げてください」

 救世主だなんてかなり持ち上げられている。冬治は苦笑しながら前に出た。

「神のお告げにより……まぁ、恐らく世界のカードを所持しているからでしょう。隆康が俺のところにやってくる時間がわかりました」

 私はベテランのペテン師ですという表情を皆に見せた。

「いつ?」

「放課後、恐らく五分以内です。後分以内に窓から飛び出して、襲ってくるかと思われますっ」

 早苗の言葉に冬治はよどみなく答える。言葉に詰まらなければ、基本的に疑問を抱くものはいない。

「その前に、うって出ます。全員でばらばらに羽津市内を探索してもらい、隆康を見つけ出し、全員で攻めるんです」

「探す範囲はどうするの?」

 美穂の問いかけに冬治は手作りの地図を取り出した。それには羽津市がまぁまぁ上手く書かれている。手書きである必要が無いことに気づいたのは出来上がって自画自賛したときだった。

「各々で自由にって言いたいところだけど、基本は羽津学園から羽津女学園の間かな。行って帰ってくるだけなら昼休み中で間に合うだろうからね」

「そんな適当で大丈夫?」

 木葉の突っ込みに冬治は頷き、笑って見せた。

「大丈夫でしょ、不安ならもっと探索の時間を延ばせばいいんだし。放課後まではまだありますよ」

「この状況を楽観し過ぎじゃないの」

「まぁ、あえて隙を見せて相手をおびき寄せた挙句にコテンパンに料理するつもりだから。というわけで、役割分担です。下駄箱付近に早苗先輩、屋上に双眼鏡を持って木葉さんが待機ね」

 早苗先輩は相手がやってきたら縛って時間を稼ぎ、その間に木葉さんが戦車のカードで移動をして、皆を回収して倒しますと続ける。

「冬治君はどうするの?」

 全員が首をかしげ、冬治を見た。

「俺がやられるとまずいんで、学園内の女子トイレにいます……あ、大丈夫ですよ? 旧校舎の女子トイレは男子トイレとして使用していいことになっていますからね。そこに、潜伏しておきます」

 そういって冬治は右手を挙げた。

「じゃあ、皆さんで頑張りましょう。エイエイ?」

「……おー」

 先行き不安な感じで作戦は始まったのであった。

 作戦開始五分後、冬治は女子トイレから地下書庫へとやってきた。世界のカードを変化させた戦車のカードでの快適な移動だ。

「んで、次は力に変化させて……そういえば、力のカードの持ち主の菖蒲先輩とはあまり接触しなかったなぁ」

 床に散らばっていた本棚を担ぎ上げ、入り口へと隙間無くつめていく。本は端っこへとまとめて積んでおいた。どれもこれも、価値のある蔵書たちなのだろう。読まれなければ本は無価値のような気がしてならないが。

「清掃のボランティアかい? 精が出るね」

「隆康……」

 一番奥に腰掛けて、隆康は冬治のことを見ていた。隆康がやってきても尚、冬治は入り口付近に本を置くのをやめなかった。

「もう、無駄だよ。僕を中に入れさせないためなんだろう?」

 中に入ってしまっているからね。どこか余裕のある態度に冬治はいらつくこともなく、返答する。

「いいや、違うさ。これは皆を入れないようにするために必要なことさ」

 もっとも、すぐさま戦車のカードを使用されたら危ないだろう。

「なんだい、サシでやろうってのか」

 舐められたものだな、そういって隆康は立ち上がった。

「そういうつもりでもない。ほかはともかく、俺はもうどうしようもないって思ってるよ」

「おいおい、下手な嘘はよしてくれ。さっきまで校庭の隅っこで最後の話し合いをしていたじゃないか」

 隆康の言葉に冬治は苦笑して見せた。まさかここまで思い通りに事が運ぶとは思わなかった。そう言いたげである。

「ああ、あれか。あれは騙すためだよ。あんたじゃなくて、皆をね。あんたの居場所なんか分かるはずないし、襲ってくる時間も分かるわけない。口から出鱈目ってやつさ」

 そこで隆康は眉根を寄せた。

「何だと?」

「これが、世界のカードだ。隆康、このカードあんたに渡すよ」

「……どういうつもりだ?」

「おそらく、カードを全部所持した人間に勝てる奴はいない。二組カードは存在していて、あんたは全部持っている。対して、俺はカードを全て持っていない。皆に持たせた状態だからね」

 そもそも、今のこっちには七枚しかないみたいだし……冬治はそういって見せる。

「隆康が持っているのは世界の存在しない、タロットカード。対して、俺が持っているのは世界のカードだけだ」

「何が言いたい?」

 ゆがんだ隆康の顔に冬治はどこ吹く風で答える。

「何も。早く俺からカードを受け取って、一つに重ねるといいさ。それで、あんたのやりたかったことは終わりを迎える。俺が怖いのなら、下がっておくから」

 世界のカードを乱雑に床へおいて、冬治は部屋の端で座った。

「どうぞ、お好きに」

 いぶかしげな表情で世界のカードをつまみ挙げる。

「偽者かどうかは触れば分かるぞ」

「俺が偽者をつかませて、不意打ちをするとでも? それ、本物さ。そうだろう?」

「……ああ、本物のようだ」

 摘み上げた世界のカードを確認してすぐに結論を出した。実はこっちが本物で……冗談で準備したカラーコピーを冬治は出すのをやめるのだった。さすがに、出せるような雰囲気ではない。

「こほん、この変なイベントを終わらせるのは簡単さ。さっさと世界の欠けたタロットカードを纏め上げればいいんだよ」

「……ふん、そうかい」

 隆康が近づこうとしたそのとき、地下書庫入り口付近が騒がしくなった。

「こっちから物音がしたって本当? それに、声もしたんでしょ」

「間違いない。女子トイレの中に冬治君はいなかった」

 聞き覚えは当然ある。校舎に残った木葉と早苗が異変を察してやってきたのだ。戦車のカードだけは取り上げたかったが、怪しまれると思って放置していたのが裏目に出たようである。

「馬鹿、さっさとカードを拾って纏めろよ」

 冬治が叫ぶとドアが叩かれた。開けるような気配があったものの、本棚に阻まれてびくともしていない。

「今、冬治君の声がしたよっ」

「戦車で中に入る」

 それはまずい。冬治は慌てて声を出した。

「う、うわぁ、隆康が二十二人もいるぅ」

 ものすごく棒読みであった。ただ、焦っている二人にはしっかりと通じたようだ。

「木葉は皆を連れてきて。それ、何人乗れるか知らないけど」

「わかった」

 一台の自転車に五人で乗り込むと……おそらく、雑技団みたいなスキルが必要のはずだ。想像してみると面白かったが、今はそんなことで笑っている場合ではない。

「ほら、今のうちに拾って纏めるんだよ」

 隆康は訝しげに冬治を見たものの、二十三枚のカードを纏めた。それと同時に、カードが消える。あれだけ騒がしかった地下書庫の踊り場は静まり返った。隆康は目をむいて冬治を見ていた。

「お、おい、これはどういうことだ」

 ここでポケットからカラーコピーを出すべきだっ。ベストタイミングだっ。脳内のお笑い担当が大騒ぎし始める。

 しかし、シリアス派に鈍器のようなもので殴られて静かになった。

「どういうことも何も、纏めちゃったら消えるんだよ。これは、そういう道具なんだ」

 色々と終わった。それは間違いない。

「そういう道具だって? 聞いてないぞ」

「元の世界から隔離した世界を作り上げる。全てのカードを集め終えると、世界のカードを所持していた人物と、その他のカード二十一枚を所持している二人を残して消えるんだよ。ちなみに、一枚のカードから作り出されたカード所持者は元の世界に戻される。この冊子に載っていたから間違いないだろうね、多分」

 冬治は地下書庫で拾った冊子を隆康のほうへと投げた。残された二人が元の世界に戻る方法は残念ながら、冊子には書かれていない。あくまで、タロットカードを使用して世界を作り出す方法だ。出来上がった料理をどうやってもとの材料に戻すか。そんなことが書かれた料理本は存在しない。それと一緒で、世界を作り上げた二人を元の世界に戻すことなんて書いてはいなかった。

「お前、それが分かっていながら……こんなところにいたのか。元の世界に戻りたいとは……」

「さぁね、これからどうなるか分からないし、ほかに影響を生み出すかもしれない。だから、カード所持者じゃないと認識しない地下書庫を選んであんたと二人きりになったんだ」

 まさか男と二人きりになるとは思いもしなかった。冬治はため息をついたりする。

「ま、これであっちの世界に御柱先輩は存在しているってことだろうね。世界のカードはほかと違って一度権利を手放すと権利を失うらしい。あんたの目論見は一応、果たされたんじゃないのかい?」

「ふん、その年で元の世界に戻るのを拒むなんてな。あちらの世界に未練が無いのか」

 あるよ、ありまくるよといおうとして首を振った。

「俺はただ、あんたと刺し違えること前提だったからほかの事を考えてないようにしたよ。皆は元の世界に戻れているだろうし。後悔したって、もう遅い。ふはは、泣いてわめいて命乞いしろ」

 少しかすれた声で冬治はそういった。

「それは僕が言う台詞だ」

 不機嫌そうな隆康は冬治の隣に座るとため息をついた。

「どうして、この世界には二人必要なんだ? お前、それが分かるのか」

「この冊子に書いてあったことは……ああ、もう無くなっているな。どちらかが、この世界を構築するもの。まぁ、材料ってとこだろ。もう一人が世界を見続ける役目を負うことだってさ」

 一人は世界に吸収され、もう一人は異常が出ないかチェックをする。そのために二人必要だったと書かれていた。

「どっちもどっちだな。世界に残るほうはずっと見続けないといけないのか。まるで、神様だ」

「世界を作ったんだから本当の神様だろうね。何かしらの変化が起きて、その後にどちらがどうなるか、決まるらしい」

 しばらくすると、揺れが始まった。いくつかの本を床に落としたが、元から散らばっていたために被害は少ない。

 揺れが収まると、隆康の足が透け始めた。

「僕が世界の素になるのか。それは嫌な事だなぁ」

 どこか燃え尽きた感じの声を響かせ、隆康は一息ついた。

「これまでしてきたことの罰か。ま、少しぐらいは、悪かったと思っているよ」

 冬治に自分達のほかはどうなっても構わないなどといったことを覚えていたようだ。

「今更言っても遅いから」

「お前はずっと監視か」

「それに、仕方が無い……というよりも、俺のほうは諦めたよ」

「無気力な奴だ。現代の若者がそんなんでどうする」

「自分も若者の癖に」

「僕はこう見えて肉食系だから」

 透明化は止まらず、腰辺りまでやってきた。

「最後に、夢川冬治。君にいくつか質問したい」

 どこか悟ったような声音だった。泣き喚くほど、へたれではないらしい。

「なんでしょう、隆康先輩」

「何故、ほかの奴に世界のカードを使わせなかったんだ? 君だけが知っていたのであれば、適当に騙して世界の所有権を渡せていただろう。あのメンバーの中に好きな奴の独りでもいれば、一緒に居たかっただろうに」

 冬治は間をおくことなく、回答する。

「それもいいとは思いましたがね。ただ、元の世界に戻っても、犠牲にした一人のことを思うと、嫌な気持ちを一生引きずりそうだったので。俺って、意外とナイーブなんですよ」

 残念なことに冬治にとってそんな女の子は独りもいなかった。いれば、昨晩色々と話し合っていたはずだ。

「それに、こっちのメンバーの中には進んで犠牲になろうとする子がいるんですよ。人柱精神あふれる人は扱いに困りますからねぇ。そういう人にはもっと世界を知ってもらいたいと思いませんか」

「偽善者みたいな面、してるぞ」

「大きくなったら偽善者志望です。スローガンはしくじる善より成す偽善っ」

「君の考えは理解出来るが、納得できないな」

「俺も、家族のために他人を犠牲にして……それも、大人数を犠牲にしたあんたの考えはちょっと理解できませんね」

「君にだって家族はいるだろう」

「両親がいますよ。世界のどこかで鬼ごっこしています。だから、今一つぴんと来ませんね」

「家族思いの無いやつだ。質問の二つ目にいこう。どうしてお前はカードを引いた」

「いつの話を?」

「四月一日の話だ」

 思い出すように冬治は天井を見上げた。近いようで遠い話だ。暦上で見るのならまだ一週間も経っていない。

「ああ、あれは……隆康先輩がカードを引かせたと思いますがね。ま、いいや。なんとなく、自分で引いただけですよ。多分、理由なんてそこには存在しません」

「たったそれだけの理由で引いたのか」

「誰もこんなことになるとは思っていなかったはずです。誰もが皆、もっと面白い結末を期待していたでしょう」

「そうか、僕もだ。今頃元の世界で天羽の帰還を喜んでいたはずだ」

「まぁ、俺は冊子を手に入れる以前から、あなたと刺し違えるつもりだったのである意味望んだ結果です」

「強がりを……」

 実質強がりかもしれない。ただ、目標自体は達成できた。面子的に考えて、こっちの世界に残るべき人物は自身と隆康に決まっている。

「大方想像通りになりましたかね。隆康ざまぁみそって言いたいところですけど俺も結果的に同じなんですよねぇ」

 首だけになった隆康はその場にごろりと転がった。首だけでも自分の意思で動けるのか、晒し首状態になって部屋の角を見据えている。

「俺からも質問、いいですか」

「何でも答えてやる」

「力強いですね」

 今の状態ならもう何も怖くないぞと隆康は笑った。

「隆康先輩は、俺達と協力しようとは考えなかったんですね。一緒になって、天羽先輩を助け出そうって」

 二人の間に静かな時間が流れる。

「全く、考えていなかった。天羽さえ戻れば僕にとってほかはいなくても良かった」

「じゃあ、もし、協力し合ったほうが助けられる確率が高かった場合は……」

 隆康は黙り込んだ。どうやら、そこまで考えていなかったらしい。

「……なるほど、もしそうなら考えていた」

「次があるなら、考えておいてくださいよ」

「ふん、二度とこんな目には遭いたくない」

 確かに。そのときばかりは冬治も隆康に同意する。

「夢川冬治」

「何でしょう?」

「そろそろ、時間のようだ。君はこれから、僕成分百パーセントの世界を堪能するのだろう。存分に苦しんでくれ」

 隆康の首は薄くなっていた。向こう側が透けて見え、この状態で投げれば投げられた相手は腰を抜かしてちびること請け合いである。惜しむらくはこの書庫から脱出できそうに無いことだ。

「嫌な言い方はやめてください」

「くくく、存分に楽しんでくれるといいさ……ただ、僕からも君にいいたい事が出来た」

「何です?」

「君は最後、僕より情報を持っていて、優越感に浸っていたよな。だが、今は違う。世界と同化しつつある僕のほうが物知りになったようだ」

「何のことですか?」

「いいか、ありがたく良く聞くんだぞ。僕が消えた部屋に、伏せられたカードが現れる。その部屋にあったカードを引いて……もし、世界の正位置だったなら、君はそれを破り捨てることで別の世界に行ける」

「本当、ですか?」

 冬治の言葉に隆康は返答しなかった。

 隆康の消えた場所には一枚のカードが伏せられている。

「今より悪い状況ってないはずだ。これ以上、下が無いのであれば、引かない手、無いよな」

 静かにカードへと手を伸ばす。カードに触れた瞬間、強烈なイメージが冬治の脳内に焼きついた。

「これ、絶対死神だってばよ」

 くそ、隆康の野郎、趣味の悪いいたずらをしやがって……冬治はひざを抱え込んで塞ぎこむ。

 人間、希望をちらつかされた挙句に落とされるとより絶望を覚える。少なくとも、冬治はそうだった。河川敷で肌色が絡みあっているアレな本を見つけ、近寄ってみてみるとオスとオスだったという絶望的な落ちが付いたようなものだ。まぁ、これに関しては別のオチ……も付いているだろうが。人によっては当たりだったぜと言う御仁もいるかもしれない。

「なにがありがたく良く聞けだ。僕が消えた部屋にカードがあって、それをめくって世界の正位置……部屋?」

 なぜか、この時、冬治の頭には慌てる乞食は藁をも縋るという変な言葉が思い浮かぶのであった。

「部屋、ね。なるほど。場所じゃないのか」

 一冊の本を手に取ると、冬治は死神のカードの上に置いた。もちろん、間違えて引かない為だ。

「探すのは苦手なほうだが……ま、気長にやるか」

 夢川冬治の前には大量の本と、本棚が静かに身を連ねている。

 彼がどうなったのか、その世界で知っているものは誰一人としていなかった。


 何で三十九の前に四十があるのとか、こっちが四十話じゃないのと思うかもしれません。投稿する際はとても忙しくて(忙しいという人に限って忙しくは無い気がしますが)、しょうがなかったのです(しょうがない、仕方が無いは基本的にいいわけか諦め)。思えばアルケミストをやるよと言いつつ勢いだけで始めた今作。上手く着地できたと思っています。本来、地下書庫でBADENDを迎えるはずの冬治君も脱出の匂いを残してくれていますからね、うんうん。妙な化け物になって化け物を召喚する本につかまらなくてよかったよかった。リスタートに組み込めるかどうかは疑問です。組み込む際は冬治君に良い結末を迎えてもらいたいものですね。リスタートに入るのはいつになるのやら。ともかく、これにて終了です。途中からこれまで読んでくださった方々、ありがとうございました。メッセージ等、ありましたらよろしくお願い致します。

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