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ある婦人の悲嘆


息子が付き人の娘に思いを寄せていたのは知っていたわ。その分、その娘に辛く当たっていたわ。



私自身、恋愛結婚ではなかったから。

出来るうちに恋愛しておけば、と思っていたのよ。でも私の旦那似の粘着質な愛情を向けている息子を見てこれは問題だとおもったの。



私の初恋の相手の母親が近くに住んでいたこともあって相談をしたのよ。

どうすればいいのかって。

どうにかしたい気持ちと、息子に対する愛情と。混ざって。私はおかしくなりそうだったわ。




あの娘がいじめられていることも、その相手が息子の婚約者なのも、その原因が婚約者に少しも興味を示さない息子なのも。わかっていたのよ。


わかっていて手を出さないなんて、ずるいわよね。でも、私はずるい方法しかとれなかったの。


高校にはいって、あの娘に夜の相手を命じたのは私。

そうでもしないと息子が、あの娘になにをするかわからなかったからよ。



高校を卒業したらあの娘を解雇しようとしていたわ。

息子も結婚するし、もう解放するつもりだったの。

っていうのは言い訳ね。息子と引き離したかったのよ、私が。



息子にそれがばれてね。

結果として怒り狂ってあの娘を監禁でもしそうな息子に対する言い訳として愛人、と言い出したらそれが本当になったわ。

夫も、そうすべきだろうって。だって夫もそうしてるものね。



私が息子を産んでから触れもしない。

夫の愛人はもう何人も子供を産んでいるわ。

居場所?知らないわ、そんなの。夫が買い与えたマンションにでもいるんじゃないかしら。考えたら虚しくなるから考えたくないの。

夫に愛は覚えなかった私が言えた義理じゃないけどね。それでも情はあったのよ。息子も産んでるわけで。すべての愛を私にくれとはいわない。でもせめて家族愛は欲しかったわ。



息子の婚約者に、同じ思いを、いいえ。違うわね。あの子は息子を思っているから、もっと辛い思いをさせたくなかったのよ。


結婚ってね。幸せになるイメージじゃない?


でも財閥だったものだからなのかわからないけど。私は幸せじゃなかったわ。


何もさせてもらえないの。どこにも行けないの。働きたかったし、家事もしたかったわ。子どもも数人ほしかった。子供同士がきょうだい喧嘩をして、それを困ったように笑ってたしなめたり。思い切りかわいがったり、叱ったり。ただ、普通の家族に憧れてたの。



全部させてもらえない。

奥様がそんなこと、ってとめられるのね。唯一、家族だけでも、と願ったけれど。一緒にいるはずの家族仲はお世辞にもいいと言えなかったわ。


誰がわるいわけでもないのよ。

みんながそれぞれのしたいようにしたら、それがすれ違っちゃっただけよ。



あら?こういう話が聞きたかったんじゃなくて?



あぁ、そうそう。そちらにいるあなたのお連れ様ってもしかして彼女のお孫さんかしら?

なんでわかったのって。私の初恋の人の若い頃にそっくりだもの。そんなことはどうでもいいのだけども。お願いがあるのよ。



彼女に会いに行ってあげて欲しいわ。


ねぇ、あなたは警察関係者でしょう?遺体や凶器は見つかったの?

あと1話で終わる予定だったのに。

旦那と愛人視点もかきたいよーな気分になりました。でもここで書いてしまうとテーマの真相から離れてしまうので諦め、です。

次話で完結です。もともとラストはこうしよう、と決めていたので。

最後まで楽しんでくれたら幸いです。

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