ある息子の哀憐
え?母の話ですか?
母といってもここ十数年会ってませんでしたね。
もともと兄貴が見るといっていた母を面倒みることができなかったんです。
え?違いますよ。嫌いとか、めんどくさいとかじゃないです。
兄はちょうどそのころ海外転属が決まって。
弟はそのころ病気を患い。
妹と私は結婚相手の親の介護で疲れ切っていました。
それでも母がこちらに越してきてくれたらきっとみていたんですけど。母はあの土地をいたく気に入っていましたね。きっと父と出会ってからずっとあの土地で過ごしていたからでしょう。はやくに亡くなった父にぞっこんでしたし。
しっかりしてましたし。争っていたのもわかっていたんでしょうね。
子供の前で情けなく自分の親の押し付けあいですよ。
今は余裕が出来たのでちゃんと考えられますけどあの時はなんというか、無理でしたね。
見かねた母が絶縁したんです。
子供は平等に、と言ってみんなを。
あれから本当に連絡なんてしてないですよ。ほかの兄弟はわかりませんが。
母は愛情深い人でね。絶縁してるのに孫の誕生日には絶対プレゼントがくるんです。匿名の。
でも母からだとわかっていましたし。そのプレゼントが途切れた時は母になにかあったのだと思うことにしていました。
そういえば妹が1度母の様子を見に行ったと言っていましたね。
え?会話?知らないですよ。そんなの。
妹は母にかわいらしい友人が出来たらしくいきいきしていた、と言っていました。その時はペットでも買ったのかと思いましたね。
母はあれで動物とか子供とかかわいらしいものが大好きでしたから。
母のことで思い返せること、ですか。煮物ですね。
なんですか。その顔は。食べ物は大事なポイントですよ。
うちはわりかし、というより、だいぶ裕福でね。でも母はしっかり愛してくれましたよ。
だからね。
母があんなことをしたとは信じられないんですよ。
何かを守ったのか。誰かをかばっているのか。
そう考えてしまうのです。
おかしいですかね?
え?ほかの兄弟に話をききたい?
やめた方がいいですね。
みんな私と同じ気持ちですよ。えぇ、母を信じています。
私だって周囲をうろうろされるのが嫌だったので話しただけですよ。これ以上、私の家族をたしなめたり、迷惑をかけたりはしないでください。
何が真実か?
そんなの自分で確かめればいいでしょう。そのために来たんでしょう?
次は婚約者のお話!
そういえば、本日は七夕ですね。
天気は悪いのですが。
願い事はしておきます(笑)