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戦國鬼神伝  作者: 淡路
壱ノ巻
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刺客《前編》

あの壮絶過ぎる1日から一週間が過ぎた頃。


ある日、俺は信長に呼び出された。


「失礼します……」


信長のいる客間に行くと、上座に信長と、一段下の畳の上に家康さんも座っていた。


「おはようございます、樹殿」


「お、おはようございます……」


なんでこのメンツ?


「時間が余り無いので単刀直入に言う。貴様には今から家康と共に城下に行ってもらう」


「な、なんで?」


俺が言うと信長の代わりに家康さんが説明してくれた。


「樹殿が持っている金棒の他に、何か護身用の武器を持たせた方が良いと私が提案したんです」


金棒ってバットのことか?

まあ一週間前はいろいろあったけどここのところは何も無かったし別に使う機会なんて、現代にいた頃から習慣になってた素振りぐらいだったけど……


「って、俺も刀とか持つのか⁉︎」


刀って刃物だし、俺剣道とか武道とか全くやったことねぇから使い方も分からねぇけど⁉︎


「そう言うと思って、今回は竹光を買う事にしたんですよ」


「たけみつ?」


「はい。竹光は刀身が真剣ではなく、竹を削った物に銀箔を付けた偽物の刀の事です」


「へー」


「金はやるからさっさと行ってこい。こっちは人手不足のせいで他の食客共も働いておる。貴様も帰ったらお蘭の手伝いでもしろ」


信長はそう言ってすくりと立った。やっぱり信長も忙しいらしいが、相変わらず人使いが荒い。


「あ、でも」


「何じゃ、文句があるのか?」


すげぇ眼光で睨んでくるのやめてくれません?


「家康さんって偉い人なんだろ?」


「……まあ、一応は一国の主じゃからのう」


そんな事で時間を取らせるなと言わんばかりに信長が睨んでくる。


「だったら、もし何かあった時どうするんだ?」


「貴様が犠牲になればよい事じゃ」


いや、人手不足と言っといて何それ⁉︎


「お、俺じゃ無理だって!そんな強くねぇし」


俺が必死になって言うと信長が鼻で笑った。


「ふん。ならば彼奴でも連れて行け」



彼奴?





「……犬千代のことか……」


「あ、俺の事信用しとらんだろー‼︎」


用心棒として来たのは前田利家ーー犬千代ーーだった。


本音を言うと、こんな細い奴に用心棒なんてできるのだろうかと思う。確かに長槍は持ってるし、その腕は以前この目で確かめた。


「まあ、又左衛門殿は多くの戦で数々の武功を立てられていますし、信用しても損は無いでしょう」


「うんうん!」


家康さんが言うと犬千代も首を縦に振って同意する。


俺より強いことは確かだしな。


道中、信長の事とかこの時代の事を聞きつつ、俺達は武器屋に着いた。


武器屋に着くと店主らしき初老のオッサンが出迎えてくれた。


「織田信長公御所望の竹光を頂きに参りました」


家康さんが言うとオッサンは笑顔で答えた。


「出来上がっておりますよ。こちらですな」


刀の持つ所とか鞘とかは家康さんが今も腰に提げているものと全く同じだった。


鍔の所はやっぱり家康さんの刀の方が値段とか高そうだった。


「壊れても言ってくださればタダで直しますよ。何たってあの信長様御用達ですからな」


「ありがとな、オッサン」


礼を言って店を出て、犬千代が腹減ったって言うんで団子を土産として買って、俺達は安土山を目指した。





「何事も無かったな、意外と」


俺が呟くと家康さんが笑って説明してくれた。


「まあ、この安土山付近は信長様が造られた結界が張られていますから」


「結界が?」


初耳だ。鬼とかになると人間じゃできない事ばっかりできるようになるんだな。


「信長様はこの安土山と城下町が他の戦国大名に取られない様にしているんです」


「なんでだ?」


「信長様は既に本能寺の変で亡くなられている御方。本当ならば領地を持つ事ができないのですが、城下の人々は信長様が生前行われた政策や信長様自身の人間性に惹かれたのか、安土城下を信長様の領地と言われたのです」


そうか、城下町に住んでる人達は信長の性格に惹かれたから信長について行くって決めたんだな。

どおりで、前の祭も大盛況だったはずだ。


「そうだ。安土城下だけってことは、ここ以外は誰の領地なんだ?」


「……信長様の後継争いで勝利し、鬼術を使って全国統一を成し遂げた『人たらし』ですよ」


「……それってもしかして、猿とか言われてる奴か?三左さんが言ってた」


猿……猿……誰だったかどうしても思い出せない。戦国時代の猿って、なんか引っかかるんだよな……


「……そうですね。あの方は」


「太閤秀吉」


家康さんが言いかけた途端、上から声が聞こえた。


俺達が今ちょうど着いた安土の大門の屋根の上に男が立っていた。

頭巾を被って忍者みてぇな格好してるから顔は分からない。


「誰だ、お前!」


俺が叫んでもそいつは無言だった。


すると、犬千代が犬みたいにスンと鳴らして匂いを嗅いだ後、そいつを睨んでぐるる、とまた犬みたいに唸った。


「……これは、望まないお客様が来られたようですね」


家康さんもそいつを見て眉間にシワを寄せた。


低く唸ってた犬千代が言った。


「この匂い、猿の仲間だ!」


あいつはさっき、猿の事を太閤秀吉、豊臣秀吉と言った。

でも、信長と豊臣秀吉って仲間じゃなかったっけ?



なんで対立してるんだ?

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