友
俺は今、窮地に面している。
なんでかって?
俺の目の前に、日本史の有名人が勢揃いしてるからだよーっっっ‼︎
教科書に載ってるような武将ばっかじゃねぇか!なんで俺なんだよ!茜の方が喜ぶぞ⁉︎
「頭を抱えて悶えてるあの方はどちら様でしょうか?南蛮の方ですか?」
「知らん。お蘭が言うに未来から来たとほざいておるらしいが」
俺を兵に誘っといてその扱いはねぇぜ織田信長さんよぉ‼︎
「あの、大丈夫ですか?日本語喋れますか?」
挙げ句俺は日本人扱いされていない感じ?
「喋れます!」
振り向くと、徳川家康がいて、俺の顔を見てびっくりした。
「これは……驚きました」
「はい?」
「よく似ている……」
だ、誰に?
「信長様、連れの者もこの部屋に入れてもよろしいでしょうか?」
「構わん」
そういや、この部屋は来客を招くための部屋なのか、かなり広いな。襖とかには飾りとかはあんまり付いてないけど。
「平八郎、入りなさい」
何?また誰か来るのか?
襖を開けて入って来たのは、無造作な黒い短髪の……俺⁉︎
そいつは、俺にそっくりな奴だった。そっくりというか、瓜二つというか。
入ってきたそいつも俺の顔を見てぽかんとしている。
「くっ……お前ら、兄弟か何かか?」
笑いを堪えながら信玄が言う。
笑いごとじゃねぇって!
「せ、拙者、本多平八郎忠勝と申す」
「……俺は、七星樹……です」
すげー気まずい‼︎
「どっちがどっちか分かりませんね、本当に」
家康さんが笑顔で言う。
「いや、この2人には決定的な違いがある」
謙信が俺達2人を見比べながら言う。
「その本多とやらの左目の下に泣きぼくろがある。七星樹は髪の色素が少し薄いようだ」
あー確かに、俺は2年に進級する前に焦げ茶色に髪を染めたからな。あとは、野球やってて日に焼けたのかも。
あと、俺には泣きぼくろはない。
「よく見ればすぐに見つかる違いだな」
「並んでいるとなかなか面白いですねぇ」
なんか皆に面白がられてるじゃねぇか……
「俺達……」
「似た者同士だな」
なんか、この忠勝って奴は仲良くなれそうだ。
「俺達瓜二つだしな!」
「お互い妙な上司がいるからな!」
「そうだ……い、樹!」
しまった!まだこの部屋には……
「鬼」がいた。
恐る恐る振り向くと、なんかもう、説明できないぐらい恐怖の形相をした信長と家康さんが俺達2人の後ろに立っていた。
信長は今まで持っていた扇子を片手で折って、家康さんはなんか黒い手袋を手に付け始める。
「や、ややややばいぞ樹!家康様が本気だ!」
「え⁉︎よくわからねぇ!」
「あの手袋は家康様が作った覇術用の手袋なんだよ!家康様があれを身に付ける時は、攻撃する時しかない!」
「は⁉︎っていうか、はじゅつ?ってなーーー……」
「『瞬光』‼︎」
「失せろ!」
俺が言い終わらないうちに、信長と家康さんの雷は俺達に落ちた。
「……なあ、はじゅつって何?」
「……鬼術で備わった必殺技みたいなもんだよ」
「……なあ、忠勝」
「……なあ、樹」
「「……俺達って、本当薄幸……」」