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戦國鬼神伝  作者: 淡路
壱ノ巻
6/64

虎と龍と

「貴方達は……何者なんですか」


蘭丸が男と女を睨みつける。


「そんなに怖い顔すんなよ。おじさん泣くぞ?」


おじさんと言うような年とは思えないデカブツが言うと、露出度高い女が男の鳩尾に拳を入れる。

コントかよ。


「ふむ。私は生前、一度お前に会ったことがあるのだがな」


女が蘭丸に向かって言う。


生前?

ってことは……


「お前らも鬼ってことか?」


「ああ。この『毘』の文字。覚えておらぬか、蘭丸殿」


「ーーー……まさか、」


蘭丸は女の横腹に未だ出ていたその文字を見て思い出したらしい。



「まさか、貴方達は……上杉平三輝虎殿と、武田太郎晴信殿なのですか……⁉︎」



……誰?





俺達は、4人で安土山の安土城跡に建っている信長がいる屋敷に帰ってきた。

信長が言うには、安土城のような豪華な建築物を造るとなるとかなりの人が必要だけど、今は人数不足だし安土城程の城を造る必要はもう無いらしい。

人数不足だったのなら俺を兵に誘ったのも納得できる。



まあ、そんな感じで帰ってきて信長に報告したんだけど。


やべぇ。信長めっちゃ不機嫌丸出し。


「……どういうことだ?」


俺と蘭丸は苦笑。


すると、女の方が頭を下げて信長に挨拶をした。


「これは織田上総介信長殿、息災なようで何よりで」


「ふっ……既に死んでおるというのに息災など」


え⁉︎


「し、死んッ⁉︎」


俺はびっくりしてつい声を出した。


「何じゃ。お蘭から聞いておらぬのか」


信長に言われて俺は蘭丸の方を見たけどしらばっくれるつもりなのか、そっぽを向いてる。

お前のおかげで変な驚き方したぞ⁉︎


「……天正十年の夏の頃、儂は死んでおる」


「そ、それって……本能寺の変のことか⁉︎」


ということは、信長も既に鬼になってて普通の人間じゃねぇのか!

なら、この銀髪と赤い目も納得だ。


「そうじゃ。そして、我が側近共も全て鬼、とうに人間ではない」


ってことは……


「……蘭丸も、鬼ってことか……?」


俺は蘭丸の方をまた見た。

蘭丸は、さっき市場でしてたように俯いていた。


「……ごめん。僕が説明不足でーーー」


そう言って蘭丸は俺に右の手首を見せた。

さっき俺がちらっと見たやつだ。


「森家の家紋。鬼術を身に付けた者は必ず体のどこかに、刺青のように家紋があるんだ」


そうか。俺が市場で見たのは蘭丸が鬼になった証拠である、蘭丸の家紋だったんだな。


「お互い鬼となって再会するとは、妙な運命だな」


女がぽつりと言う。

すると信長がニヤリと笑う。


「まさか鬼となっているとは、上杉輝虎……いや、上杉謙信」


う、上杉謙信て……あの⁉︎

犬千代といい上杉謙信といい、なんで性転換してるんだよ⁉︎


「お久しゅうございますな、上総介殿」


「今更敬語など、虫唾が走る」


なんてこと言うんだ、信長‼︎


「ちなみに、謙信殿の方が年上ですから」


思ってたことが顔に出てたのか、蘭丸が俺に耳打ちする。


「で、そっちの暑苦しい風貌の奴が……」


「生前は俺の息子が世話になったなぁ、信長!察しの通り俺が武田晴信……武田信玄だ!」


信長が上座でうんざりしてる。

教科書に載ってるような戦国武将が、俺のまわりにたくさん……茜には悪いが俺は幸せ者だな!うん!


じゃねぇよ‼︎


なんで既に死んでる(らしい)奴らが今更生き返って、敵同士が再会してるんだよ!

そしてなんで俺がそこにタイムスリップしたんだよ!

まあとりあえず落ち着け俺!

今はこの時代で生き残ることが先決だ!


「ところで、生前は敵であった儂に何か」


「いやな、この安土に置いてほしいなーって思ってな、輝虎」


「だから今は謙信だと何度言わせるんだ戦馬鹿め」


なんなのこの2人。いきなりコント始め出すのやめてくれねぇかな。


あと、信長はそろそろ機嫌を直してほしい。もう殺意丸出しじゃねぇか。


「それは何故であろうか」


「まあ、風の噂でお前の側近がほとんど鬼だって聞いてなぁ。是非ともその強さを味方となって拝見したくてな」


「……他に行くところなど幾らでもあるだろうに」


「大坂まで行く体力がなかったんだよ。それに『あいつ』との接点なんてあまりねぇしな」


あいつ?武田信玄の言う大坂にいるあいつって誰だ?


「信長!人手不足ならこの2人仲間にしようぜ!」


俺がそう言った途端、信長の不機嫌丸出しの顔が一層暗くなってげんなりした表情になった。

そんなに嫌なのかよ!


「そうだ、この坊主の言う通りだぜ!」


武田信玄が俺に同意してくれたけど、坊主って呼ぶのやめていただけませんかね⁉︎


「ちっ……面倒じゃ、勝手にしろ」


今舌打ちした?


「先に言っておくが、我が側近『織田鬼臣団』の実力は舐めてかかると痛い目に遭うぞ?」


信長がまた不敵に笑ったその瞬間、俺たちがいる部屋の襖が開き、男が入ってきた。


そいつは、昨日俺に無礼だなんだと言ってきた男だった。


左が分け目の肩甲骨ぐらいの黒い髪を垂髪にしてる。切れ長の目。着てる着物は紺と袴がクリーム色?で、俺が今まで会ってきた奴らとは比較的地味だ。



「来たか、十兵衛」


「はっ。明智十兵衛光秀、只今安土に戻りましてございます」


明智ーーー光秀⁉︎


あ、明智光秀って、織田信長に謀反起こした張本人じゃねぇか‼︎


「どうじゃ、兵共の様子は」


「まだまだ鍛錬不足ではごさいますが、いつでも出陣できる準備は整っておりまする」


一通り信長に報告し終わるとやっと俺に気づいたのか、ばっちり目が合う。


「お前は、」


「あ、えっと……七星樹です」


なんか、明智光秀が興味深いものでも見てるかのように俺のことまじまじ見てるんですけど。


はっきり言って(あ、言ってねぇか)、怖ぇ‼︎


「……妙な服装をしておるな」


はい⁉︎

そんな食い入るように見ておいて、それだけですか⁉︎

信長といい、何かやらかしそうで怖いんだよ‼︎


「失礼。私の名は明智十兵衛光秀だ」


明智光秀が俺に会釈した。

なんかもう、俺やばい。

有名人に囲まれている。


「そういえば殿、先程門前に松平殿の忍が到着しておりました」


え?また誰か来るの?


「……家康か」


いいい家康て、まさか徳川家康⁉︎


「その家康ですよ、信長様」


また、いきなり襖が開いて男が入ってくる。


色素の薄い首筋ぐらいの髪の毛と、物腰柔らかそうな雰囲気を兼ね備えたこれまた地味な服装の男。


「徳川次郎三郎家康、只今大坂から戻りましてございます」


笑顔でそう言った。




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