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戦國鬼神伝  作者: 淡路
道ノ巻
54/64

大どんでん返し


「じゃあ、サクッと挙兵してサラッと天下取りに行きましょうか!」


家康さんは今までに見たことも無いほどの満面の笑みを浮かべて俺達に言った。そんな散歩行くノリで言うことか普通⁉︎


「その前にまだあのエテ公どうにかしなくちゃ駄目よ」


でもその笑顔が好き、とか頬を赤らめて瀬名姫が言う。もうやだこの夫婦。えげつねぇことサラッと言うからやだ。まだ政宗達の方が落ち着いてるぜ……半蔵もげんなりしてる。


「そこはもう任せてください。彼方から太閤殿下が病に伏せられたという書簡が送られてきたので伏見城へ向かう理由ができました。まあ病とか嘘ぶっこいて私達がのこのこ信長様の奪還に来た所を石田の馬鹿が私達の軍に突っ込んで来そうですけどそうはいきません。

お望み通りじっくり煮てやりますよ……!」


ふふふ、と恐ろしい考えをつらつらと言葉にする家康さんからとてつもなく真っ黒なオーラを感じる……今年最大楽しそうだ。

きっと自分の領地だから安心できるんだろう。そしてやる気を感じる。怒らせちゃやべぇ人だ、この人。

でも、会った時よりもずっと人間味を感じる。ここ最近一緒にいて、普通の人だなって思った。


でも、俺の前にいる人(半蔵はどうか分からねぇけど)は……皆何かしら背負って、人である事を諦めた人達なんだ。

そう思うと、胸が苦しくなった。


「この城は私に任せて行きなさい、元康……いえ、もう家康と改名したのよね。私はいつだって貴方だけの味方だから」

「ええ……行ってきます、瀬名」

「他の女に手出したら許さないから」


瀬名姫と別れの挨拶をして、岡崎城を出た。その別れ際に、瀬名姫の口からぽつりと言葉が漏れた。



「元康、お前にまだ曼珠沙華の赤は見えるのかしら」



その言葉が一体何を意味するのか俺は分からないまま、その呟きに気づいていないらしい家康さんと半蔵の後を追った。



日にちをかけて俺達はまた安土城へ帰ってきた。それまでにあった事を話して、豊臣秀吉に会うための準備を俺達は始めた。


「岐阜城には織田一族と信忠殿が、岡崎城は離れにひっそりと瀬名がいます。信忠殿は恐らく浮世と接する事を諦めてしまったし織田家自体は豊臣方へつくそうで、瀬名にはほとんど兵はいません」

「そ、そんなんで豊臣秀吉に勝てるのか?」


俺が聞くと家康さんは落ち着いて微笑んだ。


「大丈夫ですよ。駿府や浜松には私の兵もいますし……東の大名はほとんど私の味方ですから。それに信長様が残していった貴方がた鬼臣団もいますからね」


最近家康さんは本当に人の心を掴むのが上手いなって思う。やっぱり信長と一緒にいた影響ってのもあると思うし、さすが未来の将軍。


「あまり豊臣を刺激しないよう、今回は少数で行きます。先ずは本多忠勝、それと前田利家殿も大坂へ上洛して頂きますよ」

「ええ〜?俺も⁉︎」


犬千代が自分を指差して驚いた。そして面倒くさそうにブーと口を尖らせた。

驚いたのはこっちだ。犬千代は確かにめちゃくちゃ強いのは知ってるけど、偉い人だとは知らなかった。蘭丸だったか、犬千代は加賀っていう国の大名だとか。そんな偉い人がこんなとこでブラブラしてていいものか……?


「ここに私の身内から貰った丸薬があります。これを大坂に着く直前に飲んでください、一時だけ鬼術の副作用を抑えることができます」


家康さんは袖から小さい巾着を出し、黒い小さな丸薬を犬千代の手の平に二粒取り出した。


「げー……薬かよ……」

「太閤殿下の前でその女性にょしょうの姿を晒す訳にもいかぬでしょう……色々と」


良い感じに言いくるめられて、ふてくされながらも了承したようだ。


「兵は多くても五十……念の為に背後に二千控えさせましょうか。簡単に信長様を奪還できるとは思っていません。全力を尽くします」


背後に控える兵には三左さんの隊、光秀さんの隊、半蔵が率いる忍の隊とに分かれる。

そんでもってお約束、俺も家康さんに付いて行く事になった。


信長、遅くなってごめんな……今、助けに行くからな‼︎


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