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戦國鬼神伝  作者: 淡路
壱ノ巻
5/64

強者

「祭は終わったはずなのに、賑わってんな」


俺と蘭丸は昨日の市に買い出しに出た。


「安土は気候や土地にも恵まれてるし、何といっても琵琶湖があるからね。京も近いからよく人も行き交いするんだ」


「あ、あと織田信長はあれだろ?楽市……なんだっけ」


「楽市楽座のことかな?」


「そうそれ!いやー俺体育以外ほとんど2なんだよなー」


「?」


蘭丸はきょとんとしてる。

あ、そうだ。戦国時代に内申なんてものはないのか。


俺はとりあえず話を変えることにした。


「ところで何を買いに行くんだ?荷物持ちなら任せろよ!」


自信満々で蘭丸に言うと、蘭丸は可笑しそうに笑う。


「確かに僕はこの通り、並みの男とは比べて痩せぎすだけど君より力はあると思うよ」


「お、俺だって負けねーよ!」


俺はムキになって蘭丸に言う。普通の高校生みたいな話だ。

確かに俺は普通の高校生だが、ここは戦国時代だ。普通なのは蘭丸達で俺は普通じゃない。


なんか、ホームシックになりそう。


そんなこと考えていると、ふとあることを思い出す。

「そういや……お前の名字って『森』だよな?森って、三左さんも確か……兄弟とか?」


「いえ、親子です」


「……え⁉︎」


三左さん、20代ぐらいに見えるんだけど⁉︎


俺が驚くと、蘭丸は俯く。

何か言いにくいことでもあるのだろうか。


「蘭丸!その……お前が言いたくないことだったら謝るよ。でも俺達友達になったんだからさ、相談に乗るぞ?お節介かもしれねぇけど!」


俺が苦し紛れに言うと蘭丸は首を振った。

どういう意味か俺は分からなかったが、蘭丸はすぐに口を開いた。


「遅かれ早かれ、いずれは知らねばならぬ事。僕の口から全て話すよ……君はまだ朝餉がまだだろう?」


あさげ?と思ったが、俺は勘で朝飯だと思った。

それは当たったらしく、俺と蘭丸はすぐ近くにあった八百屋で人参とか大根とかを買ったあと、一軒の木造建築の平屋の店(城以外木造建築の平屋だけど)に入ることにした。


「あそこは食事処なんだ。そこで話すよ」


店に入ると、いかにも和食って感じの匂いがした。

俺が頼んだのは焼き魚とご飯と味噌汁と、漬け物の定食。

蘭丸は鰹節が乗ったお茶漬けを一杯頼んだ。


「じゃあ、まずは君から話してもらおうかな」


「え?」


俺がご飯が入った茶碗に手を出そうとした瞬間、蘭丸が言う。


「僕が思うに、君はこの時代の者とは思えないんだ。その見慣れない着物とか、履物とか、昨日もっていたあの金棒とか色々。

もしかして君は……」


さすが蘭丸、頭もいいんだな。でも俺が未来から来たなんて言ったら、こいつは信じてくれるのだろうか。

いやでも、言わなきゃもっと怪しまれるし。


ここは思い切って言うしかねぇ!


「確かに、俺はこの時代の人間じゃねぇ。俺は、えっと……もう少し先の未来の日本から来た人間なんだ‼︎」


最後の方は力が入ってしまった。

蘭丸は少し驚いたようだが、すぐに笑顔になった。


「そうですか。まあ、そのなりで言われたら信じるしかないですね」


「ほ、本当か⁉︎ありがとな!」


心底嬉しかった。この時代じゃ俺は普通じゃねぇのに、こんなあっさり信じてくれるなんて、やっぱり蘭丸はいい奴なんだな。


「そうだ。お前が話すことって……?」


タイミングが悪かったのか蘭丸はまた俯いたけど、決めかねたのかすぐに顔を上げた。


「……実は」


蘭丸が口を開いた途端、何かが壊れるような大きな音が聞こえた。

音が聞こえたのはこの店の入り口付近で、砂埃が舞ってる。


「な、なんだ⁉︎」


蘭丸の方を見ると、蘭丸の顔は青ざめていた。

なんか、予想してたことが起きてしまったとでも言うようなーーー


「樹、逃げよう!」


「え、わっ⁉︎」


蘭丸は俺の左腕を掴んでぐいと引っ張り、店を出ようとする。

蘭丸の握力はかなり強かった。腕が痛い。


ちらっとだけど、俺の腕を掴む蘭丸の右腕の手首に痣みたいな、黒い刺青みたいなのが見えた。それはあとで聞くとして、今は逃げるのが先決だ。


でも、逃げることは無理らしい。

出口は砂埃が凄かったけど、晴れてきた時、俺は驚きを隠せなかった。


そこには、たくさんの兵士がいたからだった。


「な、なんだこいつら!」


「くっ……豊臣の奴らだ!」


豊臣って、昨日の江与を追ってた奴らと同じってことか!


「昨日より数が多いぞ⁉︎」


「……それに、『普通の人間』じゃないよ」


「は?それって……」


「彼らは『鬼』。ただの人間とは違う生き物だよ」


「お、鬼?」


「そう。しかも、昔話に出てくるような鬼とは違う。『鬼術』を使い、蘇生された死者なんだ」


一度死んでる?


死者って、ゾンビってことか⁉︎

普通の人間と何ら変わらないじゃねぇか!

じゃあ、昨日の奴らもその『鬼術』とかいうのを使って生き返った奴だったってことか⁉︎


そ、それをバタバタなぎ倒してた三左さんとか犬千代って……⁉︎

頭がこんがらがって分からねぇ‼︎


俺達が立ち止まっていると、その鬼達が横から吹っ飛ばされた。

吹っ飛ばされた鬼達は叫びながら地面に転がっていき、砂となっていく。


「……あれが、2度目の死を迎えた鬼の末路なんだ」


ぼそりと蘭丸が呟く。


「鬼も人間と同じ死に方をするけど、不老である鬼は病死はしないし、怪我なら普通の人間の倍の時間で治る、けど」


今死んでった鬼達は、すぐにーーー


「すげー強い奴が、鬼達を倒したってことか?」


普通の人間みたいな外見のくせに力だけは強い鬼が倒されたってことは、俺達の前に現れたこの大量の鬼達よりレベルが高い奴が倒したってことになる。


「ご名答だ、坊主」


は?俺はハゲじゃなくて……


男の低い声がした、俺達から見て入り口の右から布で頭からすっぽり隠してる長身が現れた。ざっくり言って190はあるんじゃね?




「でしゃばるな、馬鹿者」


その横から女のハスキーボイスが聞こえてきた。


「貴方達は何者ですか……⁉︎」


俺が丸腰なのを知ってか、刀を持った蘭丸が守るように俺の前にずいっと出る。


「怪しい輩じゃねぇよ、長髪坊主」


そう言ってデカブツは布を取り、俺達はその顔を見ることができた。


右頬と左目の下には傷跡。首筋ぐらいまである無造作な髪の毛はオレンジ色で、炎みてぇだ。着てる服は、赤が主体で首元に金色が施されてる鎧の上に、白いファー的なのが付いた赤い……えーと、陣羽織だっけ。それと、履いてるのは白い袴かな?赤い脛当ても。

炎みてぇな奴だな。現代の暴走族?


って、昨日タイムスリップしてきた直後に俺に話しかけてきた奴じゃねぇか!


女の方も布を取る。

一言で言うと美人。

白髪のウルフカット(白髪っていうか、銀髪多くね?)は1番長い所が鎖骨ぐらい。

こいつも鎧を着てるんだが……


露出度高くね?


この女、妙にナイスバディだから高2の健康男子には刺激が強いというかなんというか……直視できない。


犬千代といい、なんで腹出すんだ?


「おい、そこの変な坊主!」


「俺⁉︎」


デカブツは俺に向かって黒い手袋をした指で俺を指す。


「こいつは俺の女だからな、変な気起こす……ぐほぁッ」


デカブツが言いかけたが、女がデカブツの脛に足を払う。


「放っておけ。今は鬼共をどうにかすることが先決だ。行くぞ」


女は腰にあった刀を抜く。その刀は光で反射して本物らしく輝いている。

やっぱり、ここは戦国時代なんだな。


女は刀を持った右手を横に伸ばし、鬼達を切れ長の目で睨む。


「私を相手にすることを後悔させてやろう」


女がそう言うと、女の横腹の所に漢字が浮かび上がる。

『毘』の1文字だ。

刀の先端から水が吹き出てグルグルと女の肩まで包む。


「覇術『毘沙門天の一槍』」


女は静かにそう言うと、何かの合図かのように鬼達は叫びながら女を殺そうと群れで女に向かってくる。女はそこから一歩も動こうとしない。


「危ねえ!」


俺は我慢できなくなって叫んだ。


次の瞬間、何が起こったのか分からなかった。


女を取り囲んでいた鬼達は、全てその場に倒れていた。その中には既に砂となっていく奴もいた。


「おいおい、おいしく所全部持っていってんじゃねぇよ」


さっきのデカブツが女に言う。




強いんだ、この2人は。




あっという間に鬼達を倒してしまったーーー








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