策略開始
「それじゃあ、今度は私と三河に行きましょうか!」
家康さんが俺に向かって爽やかな笑顔で言った。
……絶対、裏がありそうな……
「……なんでそんないきなり……俺まだ帰ってきたばっかりで、」
「明後日にも出ますので準備をお願いしますね!ああ、心配には及びません、用心棒に半蔵も連れて行きます」
俺の言葉をスルーして家康さんは話を進めていく。爽やかすぎて逆に不自然なんだけど。
家康さんの側にいた忠勝がギョッとして「家康様、某は……」と小声で言った。
のに対して家康さんは笑顔のまま、
「留守を頼みますね」
とスッパリ断ち切った。それを聞いて忠勝が崩れる。忠勝、気持ちは察する。
「家康さん、なんでよりにも急に俺なんて……」
「ああ、異論がおありですか?」
家康さんは俺を宥めるような声色で言う。まだ笑顔なんだけど、なぜか黒いオーラみたいなのを感じる。きっとこの人腹黒いんだ。真っ黒。
そのせいで俺は何も言えなくなってしまう。
「今のままでは多勢に無勢、私の国に赴き戦力を補給します。私もいつまでも太閤殿に下に見られるのは癪に障りますから」
「家康さん……」
突然で驚いたけど、家康さんは信長や安土のことを思って……
「安心してください、連れていくのは半蔵だけではないので」
「え?」
「それじゃあ、支度は早めにしておいてくださいね」
笑顔で家康さんはその場から立ち去った。それを追いかけるように忠勝も起き上がって行ってしまった。
……あれ?俺、またスルーされた気がするっていうか、上手いこと言いくるめられた気がするんだけど……




