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戦國鬼神伝  作者: 淡路
道ノ巻
41/64

因縁

「幸村……」


俺の前にいたのは、以前俺に戦う事を教えてくれた奴。



俺に、戦う意味を教えてくれた、ライバル。





「才蔵。今の話はどういう事だ」


幸村は俺の事を見向きもせずに霧隠才蔵の方に問いかけた。


「詳しい話は後でいいだろ、さっさとお仕事済ませた方が身の為だと思うけど?」


才蔵は馬に乗っている幸村や兵達の側に寄る。


「そうだな……それで?あの奇妙な男か」


「そ。風貌から見て『七星樹』に間違いなさそうだよ」


幸村が冷たい視線をこちらにやる。俺のことも他人扱いだ。

幸村の言動も雰囲気も、明らかに前会った時とは全然違う。

俺達を完全に敵視してるみたいだ。

何で、こんな短期間でそんなに変わっちまったんだよ……!





「おいおい、俺と久方ぶりに会うってのに随分と酷い扱いだな真田源次郎幸村よ」



そこに今まで黙っていた政宗が前に出る。

それを見て幸村の視線も政宗の方に移る。


「面倒な男もいたか……独眼竜、伊達藤次郎政宗」


え?この2人知り合い?

でも、お互い睨み合ってるってことは敵だよな……


「お前らしくねぇ回りくどいやり方じゃねぇか。面白そうだな、俺も混ぜろよ」


「貴様には関係ない、二十年も眠りほうけていた貴様に用は無い、そこをどけ」


冷たい風が横切る。忍は作っていない自然な風だ。



「どかねぇ……つったら?」


「力尽くでもどかしてやろう」



暫くその場に沈黙が起きる。


次の瞬間、政宗と幸村が同時にそれぞれの武器を構えた。


「心月連射形態『叢雲』‼︎」


政宗の改造銃が大きな音を立てて弾を連射する。

全ての弾を撃ち終わったのか、政宗が撃つのを止めた頃には幸村の姿はそこにはなかった。

あったのは、政宗に撃たれて倒れる馬だけだった。


「なっ……」


辺りを見回しても姿はない。政宗や俺達がまさかと上を見上げると、そこに赤塗りの十文字槍を携えた赤備えの武士。


幸村は政宗の攻撃を全て回避し、跳んでいた。

幸村が体制を整え槍をぐるりと回す。そのまま高速で回していき、その槍は赤い炎を纏っていく。


「お覚悟召されよ‼︎独眼竜……政宗ぇぇぇぇぇっ‼︎」


幸村は炎を纏った槍と共に政宗に突っ込んでいった。

迫力あり過ぎっていうか……待て待て‼︎


「我が炎、その身を以て思い知れ‼︎覇術、『火柱』ぁぁ‼︎」



「政宗‼︎」


俺は堪えきれずに叫んだ。2人の姿が炎でかき消されていくのを見てられず、俺はその炎に向かって走りだそうとした。


でも、力強く俺の腕を掴んで止めた奴がいた。


「信長⁉︎」


放せと言っても聞かねぇ。俺がなんだよと聞こうとした時、俺の言葉を遮って信長が冷静に答えた。


「焦らなくてもいい。どうせ……」


俺の後ろの炎の勢いが弱くなり、幸村の姿が見える。

その背後から速い何かが見えた……と思ったらそれは、


長刀を構えた政宗だった。


「なっ……‼︎」


幸村が後ろを振り返ったが、どうやら遅かったらしい。

政宗の顔はいつもの余裕の笑みを浮かべていた。


「いいぜ……そっちがその気なら」


鞘から見える刀身は、政宗自身の気に応えるかのように光っていた。


「こっちもその気で行くぜ‼︎『三日月閃』‼︎」



政宗は一気に鞘から長い刀を抜いた。その瞬間、まともに目を開けられない程の光が出る。


「ぐっ……あぁぁぁぁぁぁ‼︎」


政宗の覇術に吹っ飛ばされたのか、幸村は灰となった躑躅ヶ崎館の側の池に落ちた。


「幸村様‼︎」


後ろに控えていた兵達の中の1人が叫んだ。

俺達もその池の側まで駆け寄ってみる。

しばらくして、幸村が水音を立てて出てきた。俯いているせいで表情は見えない。

政宗はその様子を何も言わず見ていた。


「ーーーまだだ……まだ、某は……」


びしょ濡れになって池に入ったままの幸村がぽつりと呟いた。



「まだ俺は、戦える……‼︎」



ゆっくりと顔を上げた幸村の顔を見た瞬間、体中に悪寒が走った。


なんだ⁉︎確かに前会った時とは違うが、ついさっきまでとはまた何か違う……‼︎


今の幸村と戦ったら、まずい気がする……‼︎



「はぁーい、そこまで」



ぱんぱんと手を叩く音が聞こえて我に帰ると、才蔵がそこで腕を組んで真田軍の前にいた。


「源次郎、また悪い癖が出てるぜ。そろそろ治せ」


「止めるな、才蔵。この戦いは今決着を……」


「いいから、今お前さんがするのはそんな事じゃないはずだ」


才蔵の翡翠色の目が幸村を睨む。そこでようやく幸村は槍を下ろした。


「……気を取り直し、本題に入ろう」


幸村は俺達の事をじっと見つめる。


「捕らえろ。殺しでもしたら俺が其奴を斬る」


幸村が率いる赤備えの兵達が俺達に向かってくる。


「何⁉︎叔父上様が目的なの⁉︎」


江が兵達に叫ぶ。信長も政宗もそれぞれの武器を構える。


次の瞬間、俺の全身に強い痛みが走った。


俺が、兵達に捕まえられていた。さっきの痛みは俺が兵に地面に叩きつけられた痛みだったということを、少し経ってから理解した。


それでも、意味が分からない状況だった。江も政宗も、信長も状況を理解してないらしく、固まっていた。


「は……なんで、俺がっ‼︎」


必死に抵抗しても兵達が数人がかりで俺を押さえてるせいで全く動けない。



「太閤殿下直々の御命令だ」



幸村の低い声が頭に直接響くように聞こえた。頭が痛くなった。


「やめろ……なんで、また……」


「待て‼︎何故俺じゃない……何故、その男なのだ‼︎」


信長の怒鳴る声が聞こえる。前みたいにまた俺は意識が遠のいていく。


「……れが知りた……ら……へ来い」


幸村の声が途切れ途切れに聞こえる。

俺は……今から、どこへ連れていかれるんだ……?






「太閤……の大坂城へ」





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