毛利の当主
「ふぁ……本当はもう少し寝ていたかったんだけど……客人なら仕方ない。歓迎会を開かないとね」
毛利輝元が欠伸をしながら言う。
もしかしてこいつ……
「太閤殿下ったら、面倒な事を押し付けてくるんだから……もーやだやだ、面倒だなぁ」
……ただのめんどくさがりやか?
「……あれ?そこにいる眼帯は伊達家の当主様かな?どうして君がこんな所に?」
え?あれ?政宗の知り合い?
「おかしいな……君は女だったはず……あ、もしかして鬼術の副作用で性転換でもしたの?」
「ハッ……どうせ愛の事ぐらい知ってるくせに」
政宗がぼそりと呟く。
もしかして、仲悪いとか?
「まあ、太閤殿下を裏切った反逆者の元に堕ちた竜に用はないよ。そんな事よりーーーーー」
毛利輝元は微笑みながら、信長に目を向けた。
「貴方に用があるのです、織田信長公」
信長は慌てる様子もなく、じっと毛利輝元と目を合わせている。
「鬼術の事を聞きたいからここへ来たのでしょう?僕が放った蛇が言っていましたよ」
そう言うと後ろの兵達の足元を掻き分けて、小さな蛇が毛利輝元に這い寄って来る。
江はそれを見て小さく悲鳴を上げる。
ていうか、蛇がいるってのにこの兵達ビクとも動かねぇ。
もしかして、操られてるとか?
「確かに、僕は常人よりは鬼術の事を知っているつもりです。でも……詳しく知りたいのなら、上杉の直江兼続殿に聞いた方が早いのでは?」
え?なんで兼続さんなの?
「昔話でもしましょうか……」
毛利輝元が微笑みながら言った途端、一瞬強い風が吹いた。
それでも毛利の背後に控えてる兵達は動かなかった。
「鬼術は元々は、その名の通り『鬼』しか知らぬ秘術だったのですよ」




