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戦國鬼神伝  作者: 淡路
始ノ巻
34/64

浦戸城にて


浦戸城天守の大広間。

上座には城主である長宗我部元親が座っていた。


「話ってのは、どうせ鬼術の事だろう」


どんだけ勘が鋭いんだよ、お前!


「言っとくが、あたしは何も知らねぇぞ。頭を使うような事は苦手なんだ」


「鬼術の元を知る者が西にいると、ある者から聞いた」


信長が元親を見て言う。

ある者って、きっと半蔵だ。前、鷹狩の帰りに半蔵が信長に見せていた紙には今信長が言った事が書いてあったんだろう。


「あたしは十八の時に鬼術を父親に聞いて習得し、今のあたしがある。鬼術とあたしはそれだけの関係さ」


「この四国よりも更に西にある九州の地にはまだ鬼術は伝わっていないと聞く。ならば、鬼術の元を知っているという奴はこの四国にいるか、それとも……」


信長は最後を濁して、また元親を見る。元親は今の話を聞いて眉間にシワを寄せた。


「で、四国の主であるあたしの元に来たって事か……もう一度言うが、あたしは頭脳派じゃない。その鬼術の元祖とやらを知りたけりゃ、安芸の毛利の所にでも行きな」


「毛利?」


俺はその名字らしき言葉をもう一度繰り返した。


「そうだ。あいつはとんだ寝坊助野郎だが頭は良いからな、そっちに行け。今ならその首取らずに見逃してやるからよ」


「毛利か……今は毛利元就の孫である輝元が当主じゃなかったか?」


政宗が顎に手を当てて思い出すように呟いた。


「……毛利元就か」


信長も思い出すように名前を繰り返す。

後で江に聞いたんだが、信長は生前に毛利と対立した事があったらしい。

本能寺の変で信長が泊まってた本能寺の警護が手薄だった理由の一つに、豊臣秀吉が中国の毛利の元に行ってた事があるとか。


そ、そんな所に行って大丈夫なのか?


「船ぐらいは出してやるよ。あたしも泳いで瀬戸内海を渡れと言う程鬼じゃねぇ」


元親はすくりと立つ。俺達を囲むように控えていた家臣達と兵が佇まいを正した。


「船を出しな、お前ら!」


「「御意にございます!」」


気持ち悪い程声を揃えて、家臣達は動き出した。


「明日にでもここを出ていってもらう。敵なんかに長居されちゃ困るからな」


元親はそう言うとドスドスと音を立てて襖の方に歩いていった。


「ありがとな、元親!」


俺が元親の背中に向かってお礼を言うと、元親は綺麗な顔を怒りに歪めながら俺をすげぇ睨んできた。


「次そうやって容易くあたしの名前呼んだらぶち殺すぞ、変人野郎!」


そう言い捨てて元親は襖をすげぇ大きな音を立てて閉めて、この大広間から出ていった。

そのすぐ後に、襖が倒れて廊下を不機嫌そうにドスドス歩く元親にビビりながら頭を下げる家臣達が見えた。

マジかよ。


「変人野郎か。『人』と『野郎』では重複の意味になるというのにな」


「そんだけ頭の中がすっからかんって事だろ」


信長と政宗が好き勝手に言ってると廊下の方から巻物がものすげぇ速さで飛んで来て2人と俺の頭にも当たった。何でだよ。


「男って本当馬鹿なのね」


はぁ、と溜め息をついて江が呆れるように行った。


とりあえず、俺達の次の目的地は安芸って事か。この旅、俺が思ってるより長くなりそうだな……




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