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戦國鬼神伝  作者: 淡路
始ノ巻
32/64

鬼若子

土佐……土佐って、坂本龍馬の出身地の?

いやいや、時代が違うだろ。


っていうかマジ美少女!銀髪碧眼に縦ロールの一つしばりとか、完全に生まれた国間違えただろ!


「貴様が長宗我部元親か。聞きたいことがあってここに来たのだが」


命知らず!待て、信長!俺達絶対的に不利な状況なんだから!


「誰だお前。あたしと話をする前に名乗りな」


「こんな状況でなど名乗る気はない」


「あ?」


元親のこめかみに青筋が浮き出て、眉間のシワも一層深くなる。

まずい、本格的にまずいだろこれ……!


「てめぇら‼︎ぶち殺せ‼︎」


元親の掛け声に、背後のイカつい連中がドスの効いた大声を出す。

こんな美少女があんな奴ら率いてんのかよ!戦国って恐ろしいな!


「そういや、そこの隻眼……お前、独眼竜だろう。こんな少人数で何処へ行くんだ?」


やっぱりバレてるじゃねぇか‼︎

眼帯に家紋彫るから!

いや、隻眼メッシュだから余計分かりやすいんだよ!


「なんだよ、長宗我部元親っていやぁ『姫若子』とかいう渾名からして大人しい奴かと思ったら……『鬼若子』だな、こりゃ」


こいつらは喧嘩を売ってるのか⁉︎相手を余計怒らせてどうするんだ‼︎

案の定元親はキレたらしく、武器らしき大鎌を構える。


「てめぇ、あたしに喧嘩売ってんのか‼︎」


元親は地面を蹴って政宗に向かって鎌を大きく振り上げる。

政宗は腰にある筒から短筒をいつものように出した後すぐに元親の一撃を避けた。


「俺の覇術見せてやるよ…‼︎『雲心月性』‼︎」


その瞬間、政宗の愛銃の銃口から出たのは弾じゃなくて青い光だった。

その眩しさに俺は思わず目をつむった。


「吼えろ、『心月』‼︎」


政宗が言うと、短筒のものとは言えない程の大きな音が鳴った。

轟音とも言える音のせいで耳が痛い。


でも、その威力は抜群なのか俺が目を開けた時には、政宗の覇術に倒れた奴がたくさんいた。


「ーーどうだ、俺の覇術。すげぇ威力だろ?時代は火器の時代だぜ、お嬢さん」


辛うじて政宗の覇術を避けたらしい元親が俺達を睨みつける。


「ちょっと、藤次郎⁉︎私達は話をしに来たのよ⁉︎」


江が政宗に駆け寄る。政宗は元親を見つめたままだ。


「もういい。最早話し合いをすることは不可能だ」


信長が愛銃である『炎羅』を手にしながら言う。なんか殺気が漂ってるような……


「何言ってるんだ、信なっーー……‼︎」


しまったぁぁっ‼︎つい、いつも信長って呼んでるから癖で‼︎


「はぁん……そこの赤目、あの織田信長公って訳か……」


しっかりバレとるがなぁぁっ‼︎

俺とした事が、やべぇ‼︎

やめろ、江!そんな冷たい目で俺を見るな!

あと、その表情は絶対無かったことにしてるだろ、政宗!


「それがどうした」


俺お前の正体バラしたのになんで飄々としてるんだ、信長!本当すまん、心の底から謝る!


「……気が変わった。おい、てめぇら!この四人を捕らえな‼︎」


元親が言うと俺達の背後からがっしりと兵達が俺達を捕らえる。


はぁ⁉︎意味わかんねぇ!


「待てって、元親!俺達の話を聞け‼︎」


俺の叫びは元親にはただの雑音みたいだ。


「うるせぇ。あたしと豊臣の邪魔をするんだったら、例え天下の織田信長公でも潰す。それがあたしの流儀だ。覚えときな」


そう言って俺を一瞥した後、元親は兵の中に紛れて行ってしまった。


ていうか俺達、最初の目的地でどうなんの⁉︎





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