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戦國鬼神伝  作者: 淡路
竜ノ巻
22/64

夕餉の時刻に

あの後太助さんの家に行ったら案の定怒られたんだけど、喧嘩があった事を話したら笑って、


「んだよ、そういうのは先に言え!人助けしてたなら仕方ないな!」


って言って俺の背中をバンバン叩いて、人助けの報酬とか言って大根とか冬野菜を10キロ程くれた。

太助さんはおおらかな人で良かった……背中痛いけどな。


俺は日暮れまで畑の手伝いをして、日が落ちる時に安土城に帰ってきた。


「ただいまー」


「おかえり‼︎樹‼︎」


俺が屋敷に入ると、すぐに犬千代が笑顔で飛んできた。


「おかえりなさい、樹殿」


通りかかった家康さんが微笑んでくる。


なんか……本当に家みてぇになっちまったな。ここに来てもうすぐ1年経ちそうだし、慣れちまった。


「……あ‼︎そういや、今日伊達政宗に会ったんだけど‼︎」


俺はすれ違った家康さんを追いかけた。

家康さんはきょとんとしてる。

でも、すぐに微笑んだ。


「……今日は、夕餉にお客様がおられるみたいですよ」


「え?」


その客って、まさか……







「伊達藤次郎政宗、次郎三郎家康殿の御命により参上仕りました」


「奥州から御苦労様です、藤次郎殿」


昼間の時の具足を取って袴姿で正座して頭を下げる伊達政宗。

そして、それを笑顔で見る家康さん。


上座に信長がいない夕飯。上座は誰も座っていない。


「……はぁ⁉︎なんで⁉︎」


俺は思わず驚きを口に出してしまう。

だって、なんで伊達政宗がここにいるんだよ⁉︎


「藤次郎殿は既に私に帰順しているんです」


笑顔で言う家康さん。

っていうか、帰順ってどういう意味?


「……帰順、か」


その時、伊達政宗はぼそりと呟いてその隻眼で家康さんを見つめる。


「伊達家はまだ絶対服従はしておらぬ。

言うとすれば……そうだな、同盟だろう」


ニッと笑って伊達政宗はまたその目で家康さんを見る。

家康さんは笑顔のままだ。


「次に帰順などと言ったら……」



「この片倉小十郎、貴殿の首をこの鉈で掻き切ってくれましょうぞ」



家康さんの背後にはいつの間にか具足を付けた男がいて、家康さんの首元に結構な大きさの鉈を近づけていた。


それでも、家康さんは笑顔だ。


「私としたことが、言葉を選び損ねたみたいですね。謝りましょう。……でも、」


「家康様に手を出すのなら、この本多平八郎忠勝、黙っておらぬ」


俺と同じ顔をした忠勝が鬼の形相で槍を携えていた。


なんだよ、なんかすげぇ暗いっつーか、険悪なムード……


「……私は平和主義なので、今日はやめておきましょうか」


家康さんが笑うと、政宗が馬鹿にするかのように鼻で笑う。


「奥州の独眼竜殿は未だ目覚めていないようですからね」


「ーーー……ふん」


一旦話が止まると、さっきまで家康さんの背後にいた男が家康さんの前に来る。


「先程の御無礼、お許しください。某、片倉小十郎景綱と申します。今日は主君、伊達藤次郎政宗様の護衛として参上致した所存にございます」


丁寧に挨拶して、片倉さんは正座して頭を下げた。さっきの大鉈は鞘に納まっていて、刀と一緒に右側に置いてある。


ていうか片倉さん、薄茶の髪の毛先に黒いメッシュ入ってるんだけど‼︎何その自然過ぎるメッシュ‼︎


なんか優男って感じするんだけど、殺気立ってるような……


「挨拶はこれぐらいにしましょう」


ああ、やっと険悪なムードから解放される……!


俺は鳴ってた腹の虫を抑えようと、麦飯から手をつけた。





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