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戦國鬼神伝  作者: 淡路
創ノ巻
15/64

上田城にて


「あれが上田城か……」


俺達は越後の春日山城の時より随分早く、信濃に入って上田城二の丸に入ることができた。


「上田城は今真田昌幸殿の居城ですが……」


春日山城で仲間になってくれた兼続さんが、俺達が止まった所より1キロぐらい離れた所にある上田城の本丸を見ながら言った。


「まあ、俺が信濃国主だった頃はあいつは足軽大将だったしなぁ……あのガキも覚えてるかどうか」


信玄が馬を降りながら言う。俺も信玄に教えてもらいながら馬から降りる。

意外と馬って高いんだな。


「お前……仲間になって損は無い者がいるなんて言っていただろう」


謙信も馬を止めて降りる。前の傷はすっかり治っているらしく、鬼は回復力も半端ないということを知った。

余程嬉しかったのか、今日も謙信は男姿だ。


「俺が知ってる限りじゃ、あいつは才能あると思ったんだけどなぁ」


「あいつって誰だよ」


「弁丸っていうガキがいてなぁ、暇な時に俺が槍を教えたんだよ。2、3回ぐらいだけどな。覚えてるかなぁ、あのガキ」


「その男子はもしかしてーーー……」


兼続さんが言いかけた時、


「何奴‼︎」


本丸の方から声がした。


見ると、本丸の門前に赤い鉢巻に赤い鎧、赤塗りの十文字の槍を持った俺ぐらいの男がいた。


「此処を真田の地と知っての狼藉か!」


ええっと……どうするんだろ、あれ。


「手形は取ったはずだがな」


謙信がぼそりと呟く。その左手は刀にかけている。


「真田の地を踏み荒らす不届き者は、拙者が成敗つかまつる‼︎」


そう言って真っ赤な武士は赤い槍を構える。


「おい。赤備えはお前の所の奴ではないのか?」


謙信が武士を見ながら、俺と一緒に遅れてやってきた信玄に威圧をかける。


「いや、あんな奴見たことねぇけどな」


そう言う信玄に舌打ちをして、謙信が兼続さんにおい、と呼びかける。兼続さんはそれを聞いて頷き、武士に向き直る。


「失礼ですが、貴方の名を聞きたいのですが!」


兼続さんが武士に大声で言った。俺はそれが突然過ぎてびっくりした。


すると、真っ赤な武士が俺達と距離を縮めてきた。

兼続さんの声がよっぽどデカかった事が分かった。


俺達と武士の距離が縮んだおかげで、武士の姿がはっきり見えるようになった。


「拙者、真田源次郎幸村と申す!この上田は拙者が守る‼︎」


そう言って、赤い武士はまた槍を構え直す。


「真田……あの足軽大将の息子ってことは、お前が弁丸か!」


信玄が嬉しそうに笑う。でも、その真田幸村は眉を顰める。


「貴様!我が父上殿を愚弄致すか‼︎」


足軽大将っていうのが気に食わなかったらしい。


「貴様はもう黙っていろ」


謙信がまた信玄に威圧をかける。信玄本人は悪気はなさそうだ。


「お、おい!この人は武田信玄だぞ⁉︎覚えてねぇのかよ!」


俺は我慢できなくなって真田幸村に叫んだ。

だって、少しだけど信玄に世話になったのに覚えてねぇとかおかしいだろ!


「御館様の名を出すとは、そなた、御館様の事を知って……」


話を聞いてねぇ!

俺の勇気を返せ‼︎


「だから、こいつが、武田信玄なの‼︎」


俺は喉が潰れる限界までデカい声を出して信玄を指差しながら叫んだ。


「な、な、……‼︎」


すると、真田幸村はワナワナと震え始めた。


「お、おお、おお御館様ぁぁぁああっっっ‼︎」


真田幸村はめっちゃ叫んだと思ったら、物凄い足の速さでこっちに走ってきて、信玄に抱きついたっていうか、体当たりした。

その反動で信玄がよろめく。


……なんで、こういう奴ばっかなの?



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