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戦國鬼神伝  作者: 淡路
創ノ巻
12/64

春日山城にて

「はぁっ……はぁ」


「遅い。早くしろ」


「おま……さっきまで馬に乗ってたから……言えるんだろ……」


「体力がねぇな、坊主。お前も俺の馬の後ろに乗ってただろうが」


「ちっ、バレたか……っていうか、」


「なんだ」


「お前の居城……山の上とか聞いてねぇ‼︎」



何日もの旅を上杉謙信と武田信玄とくノ一として、俺達はようやく上杉謙信の居城、春日山城に着いた。


「……まだ残っているとはな」


春日山城の城壁や天守を眺め、謙信はそう呟いた。

その目は少し懐かしく思っているらしかった。


「おそらく、今は我が養子の上杉喜平次景勝が城主だろう」


「そいつも鬼なのか?」


俺が聞くと謙信は城を眺めるのをやめて目を伏せた。


「いや、私がそれを許さなかった。ただ、喜平次は聞いた所によると今は豊臣家の五大老の一人だと」


また豊臣秀吉だ。

一体豊臣秀吉は何がしたいんだ?


「……でも今豊臣は朝鮮出兵の最中なんじゃねぇのか?」


信玄が口を開く。


「朝鮮出兵?」


「そのままの意味だよ。天下統一したからって、次は海の向こうの国にも手を出し始めたらしいな」


へぇ……全然理解できねぇ。


「っていうか……なんか静かだな」


普通だったら門番とかいるはずだろうが、その姿は見当たらない。


「……伏せろ‼︎」


「えっ⁉︎何⁉︎」


いきなり信玄が叫んで、俺と謙信は襟首をすげぇ力で掴まれる。


俺と謙信が信玄の背後に回された時、矢の雨が降ってきた。


ドドドって音が鳴らしながら矢先は地面に刺さる。


本物……‼︎怖え……


「何奴!」


上の方から男の声がした。

信玄の背後からおそるおそる覗くと、櫓にイケメンが立っていた。


現代にいたら絶対俳優とかになってそうな甘いマスクのイケメン。黒髪のゆるふわパーマが草食系っぽい。


「神聖なる春日山に入った不届き者共が!この直江兼続が成敗してくれる‼︎」


ん?直江兼続?なんか聞いたことあるようなないような……あ、『愛』の武将か‼︎

こういう時茜が俺に言ってきた知識が役に立つなぁ……じゃねぇよ‼︎


俺達いつの間にか囲まれてるよ‼︎


「与六‼︎」


謙信が叫ぶ。直江兼続は謙信の家来だったとか?そのへんは茜の話も聞き流してたから分からねぇ。


「私だ!忘れたのか⁉︎」


謙信が必死に呼びかけても直江兼続は聞いていないっていうか、聞こえてないみたいだ。


って、……直江兼続の背後の黒い影みたいなやつ……なんだ?

直江兼続の目にも光が無いっていうか、何か嫌な予感がする。


「……殺れ」


直江兼続が静かに言った途端、俺達を囲んでいた兵達が一斉に俺達に襲いかかってくる。


「動かざること山の如し『風林火山、不動如山の構え』‼︎」


そう言って信玄がいつも持ってる大刀を地面にぶっ差すと、俺達の周りに結界ができる。


「俺の山は崩れる事ぁねぇぜ」


信玄が不敵に笑う。


「なぁ、信玄」


「ん?」


俺は直江兼続の影について信玄に聞いてみた。


「お前さ、直江兼続の後ろの影見えるか?」


「影ぇ?……ンなもん見えねぇけど?」


は?


鬼だったら幽霊は見えるんだよな?

じゃあ、直江兼続の背後のかげは幽霊じゃねぇってことか?


「……気に食わぬ」


謙信がぼそりと呟く。


「私は、彼奴を小姓時代から支えてやったというのに、覚えていないだと……?」


謙信は直江兼続をかなり信頼していたらしい。俺は、悲しいんだな、と思っていたけど間違いだったらしい。


謙信のこめかみには青筋が浮き出ていた。


え?なんで?


「そうか……はは、ふはははは!」


「え、おい、輝……じゃない、謙信殿?だ、大丈夫か?」


信玄が恐る恐る謙信に問いかける。


「け、謙信……壊れた?」


俺も震えながら呟く。


「……一、心に物なき時は心広く体泰なり」


「「え?」」


「一、心に我儘なき時は愛敬失わず

一、心に欲なき時はーーー……」


謙信は本当に壊れたのか、ブツブツと何かを言っている。

すると、信玄が何かに気づいたのか顔を上げる。


「これ……上杉家の家訓じゃなかったか?」


え?分からねぇ。


なんで謙信は家訓を呟いてんだ?


「……一、心に迷いなき時はーーー……」


謙信がブツブツ言ったあと、その言葉を言った途端に謙信が柔らかい光に包まれてその姿が見えなくなる。


「けっ……謙信……?」


俺が呼ぶと、謙信を包んでいた光は俺の目線の少し上の方に集まる。


「ーーー……人を咎めず」


男の声だった。


そこに謙信の姿は無く、一人の女顔の男が立っていた。

風で揺れる前髪のしたにある白い額には、小さく『毘』の字があって、その文字に光が吸い込まれていく。


「……マジかよ……お前、完全に上杉輝虎じゃねぇか……‼︎」


信玄の頬に汗が一筋流れる。冷や汗だろう。


額の一文字に、なんとなく俺が見たことある謙信の面影がある顔。


この男は、上杉謙信なのだ。




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