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戦國鬼神伝  作者: 淡路
創ノ巻
11/64

旅立ち

「う、おりゃぁぁああっっ‼︎」


「おっと、力任せでは駄目だと言っているでしょう、樹殿」


俺が一心に思いっきり振り下ろした木刀をあっさり避け、家康さんは俺の背中にコン、と木刀を当てる。もちろん笑顔で。


「……また、負け……」


「休憩しますか?」


地面に倒れて落ち込む俺に家康さんが優しく言ってくる。


「……いや、まだまだ‼︎」


「……そう言うと思いました」


「もう一本お願いします‼︎」


野球部で鍛えたスタミナと根性、思いっきり発揮させてもらうぜ!



「……すいません、最後の一本はついムキになってしまって……」


「ひや、いいんすよ……いい練習になったし」


俺は縁側で家康さんに木刀でぶっ叩かれた左腕とか、転んで擦った所とかを何故か江姫に手当てしてもらった。


「……はい、できたわ!」


そう言って江姫は俺の左頬の擦った(手当て済み)所を白くて細い手でぺちりと叩いた。


「いててっ……あざまっす、江姫さん……」


「あら、江姫さんなんて堅苦しいわね。前みたいに呼び捨てでもいいのに」


いやでも、あんた一国の姫様だしね……


「んー、お江でいいわ。貴方に姫なんて言われると落ち着かないのよ」


まあ呼び捨てにしろと。


「どうしていきなり私に稽古をしてくれと?信長様に頼んだらよかったのでは?そっちの方が練習になると思うんですが」


家康さんはお茶を啜りながら軽く言うが、そんな事言ったらぶっ殺される。もし稽古してくれると言っても、稽古でぶっ殺される。


「……前、森……森長可って奴が来た時、俺は立ち尽くしてばっかで何もできなかったから。この時代でも俺ができる限りの事を、俺自身が見つけたいんです」


「……あんた、意外と根性あるのねぇ」


お江がいきなり心にグサリとくる言葉を放つ。

俺、弱そうに見えるのか?


「ふふッ、似てるわ」


「は?だ、誰にだよ」


「ふむ……確かに。平八郎より似ている方がいたようですね」


はぁ⁉︎家康さんまで変な事言って、意味分からねぇ‼︎


その時、俺達が座っていた縁側の近くの襖がスパァンといい音立てて開いた。


これまた露出度高い上杉謙信登場。いや、今日は上に地味なマントやら羽織って旅装束だ。


「どっか行くのか?謙信」


「帰る」


は?


「正しくは里帰りだ。良い人材がいたのを思い出してな、引っ張り出してくる」


手厳しいな。


「おい、輝虎……っと、坊主どうしたんだ?そんな傷だらけで」


だから坊主って言うんじゃねぇよ。

武田信玄もいつものド派手で真っ赤な鎧と陣羽織の上に旅用のマント羽織ってる。


「お?松平家康じゃねぇか」


「これは、武田殿。相変わらず場所取りですね、邪魔です」


「言うようになったじゃねぇかクソガキ。あン時はまだ信長にへばりつく泣き虫小僧だったのによ」


「いつの話です?次その話をしたらぶっ飛ばするでねよこの野郎」


え?訳分からない。

もしかして家康さんキレた?方言使ってるよ?


「やめんかクズ共。喧しい」


暴言吐いて謙信が信玄の背中を蹴る。

かなり力入ってるみたいだけど、信玄はびくともしねぇ。


「なぁ、お江。なんで家康さんと信玄って仲悪いんだよ」


「それは、とある戦で家康殿を命からがら敗走させたのが武田信玄殿だからよ」


上杉謙信とライバルだったのは歴史に詳しくない俺でもまぁ知ってたが、まさか未来の将軍を敗走させてた過去があったとは……

さすが甲斐の虎。


「そうだ。おい」


「……七星樹ですけど」


いい加減名前覚えてほしいんですけど。会ってもう一ヶ月は経ってるし。

どうやらこの2人(特に謙信)は名前を覚えるのが苦手っていうか、覚えようとしねぇ。


信玄は坊主って言うけどそれはまだマシな方で、謙信に限っては「おい」呼ばわり。


俺の名前「織田信長」ぐらい覚えやすいと思うんだけど。


「じゃあ七星樹。お前も連れて行けと上総介が言っていたぞ」


じゃあってなんだよ。じゃ……


「……はい?」


「だから、お前も連れて行くんだ。次聞いたらその額に『毘』の焼印押すぞ」


えぇぇぇええ‼︎⁉︎


「だから、なんで、俺が……」


信長は人手不足とかなんだ言ってるくせに人使い荒いな、いつも‼︎

いっそのこと泣きたい。


「まあ、俺としたらお前がいれば面白い旅になりそうだからな」


信玄はどこまで能天気なのだろうか。


「まあそう落ち込むな、坊主。俺と輝虎だけじゃねぇから」


「だから謙信だと何度も言わせるな」


は?


「千代!いるか?」


信玄が天井を見上げて言う。

だが、全く物音はしない。


「んー?いねぇのか?」


「お前また何か仕事を与えたまま忘れてるんじゃないのか」


「いや、2ヶ月ぐらい前にここに来る前に安土山付近の偵察させて以来仕事は……」


信玄が言いかけた時、物音を一切立てずに信玄の後ろに女子が1人背後霊のように立っていた。


「「ぎゃあぁぁぁぁあああっっ‼︎‼︎」」


俺と信玄は同時に悲鳴を上げた。

お江は女子の存在と俺達の悲鳴両方に驚いてビクッと肩を震わせた。家康さんは少し驚いたようだった。謙信はいつもの事だと言わんばかりにはぁ、と溜息をついた。


「おおお前、だから物音一切立てずに俺の後ろに立つなっていつも言ってるだろうが‼︎」


信玄はその女子の肩を掴んで青ざめたまま言うが、女子はしれっとしてる。


「物音立てたら、忍、失格……」


と、片言で言った。

鈴が転がるような声だった。


髪はポニーテールをして、服は動きやすそうだ。犬千代と同じように袴を改造してキュロット(だったっけ?)にしてるけど、その袴は白で、着てる服は白か黒で地味だ。


ん?忍者?


「……こいつは望月千代女。俺の配下のくノ一だ」


ほ、本物の、忍者‼︎

すげぇ、漫画でしか見たことなかった‼︎本当にいるんだな‼︎


「この四人で私の城まで行くのだが」


「謙信の?

謙信の里ってどこだ?」


上杉謙信もそりゃ、生前は一国の主だったんだよな?


「越後だ」


「……どこ?」


「ちっ、無脳め」


今無脳っつった?


「謙信殿、地図、持ってる……」


そう言って千代女がどこから出したのか、地図を開いた。


筆で書かれたぐにゃぐにゃの日本地図が描かれている。戦国時代はまだ日本地図自体が発展してなかったんだな。


その地図の今で言う都道府県の近くに、漢字2文字があちこちに書かれてあった。


確か信長の故郷は尾張で、家康さんが三河だよな。ってことは今の愛知県ぐらいか。

俺の家がある静岡県は、この時代じゃ駿河か遠江で、今俺達がいる安土山は近江って所なんだよな。


このデカい湖があるってことは……滋賀県か?


「えっと……越後、越後」


近江の近くに「越前国」「越中国」の文字。


あった、越後国……って、


「ここ……新潟県ぐらいじゃね?」


「「にいがたけん?」」


やべぇ、驚きのあまりつい声に出してしまった。

皆知らないから俺が言った事を繰り返した。とりあえず俺は笑ってごまかす。


し、滋賀県から新潟県って……



「どんだけ長旅するんだよ‼︎」



俺、ここに生きて帰ってこれるかな……



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