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戦國鬼神伝  作者: 淡路
壱ノ巻
1/64

出会い


現代、4月下旬。


「いいぞ、七星!回れ回れ!」


「ホームまで帰ってこい!」


歓声と応援の声の中で俺は一秒でも早く地面を踏みつけながら走っていく。


「滑ろ!」


コーチャーズ・ボックスの中にいる同輩の声と同時に、俺はホームベースにヘッドスライディングをする。

全力で走って、俺は肩で息をしていた。


「セーフ!」


主審の声に、一際大きな歓声が上がる。

試合は七回裏。俺達のチームのサヨナラ勝ちだった。



「「あざーッした!」」



俺の名前は七星樹。高校2年の17歳だ。


「兄貴!」


挨拶も終わり、チーム全員は解散しているところに、駆けてくる奴がいた。


俺の二歳下の、今中学3年の妹だ。


「茜、いつ日本に帰って来たんだ!?」


「今日の朝。兄貴の初スタメンの試合だって言うんで、チャリ飛ばしてきたんだよ」


俺には両親と、妹ともう一人、弟がいる。

親父は海外赴任が多くて妹の茜は俺達の親父についていろんな国を回ってる。



「次行く国はイスラエルってとこらしいんだ」


「へえ。でもお前、高校は日本なんだろ?」


「うん。アタシ、ソフトボールやりたいし」


茜は、小学校の頃滞在していたアメリカでソフトボールのクラブやらに入っていると、ずっと前に来た親父からの電話で聞いた。

外国には部活はねぇから、よっぽどソフトボールが好きなんだな。


まあ、野球しか脳にねぇ俺が言うのもなんだがな。


「お前、でかくなったな。何センチだ?」


「165センチ!でも、外国じゃもっと背が高い美人がいっぱいいるぞ?」


「そうだな、お前見た目男だもんな!」


「うるせーよ!」


そんなやり取りをしながら、俺達は我が家に向かっていく。

辺りは既に夕日の赤色に染まっている。


「お?骨董品屋?」


俺達は見るからに怪しい骨董品屋を見つける。ほとんど外国で暮らしてる茜は日本の文化が好きで、こういうのを見ると目が輝く。


「兄貴!寄ってこうぜ!」


「え?お、おう」


茜は骨董品屋に入っていくので、俺もしぶしぶ入る事にした。


「なんだ、これ。骨董品にしちゃ随分新しい扇子だな」


茜がそう言ってこちらに見せてきた扇子は開くと、真っ白で何も書かれていなかった。


「あの、この扇子はいくらですか?」


近くで商品を整理していた女の店員に俺が聞くと、店員は不思議そうにその扇子を見て、


「あら……そんな扇子、この店に置いてあったかしら。そうね……見るからに新しいし、まけて600円ってところかしら」


「欲しい!」


茜がおごれ、と言うような目でこっちを見る。まあ、こいつはいつも外国に住んで扇子なんて珍しいくらいだろ、と思った。それに、600円くらいなら出してやってもいいか、と思って、レジの方に向かった。





「ありがとな、兄貴!」


「自分で持てよ、扇子ぐらい」


「やだよ。だってアタシ、兄貴の着替えたユニフォームが入ったエナメルバッグがカゴに入った自転車引いてやってるんだよ?

既に上限超えてるって、扇子とバットぐらい、自分で持てよな!」


そう反論する茜に、扇子はお前のだろ、と呆れながらバットが入ったバットケースを肩に掛け直す。


「きゃああッ」


その途端に、どこからか女の悲鳴が上がり、咄嗟に俺と茜は顔を見合せる。


「お前、今悲鳴上げたか?」


「違うよバカ兄貴!あっちから声がしただろ!」


バカ兄貴と言われたのは取り敢えずスルーしておいて、俺は声がした方を振り返る。


俺達が見たのは、居眠り運転中の大型トラックに、道路に転がっていったボールを取りにいく男の子が今にも轢かれそうな光景だった。


「危ない!」


俺よりお人好しな妹の茜が俺より早く走っていった。


「バッ……お前も危ねぇだろ!」


思わず俺もバットケースと扇子を左手に抱えながら茜を追いかける。

茜が男の子を助けた瞬間、



「茜!」



俺が茜の背中を力の限り押し、道路の端に追いやった瞬間、





俺の意識はそこで途絶えた。







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