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告白

お久しぶりです。

 俺が桜狐(さくらこ)のいる場所にたどり着くと、桜狐(さくらこ)は地面にしゃがみ込むところだった。

 俺はすぐさま地面へと降りて、桜狐()へと駆け寄り声をかける。


「私は、私は兄様(にいさま)の……「桜狐(さくらこ)っ!!」兄様(にいさま)のことが好きなんです!!」


 ワッツ!? ……今桜狐(彼女)はなんて言った? 俺がかけた声よりも強く、彼女が叫んだ言葉は何だ?


「さくら……こ?」「兄様(にいさま)っ!?」


 俺は桜狐(彼女)のすぐそばまでよってから、もう一度声をかける。


「…………ッ!?」「逃げないで!!」


 俺はバッっと逃げようとする桜狐(さくらこ)の手をつかみ抱き寄せる。


桜狐(さくらこ)……お願いだから逃げないで? ちゃんと話がしたいんだ……」


 俺は桜狐()を胸に抱き、優しく声をかける。


桜狐(さくらこ)……、まずは謝る……というか、説明させてほしい。さっき見た光景(シーン)がどうしてだったのかを」


「………………」


 桜狐(彼女)は肯定も否定もせず、ただ俺の次の言葉を待っているようだった。


「沈黙は肯定と受け取るよ? …………それじゃあ話そうか? 少し長くなるけどいいかな?」


「………………はい」


 俺が確認すると、今度は肯定の意思を示してくれた。


「それじゃあ、桜狐(さくらこ)と別れてからの話をしよう。……といっても、半神(この体)になるまではあまり変わらないんだけどね?」


 そう前置きをしてから、俺は桜狐(さくらこ)にこれまでのことを話していった。


・・・

・・


「という訳で、彼女たちは俺のパーティーメンバーであり、大切な存在なんだよ。……さっきのはさ? リセットされても彼女たちが消えていないことが嬉しくて、それを体で表現していただけなんだよ。……まぁ、NPC相手にどうなんだ! なんて言われると、弱いんだけどさ?」


 俺は長い話をそうまとめると、桜狐(さくらこ)の体を抱き締めなおす。


「だからさ? 桜狐(さくらこ)のことを嫌いになったとか、どうでもよくなったとかじゃないんだよ。……ただ、心から大切だと思える存在が増えただけなんだよ?」


 精一杯優しい声を心がけ、彼女の頭を撫でながら言う。

 しばらくそうして、俺は桜狐(彼女)の反応を待つ。


「………………わかりました。今は納得することにします」


 しばらくそうしていてから、桜狐(彼女)は急に俺の胸から体を離す。


「……ありがと「でもそれとこれとは話が別です!!」う?」


 桜狐(さくらこ)は俺の言葉にわざとかぶせると、いたずらを思いついたような顔で俺の方を向くと 「……もう一回抱きしめてください」 と言って両手を広げる。


「……わかったよ」


 俺はしかたなく、桜狐(彼女)の方へと歩み寄る。

 しかし……


「やっぱ、そっちから来いよ……」


 俺は急に気恥しくなり、あと数歩の距離で立ち止まると桜狐(彼女)から来るように両手を広げて待つ。


「仕方ないですねぇ……」


 そんな俺の姿を見て、桜狐(さくらこ)ははにかむと走り出す。


「ちょ!? まっ」「大好きです!!」


 その言葉とともに、その勢いのまま桜狐(さくらこ)は俺に抱きついてくる。


「うわっとと!?」「きゃー」


 そしてその勢いのまま俺を押し倒すと、両手と両足を押さえつけられる。


「今日はこのくらいで許してあげます……。ちゅっ」


「ッ!?」


 そう言って桜狐(さくらこ)は、俺に覆いかぶさりながら唇を合わせた。


「私の気持ちは変わりませんよ? さっき言った通り、兄様(にいさま)のことが大好きです。あの人たちになんか負けないですから!!」


 ニカッと気持ちのいい笑顔で笑うと、桜狐(さくらこ)は俺の上からどく。


「これからは私も兄様(にいさま)のパーティーに入ります! 覚悟してくださいねっ?」


 そう言うと 「あ~おなかすいたぁ」 などと言いながら、俺の方を期待を込めたような眼差しで見る。


「……わかったよ。なんでも好きなものを言いやがれっ!」


 その視線の意味に気付いた俺は、これからどうなるかを不安に思いながらも立ち上がる。

 そして……


「どこにでもついていきますよ? マイプリンセス?」


 そうキザったらしく言うと、桜狐(さくらこ)の手を取る。


「それじゃあまずは、甘いものが食べたいです! 行きましょう? 私だけの王子様(に・い・さ・ま)!」


 桜狐(彼女)はそれを聞いて嬉しそうに笑うと、俺の手を握り返して意外に強い力で引っ張った。


「目指せ甘いもの全制覇! ですよっ!! ……ちゃんと付き合ってくださいね?」


 言外に「逃がさないんだからっ」という感じの目で一瞬俺を見ると、すぐに前を向いて歩きだす。


「……いいよ。今日はとことん付き合おう」


 そんな桜狐(さくらこ)の姿に自然と頬がゆるみ、俺はこの小さなお姫様に好かれていることを誇りに思った。

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