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日常の塔①

「ふむ、それなりだったな。まずくはなかった」


「確かに。宿の料理の方がおいしかったですね」


 俺たちは現在、昼飯を食べ終わった足で校舎に来ていた。

日常の塔は、この校舎の中の教室だったり体育館だったり部室だったりにあるらしく、今日は日常の塔の一つ目を攻略するためにやってきた。


「ってことで、案内よろしくね?」


「「かしこまり~」」


「こっちです……」


 俺は三人のあとをついていった。


・・・

・・


「ここがそうなの……か?」


 たどりついた場所は、理科室だった。

この理科室に入る扉が、日常の塔①につながっているらしい。


「えぇ、ここが日常の塔①につながっている場所です……」


「手前の扉が初めからで、奥の扉が途中からだよ」


「全部で15階層ありますからね、一日ですべてを攻略する人はなかなかいないゆえの措置ですね」


「そうなのか。……ってことは、俺たちは手前から入ったほうがいいんだよな?」


「そうなりますね」


「そうだね。……でもでもっ、奥の途中からの方に入ると……」


「初めての場合、ランダムで色々な階層にとばされるらしいですよ?」


「上の方に出れたなら……」


「かなり楽が出来ますよ?」


「それは……少し魅力的だな。どうしようか?」


「私はラン様に従うだけです……」


「私たちは……」


「奥に入りたいかな?」


「今日はなんだか……」


「ラッキーな予感がするんだよっ!」


「…………うーん」


 俺は少し考える。

確かに二人が言うように、上の階層に出られるのはかなり魅力的だ。

しかし……いきなりボス部屋にでたり、敵がたまっている場所に出たら、かなりめんどくさい気もする。


「一つ聞きたいんだけど……いいかな?」


「なんでしょうか、ラン様?」


「「どしたの? ラン君?」」


「はっきり言って、ここの敵って強いのか? ……俺としては、ボス以外は楽勝なんだったら奥のランダムにはいるのもやぶさかじゃないんだが……?」


「そういうことでしたら……」


「弱くはないけど、負けることはありえないねっ!」


「私たち四人なら、楽勝だよっ!」


「そうなのか?」


「そうですね……。ここの敵の平均レベルが130程度なので、私たちでしたら簡単にすすめるでしょう」


「そうなのか~。……よしっ! なら奥のランダムに入ってみよう!」


「かしこまりました……」


「「かしこまり~」」


「んじゃ行くよ? 準備はいいかい?」


「「「大丈夫です」」」


「んじゃレッツゴー!」


 俺は奥の方の扉を開けて中に入った。


・・・

・・


「それで、ここはどこになるんだ……?」


 扉の先には、それなりにひらかれた空間があった。

どうやらちょっとした広場になっているようで、モンスターもいないので、休憩スペースになっているのだろう。


「少し待ってください…………接続完了しました。現在は13階層です」


「……ってことは、あと二つでボス部屋か」


「そうなりますね。……まぁマップは記録されていないので、来ないとは思いますが……またここに来た際には、ちゃんとマッピングしないとですね……」


「そうだなぁ……」


「大丈夫だしっ」


「私たちがマップは持っています」


「この先どう行くかも……」


「どうやれば戻れるかも……」


「「おまかせですっ!」」


「そうなんか? それならやっぱり、ランダムを選んだのは正解だったな。……ってか、なんで最初から言わないんだよ!?」


「「聞かれなかったですから……」」


「結構重大なことだと思うんだけどなぁ……」


「今更何を言っても無駄ですよ、ラン様。それより今は、先に進むことを考えましょう。……二人がマッピングを済ませているというなら、むしろ利用してやればいいのです。とことんまで」


「それもそうか……」


「そうなのです。……二人とも、それでよろしいですよね?」


「「かしこまり~」」


「では行きましょう。案内してください」


「その前にいいかな?」


「戦闘用に着替えたいんだけど……」


「? それが装備じゃないのか?」


「違うよ~?」


「さすがにこんなラフな格好では戦いませんよ……」


「それもそうか……んじゃさっさと着替えちゃってくれよ。クーもキッカも、千変万化使えるんだろ?」


「使えますよ~」


「ではでは失礼して……」


「「千変万化!」」


 二人を光が包み込む。

光が収まると、そこには中居姿の二人がいた。


「それが戦闘用なのか? 旅館で着ていたやつじゃないか」


「これでいいのです……」


「私たちは中居なのですから……」


「そうなんだ……」


「「はい……」」


「でもさ、着物って動きにくくないのか?」


「大丈夫ですよ?」


「慣れれば洋服よりも楽ですし……」


「そうなんか? ……ヒカリはどう思う?」


「私はなんとも……。ただ……二人がそれで大丈夫だと言うならば、それを信じましょう」


「それもそうだな……。よし、それじゃあ案内してくれ」


「「かしこまり~。ちゃんとついて来てくださいね?」」


「おう」


「はい……」


「それではそれでは……」


「出発しんこ~う」


 二人はそう言うと歩き出す。

俺とヒカリは後ろに並んでついて行った。

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