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聴覚障害者の日常

聴覚障害者の日常 産婦人科編

作者: ぷかぷか

三つ子妊娠前のことを思い出した。


結婚したときは、夫は、アタシが仕事が続けられるように、皆が嫌がる関東異動を希望した。

超激務の勤務地のため、そこにいる間は子供が生まれても一緒に育児はできないからと作らなかった。

2年後、東北に転勤が決まり、アタシも仕事を辞める決心がついたので、たまっていた仕事を片付けて後から引っ越した。

そして、すぐ妊娠した。


でも、流産してしまった。

原因はわからない。

このときに初めて産婦人科にかかった。


いままでかかった医療機関では、医者にはマスクをはずしてもらうか、筆談してもらっていた。この時も、受診前に聴覚障害があることは伝えていて、できれば筆談でお願いしたいといってあった。

初めて診察室に入って、看護師にいわれるまま下着を脱いだが、椅子をみてギョッとした。


お産や、子宮等の診察を受けた人ならわかるだろうが、どうにも格好がつかない診察用の椅子があり、お腹辺りでカーテンが引かれて診察の様子が見えないようになっている。子宮の様子を見るために触診というのをやるときは必ずこんな感じだ。


変な格好の椅子に座らされるわ、カーテンが引かれるわで、全く予想しなかったことに半ばパニックになった。

どうやってやり取りしたのか覚えていない。

わかったのは、

「大丈夫。」

だけだった。


妊娠希望であることを伝えたら、タイミング療法でやるといわれた。つまり正確な排卵日をチェックしてもらうのだ。

若干ホルモンも乱れているから、ホルモン治療も後から追加された。そして、そう難しくはなく妊娠は可能です、と太鼓判を押されたのだった。


回を重ねるにつれ、アタシもだんだん諦めがつき(笑)、診察の間は会話はなしで診察後にまとめて説明してもらうか、医者も慣れたのか、状態によってはカーテン無しで会話する時もあった。


その後も流産を2度経験したが、転勤が決まり、引っ越しが終わった先で妊娠が発覚するまで三つ子がお腹にいたとは、アタシもその医者もしらなかった。

三つ子は送別会や引っ越しのドタバタにもかかわらずしっかりとしがみついていてくれたのだった。

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