第十一章~研究所~
科学都市は科学さえ絡めば全てを具現化出来るといっても過言ではない。そして、この第三研究所に籠もって培養液を眺める男もその例外ではない。サンテイル、と彼は本名を伏せて名乗る。その男は誰もが見て不気味だと思える表情を浮かべ、培養液を見つめていた。緑色の液体がボコボコと音を立てながら培養ガラスを震えさせる。
「愚かな。また再び精製しようと言うのか私は?生命の精製なぞ、許されたものではなかろうて」
そう呟いた瞬間に培養液が破裂し、ガラス片を飛び散らせる。しかし、三テイルには傷がつかなかった。培養液の中から現れたのは、少女の姿を取った、金髪碧眼の人間だった。
「どうだ、315号。気分は」
金髪碧眼の少女は、そう呼ばれて、コクリと頷いた。
「問題ありません。魔力生成にも支障はきたされていません」
「やはりか。オリジナルの龍殺しの細胞は優秀でよかった。愚かな、私に細胞をやすやすと渡すなどと、もし私でなければどんな行動にとっていたか分からぬぞ」
「サンテイル様。あなたは十二分に楽しんでいるではないですか。クローン体である私たちの残骸を玩具にして余すことなく」
「っふ、愚かな。何を今更?私の作った玩具だぞ。私がどう使おうと勝手ではないか。愚かな……そんな思考能力がつかなかったのか?仕方ない。貴様は処分してしまおうか」
「そんな。冗談です。そして、サンテイル様。あの集団が、こちらに向かってきているようです」
「ふむ。何故に。愚かな……クローンをしたがえた私に勝てる算段があっての噺か?本当に、本当に愚かであるな……」
サンテイルはクツクツと笑い、金髪碧眼の少女を置いて研究所の最深部へと移動していく。
「龍だと?バカバカしい。あんな不確定要素で国が安泰するわけがないではないか。龍を全て狩り、私は龍殺しの頂点に君臨する。暴走しない龍殺しは比較的安全ではあるしな。愚かな、そんな事が未だに理解出来んでいたとは」