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白銀龍 ユナイト・ドラゴン

 石像魔人がハヤトの眼前に立ちはだかった。

まったく感情の宿っていない顔の造形に、云い様のない冷たさを感じる。


目を凝らすと魔人の上部にデータ表示が確認できた。


「APが22だと!?」


そう簡単に超えられる数値ではなかった。

魔人は二階建ての家ほどの高さがあり、じりじりと感じるその圧力に思わず後ずさりしそうになる。

が、後ろには少女がいる。


 ここは一度、この少女を連れて退却した方がいいのではないか? と考えが頭をよぎった時、


「ドラゴンを……ドラゴンを呼んで下さい!」


少女がハヤトの背中にしがみつき叫んだ。


「ドラゴンだって!?」


デッキケース内の最強カードは確かに《ユナイト・ドラゴン》だ。

そのAPは25。

だけれども、ダメなんだ――。


いまだにユナイト・ドラゴンだけ召喚に成功できなかった。


ズシンと音をたて地を揺らし、魔人が踏み込んできた。


「くっ。そもそも、逃げられるのか?」


魔人の目に見下ろされ、その剛腕が振り上げられた。


「ドラゴンを呼んでぇ!」


少女の叫び声が鋭くなり背中に突き刺さるのを感じた。

デッキケースからユナイト・ドラゴンのカードを引き出した。


「ええい、頼む! ユナイト・ドラゴン!」


ハヤトの後ろで一瞬ではあったが、少女の双眸(そうぼう)がダイヤモンドの如(ごと)くパアァッと輝いた。

それに呼応するようにカードの中から光が何重にも放たれる。

その光の強さは猛々(たけだけ)しい体躯の魔人をひるませた。


そして、光の渦から白銀の龍が姿を現した。


ドラゴン属光龍モンスター 《ユナイト・ドラゴン》。


「召喚できた!」


困惑の表情を浮かべながらもハヤトは歓喜の声をあげた。


ユナイト・ドラゴンAP25 vs 石像魔人AP22


石像魔人は自身と同等の体躯を有するドラゴンが現れたことで、闘争本能を掻き立てられたようだった。

拳を握りしめ引く、いわゆる正拳の動作に入った。


「迎撃だ! ユナイト・ドラゴン!」


ハヤトの攻撃指令により、ドラゴンの羽に光のエネルギーが集まっていく。

突き出された魔人の拳と、輝く羽から発せられるレーザー攻撃がかち合う形となった。


ゴゴガガッズガガ!


魔人はAPが高くとも所詮は石の素材でできた人形に過ぎない……そう思わせるほど、あっけなくも崩れ去る最期だった。


「これが……ドラゴンの力なのか」


石像魔人はデータ分解されていった。

虹色のスライムモンスターの痕跡を確認することはできず、また《ストーンウォール》のカードは消滅してしまった。


「戻れ、ユナイト・ドラゴン!」


ユナイト・ドラゴンは電子音のような独特の咆哮を放ち、カードに戻っていった。


ハヤトは後ろを振り向いた。

少女は呆然と立ち尽くしている。


「お……おい、大丈夫だった?」


考えてみればクライシス・モンスターに襲われていたからという理由だけで助太刀に入ったが……とりあえず当たりさわりなく接してみることにした。


少女は問いかけにハッと我に返った。


「あ、……ニン……ゲン」

「え?」


ハヤトは驚き目を丸くした。

今、この少女は『人間』と云った。

異世界に〈獣人〉は存在するが、はっきり『人間』と口にしたモンスターは一体もいなかった。


それに少女の外見にも驚きを隠せなかった。

鋭い歯は牙であろう、身長の半分の長さはある長い尻尾、首や手の甲などに見られる鱗――もしやこの少女は、〈龍人モンスター〉なのではないか。


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