浦島太郎が嫌いだ
ここに昔ばなしがとにかく嫌いなシュラという者がいました。
この者は浦島太郎が嫌いでした。恩を仇で返された気分になるからです。
そこで、玉手箱が開かない様にしてしまいました。
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むかし、むかしあるところに浦島太郎という心優しい漁師が住んでいました。
ある日浜辺を歩いていると一匹の亀が子供達にいじめられているのを見ました。
「亀を離してやりなさい。」
と子供達を注意し亀を助けてあげました。
数日経ったある日、いつものように釣りをしているとあの時助けた亀が話しかけてきました。
「先日はありがとうございました。深い深い海に住む乙姫様が会いたいと貴方を竜宮城に招待しています。」
浦島太郎は今の暮らしに少し退屈していたので二つ返事で承諾しました。
さっそく亀は浦島太郎を自分の甲羅に乗せ海の中へ入って行きました。
暗い暗い海を抜けると、その先に美しいお城があり、宝石の様に光る珊瑚の周りに悠々と泳ぐ魚がより美しさを際立たせました。
しかし次の瞬間浦島太郎は息を呑みました。お城から出てきたお姫様がどんなものより美しかったのです。
「浦島太郎さん、この度は亀を助けて下さりありがとうございます。私は乙姫、どうぞごゆっくりして下さい。」
浦島太郎は竜宮城の至る所で、豪華なご馳走を振る舞われ海の魚達が優雅な踊りを見せてくれました。
その光景に時を忘れて楽しみました。
何年かの月日が経ったある日、急に故郷やおかあさんが恋しく思いました。
そのことを乙姫に伝えると引き止められます。しかし浦島太郎の決断は揺らぎません。
乙姫は観念して別れ際浦島太郎に立派な箱を手渡して言います。
「この箱は玉手箱、玉手箱の中には私達二人の“時”が入っております。絶対に開けてはいけません。開けたらもう2度と会うことはできないでしょう。私には貴方以外考えられない。必ず戻ってきてください」
周りの魚達は何か言いたげでしたが乙姫の覚悟に諦めざるをえないようでした。浦島太郎は
「必ず戻って参ります。待っていて下さい。」
と言うと地上に帰っていきました。
村に帰った浦島太郎は驚愕しました。お母さんどころか村が消えて全く知らない光景に様変わりしていました。
数年しか経っていないと考えていた時が数百年も進んでいたのです。
桃太郎は絶望し自分の時も進めようとしました。しかし玉手箱は開きません。
途方に暮れていると、ふと乙姫の言葉を思い出します。
浦島太郎はもう一度竜宮城へ戻る決断をしました。
浦島太郎は浜辺へ行き海へ飛び込みました。そのまま竜宮城がある方向へ泳ぎ出します。
すると不思議なことに気がつきます。全く息が苦しくならないのです。これならいつかは辿り着けると考えましたが体力の限界が尽きてしまいました。どんどん海の底から遠ざかってしまいます。
もう乙姫に会うことは出来ないのかと絶望していると人が飛べたとの噂が聞こえてきました。たった数センチだったので周りの人々は馬鹿にしていましたが浦島太郎にとっては小さな希望でした。
少しずつ距離を積み重ねてあの月に人が到達するころには深海にも到達できるだろうと考えたからです。
これから浦島太郎は海を研究しました。しかし、人類が月に到達する頃、浦島太郎は深海に行くより宇宙の端に行く方が簡単なのではないかと思う様になりました。
深い悲しみの夜の明け浦島太郎は玉手箱を山に捨て第2の人生を歩む決断をします。
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シュラは歓喜しました。浦島太郎は乙姫と断絶し幸せな人生を歩むのだと
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浦島太郎が玉手箱を捨てた場所に振り返った時にはもう玉手箱はありませんでした。
浦島太郎はどうせ乙姫は覚えていないだろうという投げやりな気持ちと捨ててもバレないだろうという期待がありました。
そして浦島太郎は歳をとる様になりました。海の研究からは解放され登山や川下りが趣味になりました。しかしふと海が見えた夜には酒に溺れました。
どうしても乙姫の『私には貴方しか考えられない』『私達二人の“時”』という言葉と消えた玉手箱が引っかかるのです。もしかしたら乙姫も歳を取るようになってしまったもしくは玉手箱が戻ることによって、最愛の人に裏切られたのだという絶望に陥っているのではないかと考えると後悔がおさまりません。
ついに浦島太郎はもう一度海に潜る決断をします。
今度は前より深く深く沈んでいくのでした。
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シュラはより昔ばなしが嫌いになりました。
「まぁいいや」
そういった側には玉手箱がありました。
是非ご感想よろしくお願いします




