旅立ち…
「ヴラド三世」
「ぐっ…」
父さんの胸から棘が生えた。それは地面から生えたものであり胸を貫通していた。集まっていた魔力は霧散した。術師の集中が途切れてしまったようだ。
「これで勝負アリだね。俺の勝ちだ。」
もう父さんは息も絶え絶えで今にも止まりそうになっている。その光景を見ながら僕はボソッとつぶやいた。
「(降霊)?????」
これで僕の10年間のの研究の成果を存分に示すことができたようだ。
まあ、目撃者は誰もいないが。
「父さん母さん今まで愛を込めて育ててくれてありがとう。とても感謝しているよ。してもしきれないくらいにね。」
もう目の前にいる父さん母さんは僕の父さん母さんでは無い。2人共虚ろでどこか悲しそうな顔をしていた。
「そうだ!あの魔法【呪音】にしよう。きっといい名前だよね!てか、もう一つの(心霊特異)使わなかったな、もう少し対人で実験してみてもよかったかもしれないね。失敗失敗。次はどうしようかなぁ」
返事が来ることはないと分かっていながら言葉を紡ぐ。最近独り言が増えた気がする。まあいいや。ここで俺は少し考えることにした。呪いについてだ。この呪いは俺にとってはただの強力スキルとなっていた。もうデメリットはない。使い方には無限の可能性だってある。どちらかというと魔王の方の才能だけどね。
「…」
目の前の元両親は何事もなくたたずんでいる。
「ああ、忘れてたよ。いつもどおりの生活に戻っていいよ。今あったことはすべて忘れること。今まで通りの生活に戻ること。そして君たちの子供は今学校に通っている兄さん一人であること。じゃあ屋敷に戻って。」
「じゃあ僕もそろそろ出ようかな。歩きながら考えよ、今後いろいろな国を旅してみたいな。まずは冒険者のランクも上げていかないといけないけど仲間も欲しいよね。まあ、いざとなったら死体に(降霊)使えばいいか。研究の末に死体に使えると分かったのが大きかったな。仲間づくりには困らなそうだね。問題は誰を降霊させるかだよね。強い人と頭のいい人が優先かなぁ。」
こうして独り言にしては大きすぎるが独り言を呟きながら俺は15年間過ごした屋敷を後にした。ここには思い出が多すぎる。だが、両親は俺のことは分からない。このままだと不審者になって捕まってしまう。それだけは遠慮願いたい。両親に通報される息子ってのもな…こうして冒険者登録するために冒険者ギルドへ向かうことにした。この領地にも冒険者ギルドはあるが少し遠い。
まあ、俺には時間がたくさんあるから急ぐこともせずにまったり向かうことにしよう。
「さあ、次はどんな冒険が待ってるんだろうね。」
俺は期待に胸をいっぱいにしてそしてこれから待ち受ける冒険に胸躍らせながら歩き出した。
―神界―
エクス
「やっぱり彼は面白いね。僕が隠していた事をすぐに見破ってしまったようだしね。初めて来た時ですらうっすら気付いていたもんね。ただ赤坂コウタくんはそんなことできなかった。しかし今は違う。君なら全部やってのけるんだろうね。」
エクスは楽しそうに笑った。
「さあ、君は今後いろいろな経験をするだろうね。だがもう戻ることはできない。せいぜい僕の暇つぶしにはなってくれるといいな。ここは退屈すぎる。そして称号の意味も分かってくるだろうね。彼は強スキルだと思っているが呪いはプラスには転じない。君は身を持って知ることになるだろうね。生まれたことを後悔する位に」