降臨…
「ねぇ、このまま踵を返して国へ戻る気はない?俺はこの力があまり好きではないんだ。だが使わないと勝てそうにない。」
「好きではない?それだって君の力の一部なんだろう。ここまで来て私が国へ帰るわけないじゃないか。久しぶりの未知の強者にワクワクしているよ!しかし、君は相当余裕そうな雰囲気を醸し出しているが君は今劣勢だよ。」
「確かにこのままだと負けるね。えぇとアルベルトといったかな?君はおしゃべりが好きかい?」
「あまり好きではないな。今すぐに君を斬りたい。」
「つれないなぁ…さっきはバカと言ったけど今なら気持ちがわかるよ。圧倒的自信という感じ?慢心?こういう状況だと嬉々として力を話したくなってしまう。」
「話すのはバカと言っていたけど君も変わり者だね。」
「そうだね。だが今は気分がいい。」
「そうか!ならこのまま死んでほしいな!【神の剣戟】!」
まばたきの間、刹那、どう表せばいいかは分からないが俺の首は中に浮いていた。どうやら切られたようだ。だが、今は関係ない。
「せっかちだね。少しは話そうよ、」
アルベルトは信じられないと言った顔でこちらを見ていた。時間が巻き戻ったようだと錯覚していた。なぜなら目の前の男の首と右腕が逆再生のように身体にくっついた。
「君は一体…」
冷や汗が止まらない。人間離れした実力者だと思っていたがまさか化け物だとは思っていなかった。直感がけたたましく警鐘を鳴らしていた。
「少しは興味を持ってくれた?悪いけど君は俺を殺すことはできない。」
「君は本当に邪のものだったとは…教国の話を聞いておけば良かった…。」
「大丈夫だよ。俺は君を殺したくなくなってきていたんだ。どう?俺たちと一緒に来ない?力も授けれるよ?」
「生憎私は他人からもらった力を喜ばしく思わないたちでね。私は、天才はこれ以上の力を欲しない。今が最高だからだ。だから私に君を殺せぬ道理はない!【千の斬撃】!」
数え切れないほどの斬撃がルークを襲った。ルークは少しも動かない。そのまま刻まれていき肉片となるはずだった。
「会話のできない家畜は嫌いなんだ。」
何事もなかったようにルークはその場に立っていた。背後の木々もなぎ倒されていた。それなのに…ここでアルベルトは恐怖を感じた。
「なんなんだ…なんなんだお前は!」
ルークが動き出した。警戒して見るアルベルトは目の前の光景に驚愕した。
「こい」
目の前に化け物…そんな言葉では言い表せない格の高いものそんなものが12体、目の前に現れた。
「これは…」
「十二天将だよ、君から見ると神に近いものだね。だが俺が使うとそれすらも邪に染まるらしいね。前の世界だととある呪術師に使役されていたらしい。使役は魂のつながり。だから俺も使える。」
「とんでもない化け物を俺は相手にしていたらしいね。勝てるビジョンが消えた。」
「一緒に来ない?」
「行かないよ。だけど全力を出して死ぬなら悪くもない最後だね。」
「そうか、ならあとは任せるよ。」
十二天将があるベルトに襲いかかる。1体でもこの世界だと最上位の実力に値する。それが十二体だ。アルベルトに勝ち目はない。
最初アルベルトに殴り飛ばされていた際、憑依を変えていてなんとか対応できた。そうじゃなかったらおそらく死んでいたのは俺だった。
黙って見ていた俺はふとある気配に気がついた。
「見てないででてきてもいいんだよ?俺も獣じゃない。誰彼構わず襲ったりしない。」
「バレていたのか。」
目の前には見た目上俺と同じくらいの年齢の男がいた。
アルベルトと十二天将が戦闘しているのに構わず話を始めた。
「さて、きみは何しに来たのかな?」
「君には申し訳ないがそこの男を国に返したいんだけどだめかな?」
「う〜ん。どうしようかな。」
「もちろんただでとは言わないよ。何か欲しいものとかあるかい?」
「いや、じゃあ少しお話をしようかな。君はなんでここに来たの?」
「さっき話したとおりだよ。あの男を回収しに来たんだ。」
「君も教国の人間なの?」
「そうだね。そこでお世話になってるよ。」
十二天将との戦いもどうやら終わったようだ。アルベルトが虫の息となって地面に倒れている。どうやら意識を失ったようだ。
「じゃあどうして農国にいたの?お爺さん」
「そこまでバレていたんだ。安心してこっちがホントの姿だよ。」
「それはどっちでもいいけどあの予言はこのことだったのかな?」
「おおむねそのとおりだよ。見た瞬間に君は怪物だと気がついた。そしてこの状況も戦争みたいなものだろう?兵士も出して指揮官も出す。そして国が滅ぶ。」
「そうだね。あのときは分からなかったが納得したよ。それで?あの男を回収してどうするの?」
「どうするって言っても僕はお使いを頼まれただけだからね。こいつ第十席の末端だ。そんな奴が君に勝てるわけがないということがわかったんじゃないかな?近々勇者とかにも会えるんじゃない?それでも君の相手にはならなそうだけど。」
「じゃあお使いの邪魔をするのはいけないね。どうぞ持っていって。」
「ありがとね。あと一つ聞いてもいいかな?君はこの世界で何を為すの?」
「俺はこの世界を見て回りたい。何の目的もなく徘徊できるように」
「もっと大きな野望とかないの世界征服とか。せっかくこっちの世界に来たのに」
「っ!鑑定持ちか。まあ、その気はないよ。君と違ってね。」
「そうか、君が関門と成りそうだね。そろそろ僕は御暇するよ。折角の戦闘中にごめんね」
「あぁ。君とは会いたくないけどね。」
そういった彼は十二天将の間を通ってアルベルトを拾い姿を消した。転移の魔法かな?あ、名前聞いておけば良かった。次に会ったら聞いてみよう。会いたくないけど。何か縁も感じるしな。
「はあ、…久々に死んだな…良かった安倍晴明で」
たまたま安倍晴明を憑依していた俺はなんとか対応することができた。俺の知ってる限りの人間の最強格に近い存在。安心感が半端ない。
「おっと、そいえばあっちは大丈夫かな?」
俺は息をつきながらシエルとコノハの方を向いた。まあ、ここからだと見えないけど。
そうしているうちに前方から物音がした。
「こんなとこにいたか…」
「ご主人様〜疲れた…」
ボロボロの2人が戻ってきた。どうやらあちらも相当な実力者だったのだろう。彼女たちも満身創痍といった様子だ。
「どうだった?初めての実力者との戦闘は?」
「自分の実力不足を実感した。だが、得るものが多かった。ご主人の課題も進めることができたしな。」
「私は全然だめだったよ…くやしい〜!」
「まあ、二人の実力だとそんなものだよ。まだ連係して日が浅い。これからだよ。」
「それよりもあの2人にとどめを刺すことができなかった。途中乱入者がいてな。」
申し訳無さそうな顔でシエルが話した。
「大丈夫。こっちにも来て回収していったから。俺もトドメ刺していない。」
「そうだったのか…」
疲労困憊の2人も地面に腰を下ろして休み始めた。
この世界に来て初めての実力者との命をかけた戦闘二人のいい経験になっただろう。
俺もまだまだ知らないことばかりだな。そんな事を考えているうちに夜も明けていった。




