悪女…
2人は歩いていた。
彼女の足取りはとても軽い。まるでこれからピクニックに行くようなウキウキした子供のように軽やかだ。
僕は傍観者だ。
彼女の復讐にこれ以上手を貸す気もまったくない、死んだとしてもしょうがないとすら思っている。だが彼女はまだ知らないんだよな、真実を。彼女にとっては破滅の道かもしれない真実それも込みで俺も楽しみにしていた。
彼女の物語を、名前はなんだったか覚えていないが彼女ならやってくれるだろう。
彼女に聞いた目的地はなんと俺が行こうとしていた村だった。
捨てる神あれば拾う神ありといったところかな。
こうして俺たちは無言のまま目的地にたどり着いた。
そこには普通の村が広がっていた。だが見渡す限り村人の姿は見えない。しかし奥の方一段と大きい家の周りおそらく治める長の家だろうその周りに武装した村人たちが集まっていた。
そして一人、他の魂とは違う力強い魂が一つ見えていた。
彼女もそれを察知しているのかいないのか村の奥へと進んだ。
そろそろ相対する頃合いだな。そう思っているうちに弓矢と魔法が飛んできた。
俺の場所には届かなかったようだが彼女の場所には届いていた。しかしすべて外れたようだ。
「忌み子よなぜ戻ってきた。」
年老いた男が話しかけてきた。どうやらこいつが長のようだな。
「しかもお前の隣のものは何だ。何を連れてきたんだ。異様な気配見た目は人間だが全く違う何か。お前とのつながりも見える。お前は何と契約したんだ?」
ほう。なんかとても見る目のある老人だな。年齢による賜物なのかスキルなのかは知らないが一目で関係を察したようだった。
「私はこの村に復讐に来たんだ!お母様を殺したこの村に!」
「はて?お前の母親とな?これのことか?」
カロンは目を見開いた。そこには信じられない光景が広がっていた。金髪の妙齢の女性。耳の尖った親しみのある何年も苦楽を共にした顔がそこにはあったのだ。
「お母様!」
「感動の再会だろう?忌み子も会いたがっていたらしい。」
「これはどういうこと…?」
目の前の光景に思考が停止した。あるのは驚きだけだ。カロンが動けない中ルークは口を開いた。
「死体を動かしているのかな?君もなかなかの下衆だね。そんなことだろうと思ったけど君のスキルなのかな?」
「そうだ。エルフの肉体は死んでからでも役に立つ。その才能は死後でも腐らない。これからは儂の人形として魔法を使ってもらう。」
「いいね!悪役にぴったりだね。君みたいな配役を俺は求めていたんだ。さあこれからどういった物語に進展していくんだろうね。」
「お前は忌み子の味方か?」
「いや、僕は傍観者さ彼女の物語のね」
「意味はわからんがお前は相手にしたくない。黙ってみているがいい。」
「そうさせてもらうよ。」
やりとりを終えたあと彼女の方を向いた。彼女は絶望していたのだ。守りたかった相手を殺さなければならないという葛藤を。そこで彼女は心を閉ざした。ルークは心底落ち込んだ。これでは何も見れないじゃないか。この物語は途中放棄という形で幕を閉じた。そう思っていたが、急に雰囲気が変わった。
「お前たちに復讐を。醜く肥えた豚どもめ。見下した者から見下される気分はどうだ?」
なんか彼女も口調が変わっている。乗っ取られたかな?それも面白い。だがそうではないらしい。
「カロンいや、忌み子よお前は奴隷になどせず殺すべきだった。だがそれも今日で終わりだ。この人数でお前はどう戦う?」
「逆にこれだけでよいのか?お前には圧倒的な差というものが分からないらしいな。」
おっとそろそろ始まるっぽいな。さあ、どういう物語を紡ぐのか楽しみだ。
「豚どものあがきなど見苦しいものはないがここまで群れられるのもうっとおしいさあ、往ね」
その一言で状況が変わった。今までの静寂から圧倒的な蹂躙。凄惨な状況、これが彼女の力だ。
村人の目と耳が弾けた。
一瞬の軽い音その後の阿鼻叫喚、これを彼女は求めていた。
「主よ、ありがとうございます。また、私はこうして娯楽を楽しめます。」
「うんうん。気にしないで。君の中の彼女の願いをかなえてあげてよ―呂雉―。」
「はい♡」




