実験
「はぁ……」
恭弥は深いため息をつき、ベンチにゆっくりと腰掛けた。
「なぁ。恭弥、あのスキルってやつ、何もらったんだよ?」
「いや、スキルはいいんだよ。なんか『同化』とかいうやつ」
そう言った瞬間、恭弥の姿がふっと消えた。
「!?」
驚いた結城はベンチから立ち上がる。
「どうした?」
さっきまで恭弥がいた場所から、声だけが聞こえた。
「恭弥……お前の体、見えないんだけど……」
「はぁ? 俺ここにいるだろ?」
と、半笑いで言いながら、結城の肩を叩いた。
「!!?」
誰もいないはずの場所から肩を叩かれ、結城は声にならない悲鳴を上げる。
慌てて肩を見やると、そこにはうっすらと人の形をした空間があった。
やがて、そのぼんやりとした影は徐々に色を取り戻し、恭弥の姿が現れた。
「恭弥、お前、今ほぼ透明だったぞ」
「え、いつから?」
「お前がスキルの名前を言ったあたりから……」
「あぁ、どうk──」
「ちょ、待て!」
慌てて結城は恭弥の口を塞いだ。
「簡単にスキルの名前言うな! また消えるかもしれないだろ!!」
そう言って結城はようやく手を離した。
(そういえば、俺がもらったスキルは『閃光』と『詳細』だったよな……?)
「恭弥、その『同化』ってスキル以外に何かもらったか?」
「あぁ、確かもう一つもらった気がするなぁ?」
「『詳細』ってやつか?」
結城がそう言うと、目の前に大きめのスクリーンが現れた。
「あ、そうそう」
「試しに『詳細』って言ってみ?」
「詳細」
恭弥がそう言うと、今度は恭弥の前にもスクリーンが現れた。
「うわ! なんか出てきた!」
(俺には恭弥のスクリーンが見えないのか……)
「俺のこの画面、見えるか?」
「いや、見えないな……」
「どうやら他人の画面は見えないみたいだな……」
そう言って、お互いに自分の画面を確認する。
*****【結城千尋のステータス】*****
HP: 522/523
SP: 300/342
ATK: 48
DEF: 54
SPD: 81
状態: なし
行動レベル
・善行Lv1
保持スキル
・詳細
・閃光
※不明点がある場合は不明な箇所に触れてください
**********************
【説明】
・HP…なくなると死ぬ。睡眠で回復。
・SP…スキル発動時に消費。枯渇時はHPが徐々に減少。食事や睡眠で回復。
・ATK…攻撃力
・DEF…防御力
・SPD…素早さ
**********************
(HPがなくなると死ぬ? なんだよそれ、まるでゲームじゃねぇか……)
「これ、俺たち……どうなっちゃったんだろ?」
結城が恭弥に問いかけた。
「わかんねぇ……」
「っていうか千尋、お前スキル何もらったんだ?」
「ちょっと試してみる」
そう言うと、結城は恭弥から50mほど離れた。
「閃光!」
指先から巨大な光が炸裂した。
バァァァッ!!
眩しすぎる光があたりを覆い、一瞬、何も見えなくなる。
「うわっ!? 目、目が……!」
恭弥が顔をしかめながら目をこする。
(……めちゃくちゃ光ったけど、これ何に使うんだ?)
「……なんか、地味だな」
「言うなよ……俺もよくわからないんだから……」
「そういやさっき、お前スキルを隠そうとしてたけど結局、何だったんだ?」
「だから、スキル自体は別に問題ねぇんだよ……ただ……」
「ただ?」
「レベルが……」
「………」
「上がったレベルが『臆病者Lv』だったんだよ!!」
と、少し怒ったように恭弥が叫んだ。
思わず結城は吹き出した。
「お前……ははっ……! 『臆病者Lv』って何だよそれ!?」
「笑うな!! 誰にも言うなよ……!」
仏頂面で結城を睨む恭弥。
(そういや、さっき『ラッキースケベ発生率アップじゃない』とか言ってたけど……)
(透明になれるって、遠からずも近からずじゃねぇか…)
・同化
5分間あたりの風景と同化する。
よく目を凝らすとぼんやり人の形が見えてしまう。
獲得方法
臆病者Lvが上がることでランダム付与
消費SP:10