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見えない祠

作者: 逆福

小さい時から病気にかかる事が多く、熱を出して変な夢をみるという事が頻繁にあった。年を経る事に体も丈夫になり病気にかかる事も少なくなっていったがそれでもかかるときはかかるもので、その時にまた変な夢を見た。夢では熱にうなされながらぐにゃぐにゃと歪む視界の先に、小さな祠がぽつんと立っている映像がずっとみえたのである。変な夢を見る事は何度もあったが今回の夢のようにはっきりと覚えているのは初めてだった、けれどまあ所詮は体調が悪い時に変な物を見ただけと気には止めていなかった。それから暫くして流行りの感染症に連続してかかってしまいそのたびに同じ夢を見るのであった。二度目はまた同じ夢かと少々不安になった、そして三度目に夢を見た時は二度目の夢の時には気が付かなかったが、祠についている戸が少し開いてきている事に気づき一体どういう事なのかと不安になるのであった。感染症から回復してしばらくは病気にかからないよう特に気をつけていたせいか何ごともなく過ごせていた。


ある日の事、仕事が終わり家に向かっていると帰り道が工事中で塞がっていた為別の道で帰る事になった。周り道をして家の裏辺りを通るかという時にふと道途中にある空間に目がいった。ぽつんと空いた空間があるなとよく見てみると石でできた台座の様なものがあった、一体何が乗っていたのか思案していたがすぐにここにはあの夢で見た祠があったのではないかと思うようになった。台座や辺りを見回しても何の記述もなく一体なんの為のものなのかわからなかった。次の休みの日に台座のある近くに住む人々に聞いてみるが何の為にあるのか、何が乗っていたのかわからずじまいであった。それからは仕事の忙しさにかまけて祠について頭の片隅に追いやって忘れたようにしていたが、積み重なった疲労によって熱を出してまた伏せる事になった。そして四度目の祠の夢を見る、やはりあの空間にあった台座に祠は乗っているようであった。歪む視界でも明らかに戸が開いてきているのがわかり次に夢を見る事があればあの戸は開ききるだろうという確信があった。


あの戸が完全に開いた時何が起きるのかと考えた私は不安にかられ居ても立っても居られずに、家にあった金槌を持って台座のある場所に来ていた。きっとあの台座の上には見えない祠があるはずだと、きっとそれを壊せばこの夢を見ることはなくなるだろうと。一緒に持って来ていた塩を金槌にまぶし、台座の上の祠があるであろう場所に金槌を振るう。当然のように金槌は空を切るが諦めきれずに何度も繰り返していると不意にメキと木を割るような音が聞こえた。それからは一心不乱に金槌を振り続け、もう金槌を振るう力もないという時にどこからか「あともう少しだったのに」と聞こえた気がした。その後は恐怖と疲労からしばらくその場にうずくまっていた。祠を壊したであろうあの日から祠の夢を見る事はなかった、そしてあの台座があった空間もいつの間にか消えていた。果たしてあの時戸が開き切っていたら一体どうなっていたのだろうと考えると今だに寒気を感じる。


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