『屋根の上の速記もしていない子ヤギとオオカミ』
ヤギは、羊と違ってがけを登るのが得意です。人間に飼われている子ヤギが、屋根の上に上って昼寝をしていました。すると、オオカミが通りかかりましたので、からかいました。
「よう、オオカミさん。肉食動物は毎日御苦労だねぇ。僕ら草食動物は、そのへんの草を食べておなかがいっぱいになったら、こうしてひなたぼっこをしていればいいんだ。食べられない日なんてないから、僕らのほうが気楽な商売だね」
オオカミは悔しい思いをかみ殺しながら、
「安全なところから何やかや言うのは簡単だ。そんなに暇なら、速記の練習でもすればいいのに、食べて寝ているだけでは、おいしい霜降りになること請け合い。何なら、僕らの仲間を呼び集めて、この家をぐるっと取り囲もうか。君がおなかがすいて降りてくるのを気長に待つのも、まあ一興かもね」
子ヤギは恥ずかしくなって、速記を始めようと、思うだけは思いました。
教訓:安全なところに身を置いて、人に余計なことを言う連中は、常識的な行動などとらない連中である。