第94話 変わった事
お待たせ致しましたー
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「なになになにぃ〜??」
「これ……食べ物ぉ?」
「麺麭なんすか? 恋花?」
「……うん。皆に試食をお願いしたくて」
玉蘭の魂が肉体に定着して、元の生活に戻るかと思ったが……恋花は後宮にいることを選んだ。
あの事件が解決し、各署への処置が落ち着いてから。恋花は点心局で変わらず、九十九の梁と麺麭作りをしている。主人である緑玲妃のためだけでなく、後宮や城の人間や九十九へと麺麭の存在を知ってもらうために。
未来の自分と約束したことを成し遂げるために、残ることを選んだのだ。
今は、詰め所で林杏や双子のためにいつものあんぱんなどの甘いのではないものを振る舞っているところだ。
カレーパンではないが、菜葉の油炒めを入れた『おやき』。乾酪をたっぷり使ってふんわり焼いた『チーズマヨネーズパン』。青菜をすり潰して、黄油をこれまたたっぷり練り込んだ丸い麺麭も用意した。見たことないものが多いのは当然だ。これは今からずっとずっと先の時代には普通に存在する食べ物なのだから。
「「食べていいのぉ!?」」
「自分らでいいんすか?!」
「緑玲妃様や陛下に召し上がっていただく前に、点心局長が皆の意見も聞いてって。鈴那さん達にももちろん召し上がっていただくけど」
「「わーい!!」」
「食べるっす!」
恋花がどうぞ、と言ってあげれば彼女らは食べたいと思った麺麭を手に取り、ためらわずに食べ始めた。噛んで口の中に広がった味に感動してくれたのか……顔がすぐに輝きに満ちた。
「「「美味しい〜!!」」」
「しょっぱ過ぎない?」
「「ちょうど良い〜!!」」
「ふんわりしてないのも食べ応えあるっすね。ふわふわより逆に合うっす!」
「そっちは中身を変えることが出来るの。他の野菜や甘いのとか」
「くぅ〜! 食べてみたいっす! 緑玲妃様もお喜びになられると思うっすよ!!」
「……そうだといいな」
例の祈雨妃の処罰はまもなく下されると噂で聞いたが、逆に緑玲妃の方は懐妊が確実だと医師に診断されたことで……皇妃候補から、皇妃に昇格が確定したのだ。
なので、皇帝からも美味い麺麭を作ってくれないかと頼まれたこともあり、今試行錯誤しているのである。
『恋花、玉蘭が呼んでいる』
「あ、わかった」
談笑している途中で梁が壁からすり抜けてやってきたことで、話は中断。林杏らには麺麭は好きに食べていいことを告げて、趙彗の作業室に行くことにした。
廊下をゆっくり歩くと、あちこちで修繕作業は進んでいたが、皆苦しそうな表情はなかった。緑玲妃が皇妃になることで、逆に浮き足立っていることが多い。それほど、彼女は皆から慕われているのだから。
「恋花」
城へ通じる廊下に差し掛かるところで、向かい側から紅狼がやってきた。曲がってきた角の方向から同じように呼ばれたかもしれない。
「奶奶に呼ばれて」
「俺もだ。共に行こう」
「はい」
以前は後ろを歩いていたが、今は横に並んで歩くことが出来る。その距離の縮み方が、恋花には嬉しかった。この美しい男性が、自分の恋仲だと……まだ自信がない部分もあるが、事実だと微笑んでいる顔を見て実感は出来た。
次回は火曜日〜




