第93話 祖母の復活
お待たせ致しましたー
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玉蘭の身体を保管していると言う、趙彗の作業場へと彼に案内された。他の術士に目に届かず、かつ安全な場所だと皇帝の指示により移動させたのだと。
そこに行く時は、皇帝も同席するとの事になったので、彼が到着してから玉蘭はまた霊体となって恋花らの前に顕現してきた。
『わかったかい? 恋花』
「うん、奶奶……私に足りなかったもの、見つかったよ」
梁や紅狼にも一度目配せしてから、持ってきた包みの結びを解く。
中には、あの日玉蘭と二人で食べようとしていたのと同じ『あんぱん』が入っていた。
『……それが答えかい?』
霊体でも表情ははっきりと見えた。苦笑いに見える笑顔は、恋花の答えをきちんと受け止めているようだ。
「うん。先読みを通じて、私は先の世の麺麭を作ることが出来た。九十九が『無し』でも『有り』でも……絆を結んでくれたこの麺麭たちを、私はこれからも作っていくの。梁や皆で」
そこに玉蘭が加わるか、それは本人次第ではではあるけれど。
恋花がはっきりと思いを言葉にすれば、玉蘭の霊体かほとばしる程の光が放たれた。まぶしすぎて、麺麭を落とさないように気をつけて目を閉じれば……すぐに、温かい手が恋花の頭を撫でた。
「莉愛そっくりになったね、恋花」
霊体特有の反響したような声ではない。
梁がずっと化けていた時と同じ、年相応の祖母の声そのもの。
目を開ければ、身体がきちんとある玉蘭が優しく微笑んで見下ろしていた。
「奶奶!」
本当に元に戻ったのだと抱きつきに行こうとしたら、指ひとつで止められてしまったのだ。
「これ。せっかくの麺麭を台無しにしたらよくないだろう?」
「……ごめんなさい」
お互い料理人なのだから、食の大事はよく理解していると言うのをここでも指摘された。この言い方こそが、玉蘭らしいとここにいる誰もが共感しただろう。
せめて梁に包みを渡してから、恋花は今度こそ玉蘭に思いっきり抱きつき、大声で泣いたのだった。玉蘭も十年ぶりなのか、静かに泣いたのが頭に落ちてきた雫でわかった。
ひとしきり泣き終わったら、玉蘭は紅狼の前に立ち……額を軽く指で弾いた。
「な?!」
「あたしの孫を娶る覚悟はあるんだろ? これくらい、親代わりとしてさせてもらうよ」
「……はい」
「め、めと!?」
「おや、そのつもりなんだろ?」
「そこは……」
結婚の適齢期ではないが、早すぎることもない。その恋花を嫁にと紅狼は考えていたのか、目尻を赤くしていたが。
そのやり取りを見て、皇帝は紅狼の背を強く叩いた。
「ははは! 俺が緑玲を皇妃にすると決めたんだ。その知らせも国に流そうぜ!」
「……穏便にさせないのか」
「国を救った料理人だぜ? そんな生ぬるい処置はしないぞ」
「わ、私がですか!?」
「そうさ。紅狼と共に根源を叩き切ってくれたんだ。……恋花はこいつ嫌か?」
「め、滅相もございません!」
「だとよ?」
「……順序立てくらいさせてくれ」
玉蘭を復活させただけでなく、将来の伴侶も得たと言う。
大きな出来事が、一気に起きたけれど恋花はもう泣いたりせずに笑った。
次回は土曜日〜




