第91話 足りないもの①
お待たせ致しましたー
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目を開けたら、知らない天井が見えた。詰め所の寝台の上でもあの家の粗末ものでもない。首を横に向けると寝台がいくつか並んでいる部屋で、診療所のように思えた。恋花以外には、傍に梁が控えているだけだった。他に誰も居ない。
『……目が覚めたか』
「うん。あの……他の皆様は? 奶奶は?」
『ゆっくり答えてやる。……痛みなどはないか?』
「……うん。大丈夫」
すぐに聞きたいことがあったが、順に答えてくれるのと宿主の労り方に安心が出来た。九十九に戻ってからひと月も経っていないのに、やはりこの九十九は恋花自身のだと安心出来るのだ。
身体の痛みは全然ないが、まだ横になった方がいいと言われてゆっくり寝台に身体を預けた。
『まず皇帝らだが、お前よりも先に目覚めて今各所へ指示を出している。あの藹然のせいで、呪により命を落とした人間と九十九の一覧を作っている。それは事件後からの続きだからと言われたが』
「……そう」
緑玲妃を妬んでいた祈雨妃の依頼を利用して、各所に呪を飛ばしたのは藹然だが……死した人間と九十九は二度と戻らない。宿主が死ねば人間が、その逆もあるかもしれないが、二度と起きないで欲しい。
『無し』としてしばらく育った恋花ですら、彼らの絆は確かにあるものだと理解しているのだから。
『次に玉蘭だが、まだ目覚めてはいない』
「……そうなの?」
『ああ。恋花に足りないものがまだあるから……身体の覚醒が整わないと言っていた』
「足りない? じゃあ、奶奶はあのままあのお部屋に?」
『秘密を知る者として、趙彗が隠してくれている。……すぐにでなくていいが、目覚めてから来てほしいと言われた』
「……今じゃダメなの?」
『まだ魂の循環が危うい。もうひと眠り出来るならした方がいいぞ』
「……うん」
たしかに、まだ身体の疲れが強くのしかかっていたので……目を閉じたら、また眠りの底に行くことが出来たのだった。
そして、もう一度目を開けたと思ったら……そこは白い空間の中。奥には、誰かが一生懸命何かを作っている様子が見えた。
恋花はゆっくりと近づいてみると、聞いたことのあるような声が耳に届いた。
『んー。あと少し……よし、出来た』
ほわんとした音も混じっていたが、それは恋花そっくりの声だった。
その少女らしい人物は、いきなりこちらに振り返ると……とても明るい笑顔で恋花を見てきた。恋花にそっくりで、まぶしいくらいの笑顔そのままで。
『はじめまして、過去の私』
『……過去?』
では、この恋花そっくりの少女は恋花の未来そのものだというのだろうか。うまく言葉を飲み込めず、頭の中が混乱しそうになった。
次回は日曜日〜




