第71話 お互いの無事
お待たせ致しましたー
意識が浮かんでいくような感覚と共に、誰かが恋花の身体を強く揺さぶっているのがわかった。少し強くて目を回しそうなくらいに思った。
「……か。恋花!!」
揺さぶっていた相手は、紅狼だ。力強く恋花の安否を確かめるような声に、恋花は慌てて目を開けた。不安げで、今にも泣きそうだった彼だったが、恋花がか細い声で名を呼べば。身体を懐に抱きしめた。
「良かった……無事で」
心の底から、安堵したとわかる声音。
何故、彼はここまで恋花を心配してくれるのだろうか。玉蘭を尋ねて、何かを依頼しようとしたのを成し遂げれずに恋花を後宮に連れてきた人物なのに。
女性にはほとんど優しくないと崔廉が言っていたのは、嘘だと思えるくらいに恋花には優しいだけでなく大いに心配してくてる。
だから、恋花は思い違いをしそうになった。都合の良い解釈をしてしまうくらいに……しかし、今は確かめている場合ではない。
ゆっくり手を伸ばすと、彼は優しい力でその手を掴んでくれた。
「……ご無事で、良かったです」
想う相手が死にそうな目に遭った時は、心臓が張り裂けそうになった。くろわっさんの麺麭がなければ、靄を消さなかったら紅狼は九十九ごと死んでいただろう。それは国のためを思ってと言うよりも、恋花個人として避けたかった。自分はともかく、彼を死なせたくなかったのだ。好きな相手だからこそ。
出来るだけ笑ってみると、紅狼の顔に頬紅が浮かんだ。何か照れる要素があっただろうかと不思議に思っていると、紅狼は目を真剣なものにして恋花に合わせた。
「恋花、気を失っていただけではないと斗亜が言っていたが」
その言葉に、つい先程祈雨妃の部屋で皇帝から告げられた言葉は、現実であると理解出来た。先読みの力とは別に、恋花には幽霊のような状態で身体から離れる事が出来るのだと。
あの部屋で起きた事態を、ゆっくり紅狼に伝えれば、彼は大きく息を吐いた。
「……祈雨妃か。有力な皇妃候補だったが、緑玲への寵愛が増えたために妬ましく思っても仕方がないが」
「……罰を、受けられるそうです」
「藹然が死した今は、裁きを受けてからは死罪になる可能性が高い」
この惨状を二度と起こさないためにも。
その言葉を告げてから、何故か紅狼は恋花をしっかりと抱き上げた。
「……紅狼様?」
「とにかく、君は休んだ方がいい。詰め所がどうなっているかわからないが、ひとまず点心局へ行こう。足場が悪いからこのままでいいか?」
「そ、そんな! 紅狼様の方がお疲れですのに!?」
「いいんだ。巻き込んだ君の働きに比べたら大したことはしてない」
最後に特上級の笑みを浮かべたので、二人の九十九らは何故か呆れていたが、恋花は心臓が勢いよく高鳴って言葉を紡げず、ただ頷くしか出来なかった。
次回はまた明日〜
明日からは四話投稿




